金(現物)価格は今年3月に史上初めて1トロイオンス=3,000米ドル台に到達し、その後も堅調に推移しています。こうした中、本稿では、世界銀行(世銀)が4月下旬に公表した最新の商品価格見通しに基き、金相場の動向や展望についてご紹介します。
政策の不確実性の高まりなどが金高騰の背景に
最近の金相場の動向について、世銀は、政策の不確実性の高まりや貿易摩擦の先鋭化に加え、足元の金融市場の混乱を受けた低リスク資産(例えば米国債)の価格調整など、複数の要因が金価格を押し上げていると指摘しました。また世銀は、外貨準備の構成の多様化に向けた中央銀行の積極的な金購入(グラフ【A】)も引き続き追い風になっている、との認識を示しました。
金は3,000米ドル台で高止まりの見通し
金価格の見通しについて、世銀は、25年に年平均3,250米ドル、26年には3,200米ドルと予測しました(グラフ【B】)。前回(24年10月)見通しにおける、25年:2,325米ドル、26年:2,250米ドルから、いずれも大幅に上方修正した格好です。
こうした見通しについて世銀は、先行きの不確実性や地政学的緊張、金融市場の変動性の高まり(グラフ【C】)への懸念などから、投資家のリスク回避先としての金の需要が根強いことを背景に挙げました。また、26年にかけては、不確実性の緩和に伴ない金価格が僅かに低下するとみられるものの高止まりが続くとの見解を示しました。
経済の先行き不確実性が高まれば上振れ余地も
4月末の金価格の水準が3,300米ドル付近であることから、世銀の見通しは一見、今後の上昇余地が乏しいことを示しているように思われます。しかし、先行きのリスクに関して世銀は、金を含む貴金属全般について、貿易摩擦の激化などに伴ない経済の先行き不確実性が高まれば、見通しから上振れするリスクがあるとしました。
そのため、世銀の見通しは慎重というよりも、大幅な上方修正をしてもなお、投資家によるリスク回避先としての金の需要が根強いことを示唆している、と考えられます。

![【図表】【B】金価格の推移と世銀による見通し、[右図]【C】VIX指数の推移](/files/market/rakuyomi/images/rakuyomi_vol-2095_02.jpg)
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