日本では見過ごされがちな、アセアン地域・同主要国の市場・経済などの現状をお伝えします。

株式市場:アセアン株式相場は小幅に上昇
4月のアセアン株式相場は、前月末比で小幅に上昇しました。国別では、インドネシアやタイ、フィリピン、マレーシアの株式相場が上昇した一方、シンガポールやベトナムは下落しました。2日に米国が各国に課す相互関税の詳細を発表したことに対し、中国や欧州などが報復関税を打ち出したことなどから、世界的な景気の先行きへの懸念が強まり、アセアン主要国の株式相場は、月初旬に総じて大きく下落しました。

しかし、米国が9日に、相互関税の上乗せ部分の一時停止を表明したことなどを受け、アセアン株式は買い戻しの動きが拡がり、反発しました。また、14日に、米国が自動車や同部品へ課す予定だった25%の追加関税について、減免などの措置を講じる可能性を示唆したことなども、自動車生産・輸出比率の高いタイなどを中心に追い風となり、株式相場では月初の下げを埋め、上昇へつながりました。一方、米中との経済的なつながりの強いベトナムや、世界的な物流拠点として知られるシンガポールでは、米中を中心とする貿易摩擦の激化が懸念される中、株価の反発は限定的となりました。

ここからは、4月に発表された経済指標や出来事、注目ポイントなどを中心に、ご紹介します。

米国がアセアン各国への関税率を発表
4月2日に発表された、アセアン主要国に対する関税率(各国共通の基本税率の10%を含む)は、ベトナム:46%、タイ:36%、インドネシア:32%、マレーシア:24%、フィリピン:17%、シンガポール:10%となりました。これを受け、アセアンでは特別経済大臣会合で、報復関税を課さない方針を確認したほか、各国は米国との交渉に臨む姿勢を示しました。また、景気下支えなどの目的から、フィリピンやシンガポール、タイが金融緩和を実施しました。なお、基本税率に対する上乗せ部分については、7月9日までの90日間、発動停止となっています。

今後も、米関税政策を巡る不透明感は世界の株式相場の懸念材料になると考えられます。しかし足元では、アセアン主要国にとって関わりの深い米中の貿易交渉の進展期待が高まっており、今後の動向が注視されます。また、内需主導型の経済構造などの特性から、米関税政策による影響が相対的に小さいとみられるフィリピンに対する投資家の関心が高まっています。

【図表】アセアン地域・同主要国の株価指数と為替(対円)の推移(左)および直近1ヵ月の騰落率(右)
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。