20年前は外資との合弁会社が圧倒的に主流を占めていた中国の自動車業界ですが、官民一体となって新エネルギー車*(以下、新エネ車)に注力した結果、中国勢は瞬く間に日米欧の既存自動車メーカーに追いつき、中国は世界一の新エネ車大国となりました。今や世界のEV(電気自動車)販売の2台に1台が中国ブランドで占められている状況です。近年は過当競争や消費低迷による国内販売の低調、欧米諸国からの圧力といった厳しい状況が続いたものの、新たな変革期を迎えた中国の自動車産業は、今後の成長期待の高い産業の一つとして注目されています。中国政府はEV、プラグインハイブリッド車、燃料電池車を新エネ車として区分。

中国では自動車のインテリジェント化が進行
中国は自動車の電動化で世界をリードしたのに続き、今度はインテリジェント(知能)化においても世界の先頭に立ちつつあります。同国ではソフトウェアの更新で機能をアップデートできる、SDV(ソフトウェア・ディファインド・ビークル)などの開発が急速に進んでおり、スマートフォン大手のシャオミや通信機器最大手のファーウェイといった異業種からの新規参入組が自動車のIT化を先導しています。また、新興AI企業、ディープシークの大規模言語モデルの車両搭載も相次いでおり、各メーカーが競ってインテリジェント運転機能を備えたEVの開発を進めています。中でもEV最大手のBYDは、低価格クラスを含む全てのシリーズに高度運転システムを搭載すると発表し、注目を集めました。こうした自動車のインテリジェント化は、政府による買い替え促進策が延長されたこともあり、国内での販売を押し上げました。一方で、多くの海外メーカーは中国の新たなトレンドに追いつけず、販売シェアを大きく失うこととなりました。

新興国への輸出や現地生産に注力
中国の自動車メーカーは近年、海外での販売にも注力しており、2023年には輸出台数ベースで日本を抜いて世界首位となるなど、躍進を続けています。一方で警戒を強める欧米諸国からの締め付けは厳しさを増し、各地で追加関税などの対抗措置が講じられています。そうした中、中国メーカーはグローバルサウスと呼ばれる新興国・途上国への輸出に尽力しているほか、海外での生産にも着手しており、2024年はタイやブラジル、トルコなどでの現地生産計画が発表されるなど、中国勢の海外進出が大きく進展しました。産業振興を念頭に、新興諸国ではこうした動きが総じて歓迎されており、今後は現地生産が活発化すると見込まれます。そして中国メーカーにとっては、現地での消費拡大に加え、周辺の先進国などに輸出する際、輸送コストや規制などの面で中国本土からの輸出よりも有利になると考えられ、更なる追い風となる可能性があります。

中国自動車メーカーの競争力が試される
わずか数年で劇的な変化を遂げた中国の自動車産業。同国の自動車メーカーは熾烈な競争と圧倒的な経営スピードによって技術を進化させ、競争力を鍛えてきました。今や中国企業の技術力は日米欧に匹敵するとも言われるほか、車載用バッテリーのサプライチェーンも中国勢が事実上掌握している状況です。世界の競合と同品質の車を、より低価格で提供する中国の自動車企業の競争力は、欧米による反発が強まる中でも、簡単には揺るがないと考えられます。

【図表】[左図]中国の乗用車販売・メーカー資本別市場シェア、[右図]中国の自動車輸出台数
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