5月の金融市場では、上旬は米国の関税政策への根強い警戒感が相場の重荷となったものの、中旬には、米国と中国が互いに課した追加関税を大幅に引き下げることで合意し、貿易摩擦の激化による世界経済の悪化懸念が後退したことから、世界の株式相場は大きく上昇しました。その後、財政悪化懸念を背景とした米長期金利の上昇や、EU(欧州連合)に6月1日から50%の関税を課すとのトランプ米大統領の表明などを受け、株式相場は上げ幅を縮めましたが、EUへの関税の発動が7月9日に延期されると、株価は再び上昇に転じました。なお、米国では、28日に国際貿易裁判所が相互関税などの差し止めを命じたものの、翌29日には連邦巡回区控訴裁判所が同差し止めの一時停止を命じました。また、月末には再び米中間の緊張が高まるなど、関税政策を巡る混乱が続きましたが、世界の主要株式相場は上昇して終えました。
引き続き米関税政策の動向が注視される
6月は引き続き、米国の関税政策動向が市場の主な焦点となりそうです。EUのフォンデアライエン委員長とトランプ米大統領は5月下旬に電話協議を行ない、合意に向けた迅速な協議を行なうとしましたが、米国側はEUとの間で抱える貿易赤字削減を狙うほか、米巨大テック企業への規制やEU加盟国の付加価値税見直しといった広範な要求を掲げており、交渉の難航が予想されます。
日米間では、6月15日からのG7サミット(主要7ヵ国首脳会議)に合わせて予定される首脳会談を視野に、引き続き最終合意に向けた緊密な協議が行われる見込みです。なお、7月の参院選を前に、日米首脳会談などで十分な成果を挙げられれば、石破政権に有利に働く一方、交渉が停滞すれば内閣支持率の低下につながる可能性もあります。
そのほか、G7サミットでは、通商政策に関わる議論などが焦点になるとみられ、共同宣言の内容や採択の有無にも関心が寄せられています。
各国・地域で金融政策決定会合が実施される
ユーロ圏では、5日のECB(欧州中央銀行)理事会において、7会合連続で政策金利が引き下げられる見込みです。一方で、ECBメンバーからは利下げの一時停止に関する発言が増えており、投資家の関心は利下げの終了時期へと移りつつあります。
日本では、16~17日に金融政策決定会合が開かれます。日銀は引き続き利上げに慎重な姿勢を示しており、今会合でも政策金利の据え置きが予想されています。なお、国債買い入れ額の縮小によって流動性が低下する中、買い手不足や国の財政悪化への懸念、米関税政策の不透明感などを受けて超長期国債を中心に金利上昇が続いており、今会合で示される来年4月以降の国債買い入れ減額方針や、財務省が20日に開く国債市場特別参加者会合にも注目が集まっています。
米国では、17~18日にFOMC(連邦公開市場委員会)が開催されます。経済が底堅さを維持する中、前回5月に続いて政策金利が据え置かれる見通しですが、関税政策動向や税制改革法案による財政悪化の可能性など、経済を取り巻く不確実性は高いことから、パウエル議長の記者会見や、会合参加者による政策金利の見通しなどが注目されます。

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