2024年9月以降、7会合連続の利下げ
ECB(欧州中央銀行)は、6月4・5日に開催した政策理事会で、市場予想通り、7会合連続となる0.25ポイントの利下げを決定しました。これにより、主要政策金利のうち、市場金利の下限となる「中銀預金金利」は2.00%となりました。また、ラガルドECB総裁は会見で、新型コロナウイルスやウクライナ戦争、エネルギー危機などの複合的なショックに対応した金融政策サイクルは終わりに近づいているとの見解を示し、利下げ局面の終わりに差し掛かっていることを示唆しました。

5日の欧州金融市場では、追加利下げ観測が後退し、国債利回りが上昇したほか、ユーロが対米ドル、対円などで買われました。また、株式市場では、利下げ観測の後退で相場が軟調となる場面もあったものの、同日に行なわれた米中首脳の電話協議について、トランプ米大統領が「非常に良い会談だった」と述べたことなどを受け、米中の緊張緩和期待が拡がったことなどから、引けでは総じて上昇し、独DAX指数は最高値を更新しました。

今年と来年のインフレ見通しを下方修正
今回発表されたECBスタッフの経済見通しでは、原油などのエネルギーの価格下落やユーロ高などを背景に、今年と来年のインフレ率がそれぞれ0.3ポイント引き下げられました。その結果、来年のインフレ率は1.6%と、ECBの目標である2%を下回るものの、再来年には同水準に回復する見通しです。また、実質GDPについては、来年の予想が0.1ポイント引き下げられただけでした。この点については、米関税政策が企業の投資や輸出にとって重荷となるものの、ドイツなど、欧州各国が検討する国防費やインフラなどへの財政支出が成長を支えていくとされています。

年内にあと1回の追加利下げとの見方が有力
ラガルド総裁は、利下げ局面の終わりが近いことを示唆しつつも、会合ごとに、データ次第で政策を判断していくとして、特定の道筋を確約しない姿勢を維持しました。金融市場では従来、次回7月は利下げが見送られ、次の9月に最後の利下げが行なわれるとの見方が有力でした。しかし、今回のラガルド総裁の会見後には、7月に利下げが見送られた後、12月の会合までにあと1回、利下げが行なわれるとの見方が有力となっています。

【図表】[上表]年内の政策理事会の予定、[下表]ECBスタッフの経済見通し
【図表】[左図]金利・為替の推移、[中央図]物価・賃金(前年比)の推移、[右図]PMI(購買担当者指数)の推移
  • ECBなどの信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものおよび見通しであり、将来を約束するものではありません。