2024年7月以来、8会合ぶりに利下げを見送り
ECB(欧州中央銀行)は、7月23・24日に開催した政策理事会で、物価上昇率が目標水準の2%まで鈍化するなか、市場予想通り、利下げの見送りを決定しました。これにより、主要政策金利のうち、市場金利の下限となる「中銀預金金利」は2.00%で維持されました。また、ラガルドECB総裁は会見で、EU(欧州連合)と米国の通商協議の行方に注意を払っているとして、様子見の姿勢を強調したほか、リスクは下振れ方向にあるとしながらも、足元の経済状況は良好で、予想並みかやや上回っているとの明るい見方を示しました。

24日のユーロ圏金融市場では、通商協議の進展期待に加え、追加利下げ観測が後退したことから、国債利回りが総じて上昇したほか、ユーロが対米ドル、対円などで買われました。また、株式市場では、通商協議の進展期待が株価の押し上げ要因となった一方で、利下げ観測の後退に加え、個別企業の決算発表が重荷となった国もあったことなどから、相場は上下マチマチとなりました。

貿易面の緊張が解ければ、経済活動の活発化も
米国の相互関税の上乗せ部分の発動を8月1日に控え、EUは現在、米国との通商協議を続けています。一部の報道では、米国はEUに対して15%の関税を課す方向とされています。これは、ECBスタッフの6月時点の想定である10%を上回る水準ながら、同想定の悲観シナリオの20%や、トランプ米大統領が示唆した30%を下回ります。

ラガルド総裁は会見で、関税の引き上げやユーロ高、地政学上の不透明感の持続が、企業の投資意欲を鈍らせているとしたものの、貿易や地政学に絡む緊張が速やかに解消されれば、景況感が改善し、経済活動が活発化する可能性があるとの見解を示しました。なお、ドイツでの財政拡張や、欧州各国が検討する国防費・インフラへの財政支出が、成長率を押し上げると期待されています。

年内の追加利下げ観測は後退
ラガルド総裁は、会合ごとにデータ次第で政策を判断していくとして、特定の道筋を確約しない姿勢を維持しました。金融市場では従来、年内に0.25ポイントの利下げが行なわれるとの見方が有力でしたが、今回の会合を経て、利下げ観測は後退しました。

【図表】[左図]金利・為替の推移(2020年1月2日~2025年7月24日) 、[中央図]物価・賃金(前年比)の推移(2019年1月~2025年6月) 、[右図]PMI(購買担当者指数)の推移(2022年8月~2025年7月)
【図表】[上図]2026年前半までの政策理事会の予定、[下図]ECBスタッフの経済見通し(25年6月時点)
  • ECBなどの信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものおよび見通しであり、将来を約束するものではありません。