25年は0.2、26年は0.1ポイントの上方修正
IMF(国際通貨基金)は7月29日に発表した最新の世界経済見通しで、関税引き上げを見越した輸入の前倒しが予想以上に強かったこと、米国の実効関税率の低下、米ドル安などを背景とした金融情勢の改善、一部主要国での財政拡大などを背景に、向こう2年の世界のGDP成長率を上方修正しました。それでも、2025年で前年比+3.0%、26年も+3.1%と、24年の実績や、コロナ禍前の2000~19年の平均の+3.7%を下回ります。
中国の25年の上方修正が突出、米国についても、減税・歳出法の成立で26年を上方修正
主要な国・地域の見通しでは、25年の中国の上方修正が0.8ポイントと、大きくなりました。その主な背景は、米ドルに連動して動く人民元が対主要通貨で下落したこともあり、米国向けの輸出の落ち込みを他地域向けの輸出で補うなど、今年上半期の経済活動が予想以上に好調だったことです。加えて、米国の対中追加関税が大幅に引き下げられたこと(累計145%→54%)も寄与し、26年の見通しも0.2ポイントの上方修正となりました。
米国については、関税率の低下や金融情勢の緩和などに伴ない、25年が0.1ポイントの上方修正となったほか、7月の減税・歳出法の成立を受け、26年については0.3ポイントの上方修正となりました。
リスクは下振れ方向
前回見通しが、4月発表の米相互関税を前提としていたのに対し、今回は、現在、停止中の措置は期限を過ぎても適用されないとの前提の下、実効関税率が、米国で17.3%、世界のその他の地域で3.5%と、それぞれ、4月時点の予測の24.4%、4.1%から低下すると想定されています。なお、米国が7月に日本やEU(欧州連合)と合意した通商協定は反映されていません。IMFは、両合意に基づくと、米国の実効関税率は、今回の見通しの想定水準に近くなるものの、合意はあくまで枠組みについてであり、今後、具体化される内容を注意深く検討し、経済的影響を検証する必要があるとしています。
また、IMFは、通商協議が恒久的な合意に至らない場合、不確実性の高さが経済活動の重荷となる可能性や、関税率が再び上昇すれば、成長鈍化につながるリスクがあるとしています。また、地政学的緊張に伴ない、一次産品価格が上昇する可能性のほか、財政赤字拡大などを背景に金利が上昇し、世界的な金融状況の引き締まりにつながりかねないリスクなどを指摘しています。
![【図表】[左図]IMFの世界経済見通し(実質GDP成長率)<白背景部分は2025年4月時点の予測との比較(%ポイント)>、[右図]世界の実質GDP成長率の推移(1990年~2026年予測)](/files/market/rakuyomi/images/rakuyomi_vol-2115.jpg)
- (IMFのデータをもとに日興アセットマネジメントが作成)
- 上記は過去のものおよび予測であり、将来を約束するものではありません。