国内景気が緩やかな回復基調を続ける中、団塊世代の退職などで労働力人口の減少が加速していることで、幅広い業種で人手不足が起こっています。求職者に対する求人数の割合を示す有効求人倍率は、昨年12月時点で1.15倍と22年9ヵ月ぶりの高水準となりました。人材の確保は、企業経営の大きな課題となっており、必要な人材が確保できないことや、労働需給の逼迫で賃金が上昇していることなどが、企業業績にマイナスの影響を与えるケースも出てきています。

有効求人倍率の推移
信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
  • グラフ・データは過去のものであり、将来の運用成果などを約束するものではありません。

人手不足は、人口減少を背景としていることから、構造的に続く可能性が高いと考えられます。ただし、こうした環境を、ビジネスチャンスと捉える企業も多くみられ、当ファンドにおいても、以下の3点を中長期的な投資テーマとして注目しています。

① 人材関連ビジネス

景気回復を背景とした企業活動の活発化を受けて、人材派遣、人材紹介などの需要が高まっており、関連企業の業績が好調に推移しています。政府が積極的に推進している、女性の活用や、労働市場の柔軟化が進む過程では、多様な働き方を提供する人材派遣や人材紹介のサービスが拡大すると考えています。また、自動車に代表される輸出型の製造業各社は、円安効果などによる好業績を背景に、将来に向けた研究開発投資を積極化しており、開発プロジェクトへの技術者派遣や、開発の一部を請け負うビジネスを展開する企業にも注目しています。

② 福利厚生代行ビジネス

優秀な人材を確保するためには、賃金水準を引き上げるだけではなく、福利厚生を充実させることも重要なポイントになります。しかし、自前で保養所や社員寮を運営したり、各種のサービスを提供したりすることは、企業の負担が大きいことから、福利厚生を外部企業にアウトソースする動きが続いています。最近では、人手不足に悩む中小企業が、新たに福利厚生の代行サービスを導入するケースが増えており、関連企業に注目しています。

③ FA(ファクトリーオートメーション)関連企業

円安基調やアジア各国の人件費上昇を受けて、一部の企業では海外での生産から国内生産に回帰する動きがみられます。しかしながら、高齢化が進む地方において、工場の現場で働く人材を確保するのは容易ではありません。このため、製造ラインの自動化(オートメーション)をさらに進めることで、一人当たりの生産性を高めるための投資が積極的に行なわれており、センサーなどの制御機器や、ロボットなどの需要が拡大しています。この分野において、日本企業はグローバルで高い競争力を持っており、アジアでも起こり始めている人手不足や人件費の上昇を背景とした自動化投資の拡大から恩恵を受けられる点にも注目しています。

日本経済にとって、人手不足の問題を解決することは、最重要課題の一つであることから、関連するビジネスの範囲が長期的に拡大していくことが想定されます。今後も、人材の確保や生産性の向上に関する有望な製品やサービスを提供する企業を発掘することに注力したいと考えています。