日本の株式市場は、年初来堅調な推移を続け、ついに日経平均株価が2000年4月以来、15年ぶりとなる2万円台を回復しました。15年前の2000年当時は、インターネットと携帯電話の普及が始まった時期に当たり、株式市場では電気機器、情報通信などの関連セクターの株価が急騰する、「IT(情報技術)バブル」と呼ばれる状況にありました。株価には先見性があると言われていますが、この時の高い株価は、当時の想像をはるかに超えるスピードでITが進化し、スマートフォンで動画を見たり、買い物をしたりできるようになった、現在の状況を予見していたのかもしれません。しかしながら、2000年以降、IT関連銘柄の株価は大きく下落しました。日経平均株価が2万円台を回復した現在でも、当時の株価を大きく下回っている銘柄が数多くあります。

 現実の世界においてITが想像以上に進化する反面、株価が追いついていない要因の一つに、スマートフォンの登場による革命的な変化の主役が、残念ながら、日本企業ではなかったことがあると思います。2000年当時、国内ではほとんどの携帯電話が日本企業の製品でしたが、2014年の国内スマートフォン販売台数は、米国企業が大半を占める状況です。東証一部上場企業に占める電気機器セクターの時価総額の比率は、2000年4月と比べて大幅に低下するなど、電気機器セクターは、「失われた15年」を象徴するセクターとなってしまいました。

 しかしながら、もう少し細かく見てみると、電気機器セクターの中でも高い成長を続けてきた分野があります。その代表格が電子部品です。スマートフォンなどのモバイル機器は、米国、韓国、中国などの企業が世界の市場で激しい競争を続けていますが、各社の端末の中身を見てみると、共通して日本企業の電子部品が多く使われています。つまり、日本の電子部品メーカーは部品を供給し続けられる限り、企業別のシェア争いとは関係なく、スマートフォン市場が拡大すればするほど、恩恵享受が見込まれるということです。しかも、従来型の携帯電話から、スマートフォンへと端末が進化する過程で、一台当たりに使われる部品の数は、急速に増加しています。例えば、日本企業が得意とするセラミックコンデンサーの場合、従来型の携帯電話では約100~200個だった搭載数量が、スマートフォンの高級機種では約400~800個まで増える状況となっています。薄型化や軽量化が進んでいる、高級機種では特に、生産の難易度が高い超小型部品のニーズが高まっており、技術力が高い日本企業の優位性が高まる要因となっています。このような中、電子部品メーカーの中には、積極的な設備投資を続けることで、拡大する需要に対応してきた結果、ITバブル期の利益水準を上回る企業も出始めています。

 一方で、グローバルな競争の中で、劣勢に立たされていた家電メーカーの一部には、「復活」を果たしつつある企業が出てきています。これまでは、不採算部門を切り離し、人員の適正化を含めた厳しい合理化を進めるなどの事業構造改革を進めることで、業績の悪化に歯止めをかける局面でしたが、最近では、得意分野で積極的な設備投資を行なうなど、攻めの姿勢も見せ始めています。今後は、事業構造改革によって収益性が改善している中で、得意分野を中心に売上を伸ばすことができれば、業績が急速に回復していく局面に入る可能性が高いと考えています。

 以上のような電気機器セクターの状況を背景に、当ファンドでは、「成長」と「復活」の両面に注目し、グローバルな競争力が高い電子部品関連企業と、事業構造改革が進展している家電メーカーに注目してきました。今後も、グローバルな激しい競争の中で、日本のIT関連企業がどのように戦っていくのか、各社の経営戦略を注視し、ポートフォリオに反映させていきたいと考えています。