2015年の日本株式市場は、TOPIX(東証株価指数)でみると+9.9%の値上がりで終わりました。夏場にかけては、年初来の上昇率が一時20%にまで達する場面もありましたが、8月下旬以降は、中国経済に対する懸念や、米国の金融政策に対する不透明感などから、調整色が強い展開となりました。今回は、年頭にあたって2016年の日本株に対する見方と、ジパングの運用方針についてお伝えしたいと思います。
安倍政権が発足して以降、日本株式市場は上昇基調を続けてきました。当初は、三本の矢からなる「アベノミクス」に対する期待感によって市場全体が底上げされるような上昇局面でしたが、その後は「コーポレートガバナンス・コード」の導入などを背景に、日本企業の経営が大きく変化し始めたことを評価した上昇へと変化しました。この過程で、業績好調が続く企業や、経営の変化が見られる企業の株価が上昇基調を強める一方、海外経済の影響を受けやすい企業や、経営変化の乏しい企業の株価が大きく出遅れるなど、銘柄間のパフォーマンス格差が大きくなる傾向が出始めるなど、物色動向の変化が見られました。
日本株式市場は、暦年で見ると2012年から2015年まで4年連続での値上がりとなっています。では、5年目となる2016年は、どのような展開になるでしょうか。
足元の状況をみると、新興国の経済動向や、地政学的リスクなど、外部の不透明要因は多く、短期的にはこれらの影響を受けて株価が調整する局面も十分に想定されます。しかしながら、年間を通してみれば、次の3つを背景として、日本株式市場は、今年も上昇基調を維持すると考えています。
①日本企業の業績は、堅調な内需や原材料安のメリットなどを受けて、2016年度についても増益基調を続けられる見通しであること
②昨年8月以降の株価調整で、主要国と比較して株価指標の割安感が出始めていること
③「コーポレートガバナンス・コード」の導入などを受けて、日本企業の経営が構造的に大きく変化し始めていること
特に3番目の日本企業の経営変化は、これまで売上や、市場シェア、財務の安定性を重視してきた日本的な経営から、収益性や効率性を重視し、主要国と比較して低い水準にあるROE(株主資本利益率)を高めることを目標とする経営に変わる歴史的な転換であると考えています。
これまで溜め込んだ潤沢な資金を成長のための企業買収や設備投資、増配や自社株買いなどの株主還元などに積極的に使う一方で、持合い株式を解消したり、収益性の低い事業については売却するなど、経営効率を意識した戦略が加速しています。こうした動きは、中期的に日本株式市場の上昇基調を支える要因になると思われます。
ただし、残念ながらすべての日本企業が、このような経営変化を実行できるわけではありません。目標としてROEの向上を打ち出す企業は数多くありますが、これからはその実現性が問われる段階に入ります。新興国経済の成長鈍化が、世界経済全体の成長スピードを緩やかなものにするとみられるなか、2016年は、事業再編や、企業買収効果など、独自の要因で業績を伸ばしROEの向上が期待できる企業と、景気動向の影響を受けて業績が伸び悩む企業との株価に格差が広がる可能性が考えられます。
ジパングでは、一貫して企業調査に基づいて企業の変化を捉えることに注力してきました。昨年1年間は、賃金の上昇や訪日外国人の増加によるインバウンド需要などを背景に好業績が続く内需関連企業に重点を置いた銘柄選択が奏功し、TOPIXを大きく上回るパフォーマンスを実現しました。今年も、経営戦略の違いなどによって、銘柄間の格差が広がる傾向が続くことが想定されることから、引き続き、銘柄選択の効果を発揮できるよう、経営陣との面談などを中心とした企業調査に注力したいと考えています。
当面のポートフォリオは、新興国経済の成長鈍化が懸念される状況が続くとみられることなどから、引き続き、小売、サービス、ITサービスなど、内需関連企業に重点を置く方針です。ただし、株価が軟調に推移していたグローバル企業については、中には、高い競争力を理由に好業績が見込まれ、かつ割安感が強まっていると判断される銘柄もあることから、中期的な視点で注目していく所存です。
今年もジパングの運用に是非ご期待ください。
- 信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
- グラフ・データは過去のものであり、将来の運用成果などを約束するものではありません。