6月23日に実施された英国の国民投票においてEU(欧州連合)離脱派が勝利したことを受け、世界の金融市場は大きく動揺しました。株式市場はいったんは反発の動きをみせたものの、先行き不透明感の強い状況は、依然として続いていると言えます。このような環境変化を受け、今回は、日本株式市場の見通しと、ジパングの運用方針についてお伝えします。

 英国が国民投票でEU離脱を選択したことに伴ない、今後の世界経済の先行き不透明感は強まりました。しかしながら、足元の状況は、2008年の金融危機とは大きく状況が異なっています。当時は、金融機関の信用不安が大きな問題となった一方、今回は各国の中央銀行が米ドル資金の流動性を潤沢に供給するなど、セーフティーネットが十分に機能しています。また、各種規制の導入に伴ない、金融機関の財務内容が改善されたことから、信用危機の状況にはならないと想定しています。ただし、不確実性が高まったことにより、企業経営者が投資に慎重になるなど、景気の停滞感がしばらく続くリスクが高まったことには、注意が必要です。

 世界の主要な株式市場は、英国の国民投票後、大きく下落したものの、その後は反発しており、震源地の英国については、国民投票前を上回る水準にまで回復がみられました。一方、日本株式については、反発の動きがあったものの、海外の主要市場と比較すると戻りの弱さが目立ちます。その大きな要因は、円高の急速な進行にあると考えられます。円相場(対米ドル)が、日本の輸出企業の前提為替レートである1米ドル=105円~110円より円高水準にあるなか、業績に対する下振れ懸念の強まりが、株式市場の上値を抑えていると言えます。

 当面の日本株式については、英国のEU離脱が世界経済に与える影響を見極めるまで、不安定な推移となる可能性があります。ただし、信用危機は回避される見通しであること、そして、株価が既に対米ドルで100円程度までの円高を織り込んだ水準にあるとみられることなどから、下値は限定的であると考えています。長期的に見ると、日本企業の経営は、欧米企業と比較して見劣りするROE(自己資本利益率)を高めるために、将来に向けた投資や株主還元を積極化するなど、構造的に変化し始めており、現在の株価水準は割安感が強いと考えています。

 このような見通しのもと、ジパングでは世界経済の成長率が鈍化する中でも、個別に業績の拡大が見込まれる企業を厳選して投資することで、収益の獲得をめざす方針です。特に注目しているのは、①グローバル市場でのシェア拡大余地が大きい企業と②生産性の向上につながる製品やサービスを扱う企業です。

 一つ目については、M&A(合併・買収)や販路の拡大でグローバルなシェアが拡大基調にある企業は、景気や為替の影響をある程度は受けるものの、着実に成長を続けることができるとみていることが理由です。組入上位10銘柄(2016年6月末現在)の中では、企業買収によって米国でのシェアを高めている空調機器の「ダイキン工業」、高い品質ときめ細かいサービスを武器に世界でシェアを拡大させている業務用厨房機器大手の「ホシザキ電機」、需要が拡大傾向にある治療用カテーテルで、高い技術力を背景にシェアの拡大を続けている「朝日インテック」、高付加価値のボールペンが世界でヒットしている「パイロットコーポレーション」などが該当します。

 二つ目については、人口減少が見込まれる日本経済にとって大きな課題であることが理由です。特に、生産現場の自動化に関わるFA(ファクトリー・オートメーション)、ロボットなどの関連企業や、本業以外の業務のアウトソーシングを受託するサービス、経営効率を高めるためのM&Aを仲介するビジネスなどの分野に着目しています。組入上位10銘柄(2016年6月末現在)の中では、提案力とサービス力を背景に業績拡大が続くFA用センサー大手の「キーエンス」、地銀などと連携してM&A仲介の成約件数を伸ばし続けている「日本M&Aセンター」、企業の福利厚生代行事業で成長を続ける「リロ・ホールディング」などが、この観点から組み入れた銘柄となります。

 当面は、このように比較的景気の影響を受けにくい銘柄を中心としたポートフォリオを維持する方針ですが、自動車や、電子部品など、日本企業が高い競争力を持っている分野については、株価の下落で割安感が強まっている企業も増えており、世界景気の動向や、為替水準などを考慮しながら、中長期の視点で投資するタイミングを探りたいと考えています。収益体質の改善や株主還元の強化など、日本企業の企業価値が高まる傾向は、今後も継続すると考えています。株価調整局面をチャンスととらえて、銘柄選別をさらに強化していきたいと考えています。

当ファンドの株式組入上位10銘柄(銘柄数:78銘柄)
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