先日、家電量販店の経営陣と面談した際に、最近の売れ筋商品について話を伺う機会がありました。昨年は、訪日観光客の「爆買い」で炊飯器が飛ぶように売れたことが話題になりましたが、このところ継続して堅調な売れ行きが続いているのは、冷蔵庫、洗濯機などであり、特に、大容量タイプの販売が好調とのことでした。この背景には、働く女性が増えてきているという大きな変化があるようです。
限られた時間で家事をこなすために、大容量で乾燥機能も充実した洗濯機や、冷凍室が大きいタイプの冷蔵庫に買い替える動きが出てきています。家電業界の他にも、食品業界では冷凍食品や惣菜向け調味料の販売好調が続いていたり、郊外型の紳士服専門店でも女性向けスーツの比率が年々高まっているなど、女性の就労増加に伴なう様々な需要が生まれているようです。政府が成長戦略の柱として「一億総活躍社会」の実現を目指し「働き方改革」に取り組むなか、待機児童の解消や子育て環境の整備、そして配偶者控除の見直しなど、女性の就業率向上に向けた動きに加速がみられます。今後さらに働く女性が増えることで、家電製品、冷凍食品、アパレルなど幅広い分野で消費が堅調に続くことが期待されます。
「働き方改革」については、長時間労働の抑制や、フレックスタイム、テレワークなどの多様な働き方ができる環境整備などが企業に求められています。これを受けて、経団連では、7月に「経営トップによる働き方改革宣言」を発表し、具体的な取組み例として、業務の効率化、ノー残業デーの徹底、有給休暇の取得促進などを打ち出しています。ある大手自動車メーカーについては、2万5千人もの規模で在宅勤務を導入するとの報道もありましたが、実際に、最近面談した多くの企業が、労働時間の抑制に本格的に取り組む姿勢を示していました。このように、長時間労働を是正し、多様な働き方を実現するために必須なのが、業務を効率化するためのIT投資とアウトソーシング(業務の外部委託)です。外出の多い営業社員の業務効率を高めるために、タブレット端末を使ったシステムを構築したり、在宅勤務の社員が働きやすいネットワーク環境や勤怠管理システムを整備したりする企業が増えています。また、自宅や外出先から本社のシステムにアクセスする機会が増えることに伴なって、セキュリティーを強化するための投資を行なう企業も多くなっており、情報サービス関連企業にとっては追い風となっています。さらに、福利厚生など一部をアウトソーシングしたり、外部人材の活用などで効率を高めようとする動きも活発になっています。この動きをさらに進め、本業に集中するために競争力が劣る多角化事業を他社に売却するなど、事業部門単位のM&A(合併・買収)の動きが徐々に活発になっており、業界再編が進み始めていることも注目されます。
こうした取組みが進むことにより、企業の生産性が高まる効果が期待されることに加え、労働参加率が上昇し、所得環境が改善することで個人消費が底上げされる可能性があり、中期的には日本経済の成長性が徐々に高まると考えています。
「ジパング」では、これまでも企業が生産性を高めるために必要な製品やサービスを提供する企業に注目してきました。具体的には、生産の自動化を進めるために必要なセンサーやロボットなどのFA(ファクトリーオートメーション)関連企業、福利厚生代行などのアウトソーシング関連企業、多様な働き方をサポートする人材派遣関連企業、業界再編につながるM&A仲介関連企業、業務効率を改善するためのシステム構築を行なうITサービス関連企業などです。今後は、女性の労働参加率が高まることで恩恵を受けると考えられる、小売、食品、サービスなどの消費関連企業にも注目したいと考えています。
- グラフ・データは過去のものであり、将来の運用成果などを約束するものではありません。