10月の世界の株式市場は、米国の金利上昇を背景に同国株式が急落したことがきっかけとなり、連鎖的に下落する状況となりました。日本株は、9月に大きく上昇し、日経平均株価が24,000円台を回復したものの、10月に入ってから一転し、今年2月以来となる大幅下落を記録しました。米国金利の上昇は好調な米国経済を反映したものです。ただし、これまで一部の米国ハイテク関連企業に投資資金が集中していたことに伴ない、バリュエーション面で割高感がみられ始めていたこと、そして、米中貿易摩擦の影響などを背景に世界経済の成長鈍化が懸念されたことなどが、大きな株価下落につながったと考えています。

 当面は、米国金利の動向や、米国の通商政策、新興国の景気動向などを睨みながら、不安定な株価動向が続くことが想定されます。ただし、以下の3つの要因から、ここからの日本株の下値は限定的であると考えています。

①堅調な企業業績

 米国の通商政策の影響など、一部の業種には懸念材料があるものの、日本企業全体としては、堅調な業績推移が続くことが見込まれます。収益性を重視した事業構造改革を進めてきた成果や、M&A(合併・買収)の効果が出始めている企業が多くなっています。来期にかけても、増益基調は維持できるものと想定しています。

②割安な株価水準

 日本株は、PER(株価収益率)などの株価指標で見ると、主要国との比較や、過去の平均的な水準との比較で相対的に割安な水準にあると考えられます。また、日本で低金利が続いている中で、配当利回りが平均で2%を超える水準にあることも、株価のサポート要因になると考えています。

③高まる株主還元期待

 日本企業は、経営の効率性を高める必要性から、株主還元の強化を進めてきましたが、株価上昇などを背景に、最近では自社株買いのペースがやや鈍化する傾向が見られました。しかし、足元で株価が調整したことに加えて、持ち合い株式の保有に対する投資家の厳しい見方が強まっていることもあり、自社株買いの増加が株価を下支える可能性があります。

 以上の要因から、日本株の下値不安は大きくない一方で、外部環境が落ち着きを取り戻す局面では、上昇基調に回帰することが期待できるものと考えています。

 今回のような株価調整局面は、成長性の高い優良銘柄を割安と判断される水準で買い付けることができるチャンスと捉えて、厳選した銘柄を積極的に買い増していく方針です。現在、特に注目しているカテゴリーは、①人手不足に対応するための生産性向上をサポートする、ITサービス、人材サービス、アウトソーシング、ロボット、FA(ファクトリー・オートメーション)などの関連企業、②自動車の電動化、軽量化、自動化などの構造的な変化に対応できる自動車部品、電子材料などの関連企業、③成熟した国内市場においてもシェアの拡大で成長する小売専門店、④海外でシェアを拡大している医療機器、産業機器関連企業の4点です。この他、短期的な業績の下振れに対する懸念から、株価の調整が続いている半導体関連企業についても、中長期的な半導体需要の拡大基調は維持されると考えていることから、業績下方修正などの悪材料が出尽くすタイミングに注目しています。