日本株式は、日経平均株価が史上最高値を更新し4万円台に突入するなど、足元で早いペースでの上昇が続いています。上昇の背景には様々な要因がありますが、主に「構造変化、企業業績、外部環境、海外からの資金シフト」の4つの観点で説明できると考えています。
①高まる日本の構造変化に対する期待
日本でマクロとミクロの両面から構造変化が起こっていることは、これまでもお伝えしてきましたが、今年に入りその動きがより明確になりました。マクロの面では、注目されていた春闘での賃上げ率が5%台の大きな伸びとなったことが最も注目されます。労働力人口の減少傾向が続く中で、企業が人材に積極的に投資する姿勢を強めたことは大きな変化であると捉えています。これを受けて日銀はマイナス金利政策を解除し、安定的な物価上昇が見通せる状況に至ったとの見解を示したことで、日本経済がデフレから脱却したとの見方が強まりました。また、ミクロの面でも、東京証券取引所の要請に対応して、資本効率を高めるために株主還元を拡充した企業の株価が上昇するケースが多く見られるなど、日本企業の構造変化に対する期待が高まっています。
②好調な企業業績
1月下旬から発表が本格化した2023年12月までの決算では、業績見通しに対して順調な進捗が確認されました。内需の改善基調が続いていることや、為替の円安傾向、コスト上昇を価格転嫁する動きなどが追い風となっています。来年度についても、半導体、電子部品、産業機器などの分野で在庫調整が進んでいることや、賃金上昇を受けて内需の回復傾向が期待できることなどから、引き続き増益基調が維持される見通しです。
③良好な外部環境
米国で、インフレが落ち着きを見せていることなどから利下げに対する期待が継続していることや、AI(人工知能)の普及で恩恵を受けると見られる企業の業績が急拡大していることなどから、大型テクノロジー関連企業を中心に株価が上昇基調を維持していることも、日本株にプラスの影響となっています。特に、米半導体関連企業の大幅な株価上昇を受けて、日本の半導体関連企業が大きく上昇したことが、株価指数を押し上げる要因となりました。
④勢いを増す日本株への資金シフト
昨年来の株高を牽引してきた投資主体は、海外投資家です。日本の構造変化への期待が高まったことが背景ですが、その他にアジアでの投資先を中国から日本にシフトする動きが強まったことも海外投資家が日本株を買い越した大きな要因です。中国景気の低迷が続く中で、不動産問題への有効な対策を打ち出すことが出来ず、当面は景気の回復が期待出来ないとの見方が強まっていることや、地政学的なリスクに対する警戒感から、アジアへの投資先として日本が選好されています。
日本株式については、これまでの上昇が急ピッチであったことから、利益確定の売り圧力などにより目先の上昇ペースは鈍化する可能性が高いと考えています。しかし、これら4つの株価上昇要因は短期的なものではなく、当面は続くトレンドだと考えられることや、PER(株価収益率)などのバリュエーション面でも大きな割高感はないことなどから、今後は来期の業績動向を確認しながら企業の増益ペースに沿って徐々に上値を切り上げる展開を想定しています。
注目するカテゴリーは、AIの普及で成長が見込まれる半導体、電子部品関連企業、生産性向上に向けた投資の増加で好業績が見込まれるFA(ファクトリーオートメーション)、ITサービス関連企業、日本経済がデフレから脱却し、内需が拡大する恩恵が期待される金融、不動産、小売、建設関連企業などです。今後も、日本経済と日本企業の構造的な変化を捉えた銘柄選択を行なうことで、運用成果の向上をめざします。
- 基準価額(税引前分配金再投資ベース)およびTOPIXは、グラフ起点の基準価額(税引前分配金控除後)をもとに指数化しています。
- 基準価額(税引前分配金再投資ベース)とは、税引前分配金を再投資したとして計算した理論上のものである点にご留意ください。
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