日本の株式市場は、今年3月に日経平均株価が史上最高値を更新した後、ボックス圏での推移が続いています。日本経済と日本企業の構造変化に対する期待感や株主還元の拡充などから下値は堅いものの、上値も重い状況が続き、海外主要国の株価指数と比べて見劣りする動きとなっています。日本株の上値が抑えられてきた要因として、①2024年度の業績見通しが概ね横ばい圏にとどまり、事前の市場予想から下振れたこと、②足元で発表されている国内経済指標が、消費関連統計などを中心に弱含みで推移していること、③国内長期金利の上昇、④短期筋の利益確定や、政策保有株の売却などによる株式需給の悪化、などが考えられます。短期的には、これらの要因による売り圧力が残る可能性はありますが、いずれも影響が長引くものではなく、年後半にはボックス圏を上放れる可能性が高いと考えています。

まず、1番目の横ばいにある業績見通しについては、為替の前提を1米ドル=145円程度としている企業が多いことや、人件費などのコストの大幅な上昇を見込む一方で、値上げ効果については慎重に織り込むなど、非常に保守的な前提で立てられています。このため、7月下旬から発表される四半期決算では、想定より高い進捗が確認できる企業が多くなると考えています。このタイミングでは、業績見通しの修正を行なう企業は限定的と見られるものの、次回以降の決算では多くの企業が上方修正を行なう可能性が高く、結果的には増益基調が維持されると考えています。

2番目の国内景気の弱さについては、食品などの物価上昇を受けて、家計の消費行動が慎重になっていることが影響していると見られます。円安の影響などから物価がある程度高止まることは想定されますが、今年度の賃上げが給与に反映されてくることや、夏の賞与が高水準となったことに加えて、定額減税の実施や夏場の電気・ガス代補助の再開などもあって、今後は所得の改善を実感しやすくなり、消費を下支えする効果が期待されます。また、半導体工場やデータセンターの建設が急増していることなどから、設備投資は堅調に推移すると見られており、国内景気の緩やかな改善が期待できます。

3番目の国内長期金利の上昇については、短期間に大きく変動したことがネガティブ視された面はありますが、日本経済がデフレから脱却し、物価と賃金が上昇傾向に入る中では、自然な動きであると考えています。今後も緩やかな金利上昇を想定していますが、実質金利はまだ低い水準にあることから、相対的に緩和的な金融環境は維持されると考えています。

最後の市場の需給動向については、株価の上昇を受けて海外投資家の一部などによる利益確定の売り圧力が強まった影響を受けましたが、年金基金や政府系ファンドなど長期運用の海外投資家の日本株への投資意欲は非常に強く、足元でも積極的に日本株の調査を進めている状況です。日本経済と日本企業の構造変化に注目した海外投資家からの資金の流入は、今後も継続すると期待されます。また、政策保有株の売却は、日本企業が資本効率を意識した経営に転換したことを示すもので、売却によって得た資金を株主還元や投資に振り向ける可能性が高いことから、中期的に見てポジティブな動きと捉えています。

以上のようなことから、年後半には企業決算で業績の上振れ基調が期待されることや、国内景気の底打ちが見込まれるなどの好材料が増えてくれば、日本株はボックス圏を上放れて、上昇基調になると考えています。

このような投資環境を前提として、当ファンドでは、個別企業の調査を徹底するとともに、今後の業績が上振れ基調で推移する可能性が高い銘柄の保有ウエイトを高めるなど、積極的なリバランスを進めています。特に、慎重な業績見通しを発表したことで株価が下落したものの今後の業績上方修正が期待できる銘柄や、在庫調整の進展で業績回復の確度が高まっている半導体、電子部品、産業機器などの関連企業、金利上昇が追い風となる金融関連企業などに重点を置いたポートフォリオを構築します。

<当ファンドの基準価額とTOPIXの推移>2017年1月4日~2024年6月28日
  • 基準価額(税引前分配金再投資ベース)およびTOPIXは、グラフ起点の基準価額(税引前分配金控除後)をもとに指数化しています。
  • 基準価額(税引前分配金再投資ベース)とは、税引前分配金を再投資したとして計算した理論上のものである点にご留意ください。
  • 基準価額は、信託報酬控除後の1万口当たりの値です。信託報酬の詳細につきましては、目論見書の「ファンドの費用」をご覧ください。
  • 当資料に示す各指数の著作権等の知的財産権その他一切の権利は、各指数の算出元または公表元に帰属します。
  • グラフ・データは過去のものであり、将来の運用成果などを約束するものではありません。