「何が分からないか、分からない!」方のためのFAQ

インデックスファンドって何で人気なんですか?

公開日2024年08月19日

加集 勇夫

日興アセットマネジメント

結論

  • 人気の理由は、シンプル&低コスト

  • 運用や選び方に対する誤解をなくしておくことが大切

  • あくまでも選択肢の一つとしてインデックスファンドを捉えよう

世の中にはいろいろな投資信託がありますが、その中でも近年人気を博しているのが「インデックスファンド」。雑誌やブログ、動画などでも推す声が多いことから、積極的にインデックスファンドを買っているという人も多いでしょう。

しかし、SNSなどにおける投稿を見ていると、「ん?」という誤解を見かけることもあります。そこで、この記事ではインデックスファンドの概要について改めてご紹介したいと思います。

インデックスファンドとは?

インデックスファンドとは、「特定の指数」に連動した投資成果を目指すことを目的に、運用が行なわれる投資信託のこと。「指数連動型の投資信託」などと呼ばれることもありますが、インデックスファンドという呼び名が一般的です。

イメージです。
インデックスファンドは指数に連動することが目標。アクティブファンドは指数を上回ることが目標。

連動対象になる「特定の指数」というのは、日経平均株価やS&P500指数、MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスなどのこと。指数は、株価指数に限ったものではなく、債券指数やREIT指数をはじめ、様々な資産クラスでいろいろな指数が作られています。

「それなら指数を直接買えばいいじゃないか」という声も聞こえてきそうですが、指数は市場の値動きをあらわす指標でしかないため、指数を直接売買することはできません。そして、インデックスファンドは、「指数に投資するのと同じ成果を得たい」という、そんな投資家の願いを叶えるための手段として存在しているといえます。

金融の世界では、運用の目標や基準になる指数のことを「ベンチマーク」と呼んでいます。そして、インデックスファンドの場合は、連動対象となる指数がベンチマークにあたります。ちなみに、ベンチマークは、測量における基準点や水準点を指すものが語源らしく、今では経営目標やパソコンなどの性能評価指標といった意味でも使われています。

お勧めされやすい理由①「分かりやすさ」

インデックスファンドが推される主な理由に、「分かりやすさ」や「コストの低さ」があります。まず、1つ目の「分かりやすさ」の要因としては、主に以下の3つが挙げられます。

① 運用目標が明確

インデックスファンドの運用目標は、「特定の指数と同じ値動きをする」というシンプルなもの。そのため、連動対象とする指数がどのようなものかが分かれば、その投資信託の商品性のかなりの部分が理解できてしまうという分かりやすさがあります。

2024年6月末時点
日本株式市場を代表する約2,000銘柄で構成される「TOPIX(東証株価指数)」。東証プライム市場を代表する225銘柄で構成される「日経平均株価」。日経平均株価の配当利回り上位50銘柄で構成される「日経平均高配当株50指数」。一定の基準を満たした日本企業400銘柄で構成される「JPX日経インデックス400」。米国株式市場を代表する30銘柄で構成される「ニューヨーク・ダウ平均株価」。米国株式市場を代表する500銘柄で構成される「S&P500指数」。S&P500指数の時価総額上位10銘柄で構成される「S&P500トップ10指数」。ナスダック市場に上場している全銘柄で構成される「ナスダック総合指数」。

日米の株価指数の例

② 市場全体の大まかな動きを捉えられる

指数の多くは、特定の市場やカテゴリーの全体あるいは平均的な動きを捉えるために設計されています。そのため、興味・関心がある市場の平均的なリターンを目指すだけなら、インデックスファンド1本で、その目的を達成することができます。

③ 値動きが把握しやすい

インデックスファンドは特定の指数と連動することを目標とするため、対象指数から大幅に乖離することはとんどないと言っていいでしょう。そのため、わざわざ取引口座の画面を開いて保有する投資信託の値動きを確認しなくても、ニュースなどで指数の動きをチェックすれば、上がり下がりを感覚的に掴むこともできてしまいます。


「自分が理解できないものには投資しない」というのは、資産運用を続けていくうえでの大切な心構えです。その点、インデックスファンドの分かりやすいシンプルな商品性は、初心者から経験者に至るまで、様々な投資家にとって始めやすく続けやすいものなのだといえると思います。

お勧めされやすい理由②「コストの低さ」

アクティブファンドと比べると、インデックスファンドの方が、運用中にかかる信託報酬などのコストは低い傾向にあります。この絶対水準での「コストの低さ」というのも、インデックスファンドが推される理由の一つになっています。

「ファンドマネージャーやアナリストによる企業訪問・調査などを通じて、キラリと光る銘柄を発掘する」 そんなイメージを投資信託に抱いている方も多いかもしれませんが、それはアクティブファンドの話。

指数の構成銘柄や比率があらかじめ分かっているインデックスファンドの場合は、キラリと光る銘柄を探す必要がない分、調査などにかかる手間を減らすことができます。そして、それが相対的なコストの低さにつながっているといえます。

運用目標やポートフォリオの構築手法が全く違うため、インデックスファンドとアクティブファンドのコスト比較をして優劣を語るのは公平なことではありません。とはいえ、私も含めた投資家にとっては、目論見書などに書かれた信託報酬などが低いこと自体が、魅力的に映るというのは事実だと思います。

ときどき目にする3つの誤解

新NISAをきっかけに空前の「インデックスファンドブーム」が起こっています。多くの人が投資信託に興味・関心を持ち、投資信託に関するSNSなどでの発信が増えるのは運用会社にとってうれしい一方、中にはインデックスファンドに対する誤解も散見されます。

誤解① コストが低い=優れている

信託報酬などのコストは、投資信託のパフォーマンスの足を引っ張る要因であり、コストの低い方が有利なのは間違いありません。ただ、コストが低いからといってパフォーマンスが優れているという訳でもありません。なぜなら、たとえコストが高くても運用が上手ければ、基準価額の動きは他の投資信託よりも優れたものになるからです。

最近は、0.001%単位でコスト水準が比較される状況にあり、私たちもその動向を気にしています。ただ、ここまで小さな数字になってくると、その差がインデックスファンドの成績に与える影響は、かなり小さなものになっているというのが実際のところだと思います。

誤解② ファンドマネージャーが銘柄を選んでいる

指数を構成する銘柄やその入替のタイミングは、インデックス・プロバイダーによって、あらかじめ決められています。例えば、S&P500指数であれば、「米国株式の中から、ある時点の時価総額が大きい順に500銘柄選ぶ」という具合。それぞれの指数は、こうした独自のルールに従って、日々機械的に運営が行なわれています。

そのため、インデックスファンドの銘柄選定や入替のタイミングも、指数のルールを見ながら行なわれることになります。「値上がりしそうだから」といった理由で、ファンドマネージャーが、指数との連動性を損なうような銘柄を意図的に入れたりすることはないという点は、改めて押さえておいていただきたいと思います。

  • インデックス・プロバイダーとは、日経平均株価を算出する日本経済新聞社や、S&P500指数を算出するS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社のことであり、指数提供会社ともいいます。

誤解③ インデックスファンドの運用は簡単

「ルールが決まっていて、構成銘柄や比率も分かっているので、インデックスファンドの運用は簡単だ」と思われがちです。しかし、決してそんなことはありません。

実際の運用現場では、「購入・換金により出入りする現金をどう管理するか」「売買に伴う手数料を抑えるためにどのように注文を出すか」「売買が容易ではない銘柄をどう取り扱うか」など、机上で算出される指数では発生しえない様々な課題をクリアしていく必要があります。

アクティブファンドのように指数に勝つのも難しいですが、同じように様々な課題を乗り越えて指数に連動するパフォーマンスを実現するのは、とても難しいことなのです。運用会社の中にいるからこそ分かるインデックス運用の奥深さは、投資信託を売買する多くの人に知っていただきたい点です。

「インデックスファンドだけ」は選択肢の一つ

分かりやすくて始めやすいインデックスファンドは、日本だけでなく世界でも支持を集めている運用業界の大ヒット商品。本記事では、インデックスファンドの商品性などについてご紹介させていただきましたが、資産運用をシンプルに手間をかけずにやりたいという方の「はじめの一歩」としても、インデックスファンドを取り入れてみていただきたいと思います。

そして、本記事の最後にお伝えさせていただきたいのは、インデックスファンドは、ポートフォリオを設計するパーツとして優れた商品である一方、それだけが自分にとっての正解とは限らないということ。なぜなら、インデックスファンドにはない、「こんなのあったんだ」というような、目の付け所のユニークさや考え抜いた仕組みを備えた投資信託が存在し、それをポートフォリオに組み入れる方が、自分の考え方にあっているということもあるからです。

もちろん、「そうしたファンドは必要ない」という方もいらっしゃると思います。ただ、インデックスファンドは、多種多様な投資信託の中の一つのカテゴリーでしかないというのは確かなので、マイベストを見付けられるようにインデックスファンド以外の投資信託にもぜひ目を向けていただきたいと思います。

加集 勇夫

日興アセットマネジメント



当ページは、一部個人の見解を含み、会社としての統一的見解ではないものもあります。


資産運用に役立つ情報をお届けします。