議決権行使の考え方

平成18年2月15日制定
令和5年12月25日改定

国内株式議決権行使基準

この「国内株式議決権行使基準」は、日興アセットマネジメント(以下、「当社」)の国内株式議決権行使が、当社の「議決権等行使指図ガイドライン」に則って行われるよう、具体的基準を定めるものである。これにより、組織的かつ整合的な議決権行使を目指すとともに、もって受託者責任の忠実な履行に資することを目的としている。なお、下記基準は必ずしも形式的・画一的に適用されるものではなく、投資先企業との対話等を通じて企業の状況や取り組みを的確に踏まえた上で、当該企業の持続的成長と中長期的な企業価値の向上に資する行使判断となるよう努める。


  • 【1】株主還元

    投資先企業に対しては、資本を効率的に活用して経済的価値を創出し、その価値を成長投資や内部留保、株主還元等に適切に配分することで、株主価値を中長期的に最大化することを期待する。剰余金処分議案の判断にあたっては、企業の成長ステージや事業環境、財務状況、投資計画等を踏まえ、中長期的な株主価値最大化に資する株主還元策であるかを精査する。

    1. 以下に該当する場合、原則として剰余金処分議案に反対する。
      1. 総還元性向30%未満、かつ、過去3期連続でROE8%未満の場合
      2. キャッシュリッチ企業で、総還元性向40%未満、かつ、過去3期連続でROE8%未満の場合。なお、キャッシュリッチ企業とは、「ネットキャッシュ/総資産30%以上、かつ、自己資本比率50%以上」を指す
      3. 3期連続当期損失で配当を実施する場合
      4. その他、中長期的な株主価値向上の観点で株主還元の水準が不十分と判断される場合

  • 【2】取締役選任

    投資先企業の中長期的な株主価値最大化に向けて、経営を委ねることが適切かという観点で、判断する。判断にあたっては、以下に掲げる各基準を踏まえつつ、対話等を通じて企業の状況や取り組みを考慮し、総合的に判断する。取締役会は、中長期的な株主価値向上に向けた意思決定を行い、かつ執行に対して監督機能を発揮することが期待され、高い実効性を以てその役割を果たすことが重要である。そのために取締役会は、能力・資質や多様性、独立した社外取締役の割合などに十分配慮された構成とし、かつ迅速な経営判断を行える規模であることが望ましいと考える。

    具体的には以下の事項を注視し、賛否を判断する。なお、以下の基準は監査等委員会設置会社の監査等委員ならびに指名委員会等設置会社の監査委員にも適用する。

    1. 取締役会構成に関して、以下に該当する場合は原則として経営トップである取締役選任議案に反対する。
      1. 当社の独立性基準を満たす社外取締役が、2名以上、かつ取締役総数の1/3以上(親会社を有する企業については過半数)選任されない場合
      2. 女性取締役が不在の場合。なお、今後も複数名を求める等の人数要件の段階的引き上げを検討する
      3. 監査役または監査等委員の人数が、会社から合理的な説明無く大幅に減少する場合
    2. 以下に該当する場合、原則として取締役の再任議案に反対する。
      1. 総還元性向30%未満、かつ、過去3期連続でROE8%未満の場合
      2. キャッシュリッチ企業で、総還元性向40%未満、かつ、過去3期連続でROE8%未満の場合。なお、キャッシュリッチ企業とは、「ネットキャッシュ/総資産30%以上、かつ、自己資本比率50%以上」を指す
      3. 3期連続当期損失で配当を実施する場合
      4. 過去3期連続で、ROE5%未満、かつ、業種(東証17業種区分)内下位50%に該当する場合(当該期間在任の取締役の再任に反対)
      5. 不祥事・反社会的行為が発生した企業について、関与もしくは責任があると判断される場合(不祥事・反社会的行為とは、重大な法令違反、不適切会計、品質不正、環境・社会問題を引き起こす行為、その他社会的信用を失う行為などをさす。判断にあたって、再発防止策を含めた対応等も考慮する)
      6. その他、中長期的な株主価値向上の観点で経営の取り組みが不十分と判断される場合
    3. 社外取締役を選任する議案については、以下に該当する場合は原則として反対する(ただし、経営再建等の条件下にある場合、独立性要件の適用は個別に判断する)。
      1. 取締役会出席率が80%未満である場合(加えて、監査等委員については監査等委員会出席率、監査委員については監査委員会出席率がそれぞれ80%未満である場合も同様に判断する)
      2. 以下に該当し、独立性に欠けると判断される場合
        1. 金融商品取引所に独立役員としての届出がない、もしくは届出の予定がない
        2. 5%超の大株主、または大株主である組織の現職、あるいは過去5年以内に在籍
        3. 在任期間12年超
    4. 以下に該当する場合、原則として経営トップの取締役選任議案に反対する
      1. 温室効果ガス排出量が相対的に上位の企業において、以下に示す気候変動対応への取り組みが不十分と判断される場合
        1. パリ協定に整合する中期・長期の排出量削減目標の設定
        2. 目標実現に向けたロードマップ策定・実施
        3. TCFD提言に沿った情報開示
      2. その他、重大なサステナビリティ課題を抱える企業について、取り組みが不十分であり、状況に改善がみられないと判断する場合
      3. 政策保有株式の残高が、純資産対比20%以上の場合(ただし、定量的な縮減目標や取組み状況等を勘案)

  • 【3】監査役選任

    監査役については、独立した立場から取締役の監視・監督を行うことが重要であると考える。

    1. 監査役を選任する議案については、以下に該当する場合は原則として反対する。
      1. 職務に適性を欠くと判断される場合
      2. 不祥事が発生した企業について、関与もしくは責任があると判断される場合
    1. 社外監査役を選任する議案については、以下に該当する場合は原則として反対する。
      1. 取締役会および監査役会の出席率が80%未満である場合
      2. 独立性に欠けると判断される場合。独立性の判断にあたっては、社外取締役への独立性基準を準用する

  • 【4】会計監査人選任

    会計監査人の選任議案については、原則として賛成する。ただし、適正な監査の実施に疑義を生じさせる事項がある場合または独立性に疑義がある場合は反対する。

  • 【5】役員報酬関連

    役員等の報酬については、株主利益に適切に連動し、株主価値向上へのインセンティブとして機能するか、会社業績や株主への利益配分の観点から適切な水準であるかを精査する。また、報酬の決定にあたっては、計算根拠が明確であり、社外取締役を主要な構成員とする組織を活用する等により透明性が確保されていることが重要と考える。
    1. 役員報酬関連議案について、以下に該当する場合は原則として反対する。
      1. 経営に重大な責めがある場合の賞与の支払い、及び報酬枠の拡大
      2. 退職慰労金の支給(打ち切り支給を除く)
      3. 株式報酬(ストックオプションを含む)関連議案について、以下に該当する場合
        1. 監査役および監査等委員に対する付与。従業員や第三者への付与は、精査の上で賛否を決定する
        2. 譲渡制限期間・行使可能期間が2年未満
        3. 潜在的な希薄化が過去分と合算し、発行済株式数の5%以上となる場合

  • 【6】買収防衛策

    買収防衛策は、経営者の保身のために利用されるおそれがあること、並びに本来の株主価値が株価に反映されることを妨げる可能性がある等の理由から、株主価値を毀損する懸念があると考える。

    買収防衛策を導入・継続する議案に対しては、原則として反対する。なお、買収防衛策の導入・継続が株主総会決議を経ず、取締役会決議のみでなされる場合、取締役再任議案に反対する。


  • 【7】再構築関連

    合併・買収、事業譲渡・譲受、株式交換・移転などの事業の再構築については、会社の経営戦略と整合しており、中長期的な株主価値向上に資するかの観点から最善の選択であるかを精査する。
    1. 以下に該当する場合は、反対する。
      1. 合併・交換比率や対価等が既存株主利益の観点で妥当でないと判断される場合
      2. その他、株主価値を毀損することが明らかと判断される場合

  • 【8】資本政策関連

    1. 資本政策関連の議案については、中長期的な株主価値向上に資するか、既存株主の利益を毀損しないか精査する。
      1. 株式を発行する議案(種類株式、優先・劣後株式を含む)については、当該企業の財務状況や業績を踏まえ、株式発行の目的や、既存株主の利益に与える影響等を精査の上で賛否を判断する。既存株主持分の著しい希薄化や新株引受人への有利発行、経営者支配強化等を通じて株主価値の毀損が懸念される場合は、反対する
      2. 第三者への新株発行もしくは自己株式の処分については、割当て対象者、株式の希薄化の程度、割当て価格の公正な市場価格との比較などについて精査の上、賛否を判断する。なお、財団法人への自己株拠出については、1)財団活動が、中長期的な企業価値向上に資すると判断され、2)拠出された株式の議決権が、当該企業ならびに財団によって行使されず、3)希薄化が3%未満である場合、賛成する
      3. 自己株の取得により、市場流動性が著しく損なわれることが見込まれる場合は反対する。

  • 【9】定款変更

    定款変更については、当該変更が中長期的な株主価値向上あるいは毀損防止に資するか、株主の権利を不必要に制限するものではないか精査する。
    1. 以下に該当する場合、原則として反対する。
      1. 剰余金の処分を取締役会決議とする場合
      2. 授権枠を増加する議案について、その目的について合理的かつ明確で、企業価値向上につながる説明がない場合
      3. 事業年度を変更する議案について、その目的が定時株主総会を延期することであると判断される場合
      4. 決議要件を強化または緩和する議案について、その必要性や、株主価値を損なうものでないことの十分な説明がない場合
      5. 取締役会の定員を増加する議案について、合理的な説明なく大幅な増員がなされる場合

  • 【10】株主提案

    株主提案については、中長期的な株主価値向上の観点から個別に精査の上で、賛否を判断する。特定株主の利益を追求する可能性のある株主提案については反対する。なお、気候変動対応の開示を求める提案については、以下の場合を除き原則として賛成する。
      1. 企業の取り組みが提案内容を満たしている場合
      2. 提案内容の実現により、企業の不利益または事業活動の制約となる場合

  • 【11】改廃

    この行使基準の改廃は、スチュワードシップ&議決権行使委員会の決議による。
  • 【12】附則

    この行使基準は、令和6年4月1日より施行する。

    • (制定)
      (改定)