当レポートは、英語による2019年12月発行「ASIA FIXED INCOME AND FX OUTLOOK 2020」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。

2020年の展望

2019年は、ほとんどのアジア諸国の中央銀行が金融緩和政策を採用したおかげで、アジアの現地通貨建て債券は力強いラリーを見せた。現時点では、ほとんどの国で当面必要とされていた金融緩和が一巡したように見えるため、2020年は、2019年のように債券価格が大きく上昇するとは考えていない。とはいえ、引き続き経済成長率とインフレ率は世界的に低位で推移すると予想される一方、キャリー収益に対する需要も強いため、2019年ほどではないものの、2020年もアジアの現地通貨建て債券は良好なパフォーマンスをあげると考える。

通商協議の結果に大きく左右される面は否めないが、アジア諸国の成長率は2020年上半期に底を打ち、下半期は徐々に回復すると予想する。回復過程では、より高い金利の国の債券は、先進国金利との相関が高い低金利国の債券に比べて良好なパフォーマンスをあげると予想する。現在、当社のボラティリティ調整後実質利回りランキングでは、インドネシアとマレーシアがアジア現地通貨建て債券の上位2か国を占めている。この結果は、世界的なリスク選好意欲が安定している場合、インドネシアとマレーシアがアウトパフォームする可能性が高いという当社の予想を実証している。さらに、インドネシアとマレーシアはインフレ率が落ち着いていることから、2020年も金融緩和の余地があると考える。同様に、インド、フィリピン、韓国なども、必要とあれば、2020年中に緩和する余地がある。全体として、2020年は、アジアの各中央銀行は経済データに基づいて舵取りを行うことになると予想する。

当社は、通商協議が妥結し、米FRB(連邦準備制度理事会)が政策金利を長期にわたり現在の水準に据え置く状況になった場合、インフレ率や経済活動に大幅な回復の兆候が見られるまで、米ドルはアジア諸通貨に対して値下がりする可能性が高いと考える。そのため、貿易の緊張が緩和された場合、中国人民元や韓国ウォンなどの貿易に敏感な通貨が米ドルの値下がりの恩恵を受ける可能性が高いと考える。そうは言っても、現在のアジア市場における最大のリスクは、通商協議の決裂と貿易戦争が再び激化することだが、これは世界にとって目新しいことではない。このようなリスクシナリオが現実となった場合、アジアの現地通貨建て債券市場のボラティリティが高まる可能性が高いと考える。

図表1: 2019年の10年物指標利回り・騰落率と通貨の騰落率

図表1: 2019年の10年物指標利回り・騰落率と通貨の騰落率

出所:ブルームバーグ、IHS Markit、2019年11月29日現在

図表2:アジア諸国の実質金利 (%) ― (5年国債金利) - (消費者物価指数)

図表2:アジア諸国の実質金利 (%) ― (5年国債金利) - (消費者物価指数)

出所:ブルームバーグ、2019年11月29日現在

各国の展望

中国

2020年の中国は、貿易戦争の影響が引き続き経済全体に蔓延し、経済はさらに減速し、成長率は5.8〜6.2%の範囲内に着地すると考える。しかし、金融面と財政面の双方で実行されたこれまでの緩和策により、減速を緩和することが可能と考える。食品価格上昇によるインフレ圧力により、2020年第1四半期にCPI(消費者物価指数)上昇率が4%を超える可能性があるが、PPI(生産者物価指数)は依然マイナスであり、GDPデフレーターが大幅に上昇する可能性は低い。したがって、インフレが長期にわたる問題になるとは想定できない。与信の伸びは2019年下半期に改善を見せ、2020年はその勢いがプラスに転じ、さらなる拡大が見られるはずだ。2017年に導入された金融機関の資産管理業務の規範に則したレバレッジの解消はピークに達したと考えられ、むしろ、小幅とは言え、今後は信用拡大につながる可能性もでてきた。

中国経済は、固定資産投資や重工業よりも、消費とサービス中心の経済構造への転換を継続している。固定資産投資の伸び率は引き続き、5.0〜5.5%の範囲内で安定推移するものと考える。インフラに関しては、個別プロジェクトに対する政府の承認ペースが加速していることと、プロジェクトの資金調達が容易になっていることが相まって、2020年も引き続き投資が拡大すると予想する。不動産投資に関しては、2019年の伸び率が高かったことに加え、政府の投機に対する警戒が依然として強いことから、伸び率は引き続き緩やかに低下すると考える。製造業分野の投資は2019年の低水準から回復すると予想する。仮に米中通商協議の包括的な合意がなかったとしても、2019年に在庫調整が進んだ反動からの回復が見込まれ、その過程での在庫積み上げが投資を後押しするだろう。また、中国は現在、自給率を高めるために、バリューチェーンのなかで高付加価値に位置する産業へのシフトを図っており、生産ラインのアップグレードが必要になることも、製造業分野の投資を支えるだろう。

財政出動が経済政策の中心的な役割を果たし、金融政策は補完的な位置付けとなるであろう。成長率が大幅に悪化せず安定した範囲内で推移しているかぎり、均衡の取れた金融政策が継続すると予想する。中国人民銀行(中央銀行)は、引き続き大規模な緩和策を実施するよりも信用が行き渡ることに焦点を当てており、引き続きLPR(ローン・プライムレート)制度の運用を微調整していくだろう。より多くの新規ローンの基準金利にLPRが採用されることにより、企業への貸付金利を低下させるために引き続き、MLF金利(LPRはMLF(中期貸出ファシリティ)金利に連動する)を引き下げると推測する。税や手数料の軽減が中小企業の収益性を高める一方、金利引き下げは資金調達を支援することになると考える。

2020年の中国経済は、2つのパートで構成されることになるだろう。、上半期には成長率が改善するだろうが、下半期には減速する可能性が高い。経済構造自体が高レバレッジ体質であるため、高水準の借入金利に耐え続けることは困難であろう。さらに、市場の構造上、企業向け融資の期間は依然として短い。貸出金利が急速かつ大幅に上昇する場合、企業は借り換え圧力に直面することとなり、それが企業成長の足かせとなる。中国の現地通貨建て債券が多くのグローバル債券インデックスに含められることは、ある程度のサポート要因となるはずである。中国人民元のバスケット構成通貨が割安な水準にあるため、投資家は中国の現地通貨建て債券に価値を見いだすことができる。貿易交渉は本質的に二元的であるため、通貨のリスクも双方向に存在する。貿易交渉にポジティブな進展が見られれば、中国人民元の対米ドル相場は1米ドル=6.90元割れを試すだろうが、交渉決裂、関税復活という事態に陥れば、逆に中国人民元は対米ドルでの新安値を試す可能性がある。

韓国

2019年の韓国経済は、以前から減速していた国内経済に加え、米中貿易戦争、世界的なハイテク分野の不振が重なり、打撃を受けた。景況感、そしてその影響を大きく受ける設備投資が貿易戦争に起因する不確実性の影響を受けたことは明白である。国内では、住宅価格が値下がりし、建設投資は減速した。唯一の明るい材料は財政出動であり、公共投資により減速の度合いは緩和された。賃金の伸びは依然として鈍いものの個人消費は安定していた。総合インフレ率とコアインフレ率は、2019年を通して低位で推移し、2020年もインフレ圧力が弱い状況が継続すると予想する。

韓国銀行(中央銀行)は、2019年に金利を2回引き下げ、金利は2017年からの2回の利上げ以前の水準に戻った。需給ギャップがマイナスで推移し、インフレ圧力が弱いことから、韓国銀行は緩和的な金融政策を継続するだろう。金融通貨委員会では、経済成長率、成長に対する金融政策の効果、及び効果的な下限金利水準に関する意見が委員の間で分かれた。ただ、当社は、成長を支え、積極的な財政政策を補完するために、韓国銀行が少なくとも一度は利下げを行う必要があるという見解を維持する。

当社は、韓国の金利に関し、中期的にはポジティブな見通しを有している。しかしながら、米国金利に対する感応度が高いことと毎年末に売られがちになることを考慮し、米中貿易交渉の結果がより明確になるか、あるいは現在よりも良い方向に交渉が進展するまで、中立の投資判断を維持する。韓国ウォンについては、米国と中国の貿易協定の「第一段階」の合意が近いとの報道により大きく買われたが、その後、上昇幅の一部を打ち消した。2020年には世界的に経済が底を打ち、米中の緊張が緩和されるという当社見通しを踏まえ、韓国ウォンに対しては強気の投資判断を有する。

マレーシア

2020年予算案は、2019年に比べて政策の詳細と具体的な成長施策に重点が置かれている。財政再建路線からの転換は心強いことであり、これまで連邦政府の戦略的方向性の欠如によって控えられてきた投資が実施に移される可能性が出てきた。2019年の経済成長は、米中貿易戦争の影響から生じた迂回需要に応じるための生産・輸出が増加するという恩恵を受けた。小規模ではあったものの、バリューチェーンにおける一部生産能力の不足を解消するために民間設備投資が増加した。国内では、所得と雇用の増加により、個人消費が平均で7%超増加した。追加的金融緩和策も見込まれ、このトレンドが大幅に弱まることはないが、2019年の年初から見られたような年率4.5〜4.7%の成長率を達成するまでには至らないだろう。

マレーシアの中央銀行は、2019年5月の利下げの後、下半期の追加利下げを見送ったため、2020年中に現行3%である政策金利を引き下げることが期待されている。11月の預金準備率50ベーシスポイント引き下げは、中央銀行がハト派に傾いていることを明示している。2019年のマレーシアのインフレ率は2%を大きく下回り、実質金利は他のアジアの諸国と比較して高い状況にある。2019年に見られたようなインフレ率のポジティブなベース効果がないため、2020年の利下げは年初の1回に留まると考える。農村及びデジタルでのインフラ開発を中心とした政府支出には財政面での制約があることが、2020年の見通しを複雑にしている。外需は2019年の勢いを持続すると考えるが、米中貿易交渉の行方に大きく依存する状況にある。

世界的金融緩和環境下で、利下げが可能であることと、高い実質金利を有することは、一般的にサポート材料であるため、マレーシアの金利についてポジティブな見解を維持する。しかし、米中貿易交渉の行方が予測不可能であるため、マレーシアリンギットに関しては中立とする。

シンガポール

世界貿易の先頭を行くシンガポールの経済は、輸出の低迷により、2019年の成長率はほぼゼロとなった。米中貿易戦争のあおりで、製造業、なかでもエレクトロニクスが大きな打撃を受け、非石油地場輸出(NODX)は、2019年10月までの毎月、前年同月比で10%以上減少した。ただ、米中通商協議において「第一段階」の合意に至る可能性が生じたことにより、貿易の逆風はやや弱くなっており、2020年には、世界貿易が必要としている安定性が到来する可能性が高いと考える。特に家電製品のバリューチェーンで、在庫が調整期から積み上げ期に移行しているため、「第一段階」の合意の内容が限定的であっても、NODXは循環的な回復が可能である。2019年の国内は、「モダンサービス」1 産業と建設が好調であったため、経済は年央にリセッションに陥ることが回避された。しかし、小売に関しては、低迷する輸出が影響し始めたことにより裁量的消費が減少したため、全体の売上高も減少した。一方観光業は、アジアの他の地域における政情不安の恩恵を受け、好調であった。この傾向は、2020年上半期も続くと予想する。

MAS(シンガポール金融庁)は2019年にシンガポールドルの名目実効為替レート誘導レンジの傾斜をおそらく0.50%引き下げたが、2020年上半期中は現行の金融政策を維持する可能性が高い。コアインフレ率は、政府管理価格の引き上げと選挙を前にした財政支出増の可能性により、小幅ながら上昇する可能性がある。その他の点においては、アジアの他国と同様に、MASが採用できる政策は、予測が甚だ困難な米中貿易交渉の結果次第である。基本シナリオとしては、米中貿易戦争がこれ以上悪化しないとの前提で、2020年の政府の実質GDP成長率目標である1.5%は達成可能に見える。可能性は低いものの米中通商協議において包括的な合意がされた場合は、貿易に敏感なセクターがシンガポールの成長をけん引することになると考える。

上記より、当社はシンガポール国債の利回りについて中立的な見解を保持する。2019年は低いパフォーマンスであったが、MASの緩和策により、シンガポール国債利回りと米国債利回りの相関性が高まるはずだ。また、MASによる為替レート誘導レンジの傾斜引き下げにより、シンガポールドルが米ドルやアジア他国の通貨と同様の値動きをすることになるため、シンガポールドルについても中立の投資判断を有する。

タイ

2019年のタイ総選挙は予想どおりの結果となり、また、選挙の結果誕生した連立政権が、連立であるが故の不安定さを抱えることや、以前の軍事政権の上層部が牛耳ることも予想どおりとなった。連立政権基盤は弱く、期待どおりとはなっていないが、支配階級と現状維持派に有利な選挙制度により、選挙の結果で起こりえた不安定な状況は回避することができた。政府は、農村・農業部門を対象に実施した1,000億タイバーツの財政刺激策と同様に、単発的な刺激策を追加的に実施することは可能だ。以前は個人消費が成長の強力なドライバーであったが、2019年に入り、消費が低迷停滞し、2020年にはさらに落ち込むと予測される。落ち込む一因は、バーツ高が持続していることによる観光収入の減少である。

タイの中央銀行は、インフレ率が1.0%程度で推移していることで、既に低い水準にあった政策金利を1.5%へ引き下げることで、バーツの上昇を食い止めようとした。中央銀行による2020年の需給ギャップ予想もマイナスに転じ、国内面のインフレ圧力がほとんどないことを示唆している。2020年に、より多くのマクロプルーデンス政策を実行に移して、経常収支の黒字を吸い上げる政策を採用する可能性もある。

低インフレ率と中銀のハト派的スタンスが、ASEAN諸国のなかで非常に低い実質金利水準との整合性が取れていると考えており、タイ国債の利回りについては中立的な見方をしている。また、経常収支の黒字を削減しようとする中央銀行の努力は認めるものの、バーツを多く保有する国内投資家が強い国内バイアスを保持していることを勘案し、バーツに対して中立の投資判断を有する。

インド

インドの成長モメンタムは、消費の伸び悩みと投資活動の不振の影響により、2019会計年度(2019年4月~2020年3月)の上半期はかなり弱かった。所得、雇用の両方に関しての消費者心理は依然として冷えた状況にある。銀行・ノンバンクの両方とも、与信審査の基準を厳格化したため、信用の伸びが鈍化し、また、需要の縮小により税収は減少した。一方、国営銀行、協同組合銀行、ノンバンク金融会社などの金融機関に対する信用懸念は払拭されなかった。この懸念を理由に、ムーディーズはインドの信用格付けの見通しを「安定」から「ネガティブ」に引き下げた。

2020年7~12月は、ベース効果と直近の金融・財政刺激策が多少効果を発揮すると考えており、成長率は安定から改善に向かうと予想する。2019年1~6月に総選挙が実施された影響で財政支出が後ずれしたため、2020年は財政支出が回復する可能性が高い。金融政策の面では、インド準備銀行(中央銀行)が2019年に政策金利を合計135ベーシスポイント引き下げ、2020年も引き続き緩和的スタンスを取ると予想しているが、利下げ効果の検証のために間を置くことになると考える。インド準備銀行は、足元のインフレ率が4%を超えたのは一時的な現象であり、その主因が食品価格の高騰によるものと判断していると当社は見ており、インド準備銀行は緩和的な姿勢を維持すると考える。

低い成長率と良性のインフレ(コアインフレ率は依然弱い)は、インド債券にとってサポート材料であると考える。とはいえ、政府が財源の不確実性にきちんと対処するまでは、債券のボラティリティが高くなると予想する。インドの双子の赤字問題は、2020年もインドルピーが引き続き、アジアの他通貨に対して下落することを意味するが、輸入の減少と対内直接投資の増加により国際収支が改善していることは評価に値する。

インドネシア

2020年のインドネシアの成長率は、2019年の総選挙の結果を受けて、対内直接投資の増加と投資活動の改善が見込まれ、2019年をわずかに上回り、5%を超える水準になると予想する。また、2019年に政策金利を合計で100ベーシスポイント引き下げたことも、経済活動を支えるはずである。スリ・ムルヤニ財務大臣の再任は、財政に対する信頼感を市場関係者に与えた。2019年の財政赤字はGDP比で2%をわずかに上回ると予想されるが、2020年に関しては、インドネシア政府は1.8%になると予想している。経常収支は、投資関連の輸入が続くため、引き続き、2020年も赤字になると予想されるが、赤字幅はGDPの3%に収まると当社は予想している。

2019年7月以降の一連の利下げに加えて、インドネシアの中央銀行は、11月19日に開催された金融政策決定会合で、預金準備率を50ベーシスポイント引き下げることを決定した。新準備率は2020年1月に適用され、これにより、市場の流動性が約25兆インドネシアルピア(GDPの0.2%)増加することになる。2020年に向けては、インフレ率が低位に推移しているため、中央銀行は緩和的なスタンスを維持することが可能であり、実際に維持すると当社は予想している。インフレ率は2019年を通じて中銀ターゲットの範囲の中央の値を下回っており、2020年には徐々に上昇する可能性があるが、中銀が緩和的スタンスを変更するほどの上昇幅になるとは当社は想定していない。

インドネシアは、依然としてアジアで最も高い実質金利を有する国の一つであり、現地通貨建て債券は、利回りを追求する世界の投資家の需要に支えられ、好調に推移している。ルピアの安定、低いインフレ率、魅力的な実質金利、そして世界的なリスク選好意欲の改善は、2020年も引き続きインドネシア債券への投資を引き付ける要因だ。ただ、2020年の現地通貨建て債券のパフォーマンスは、素晴らしかった2019年ほどにはならないと予想する。ルピアの見通しに関しては、2020年の経常収支動向と世界の投資家のリスク選好意欲に大きく依存すると考えている。

フィリピン

フィリピンの成長モメンタムは、2019年に国家予算の承認の遅れから停滞していたインフラへの公共投資が実行に移されることにより、回復すると予想している。政府の「Build, Build, Build」プログラムに基づく財政出動により、2020年は6〜7%の成長率が見込まれる。また、法人所得税率の引き下げ及びインセンティブ合理化法を含む財政改革案は2020年に可決されると予定されている。2019年に中央銀行が政策金利を75ベーシスポイント、預金準備率を400ベーシスポイントそれぞれ引き下げたことで貸出が伸び、民間消費を支えている。2019年にコメの輸入数量制限を撤廃したことなどによりインフレ率が低下した。中央銀行は、2019年のインフレ率を2.5%、2020年はそれをわずかに上回る2.9%を予想している。インフレ高進のリスク要因としては、石油価格の高騰とアフリカ豚コレラがあげられる。

金融政策に関する当社の基本シナリオは、中央銀行が預金準備率を1桁になるまで段階的に引き下げるということだ。政策金利に関しては、中央銀行が経済成長を優先するスタンスであることから、2020年も数回の利下げが実施されるが、そのタイミングは経済指標次第と考える。政策金利は2018年に175ベーシスポイント引き上げられたが、それ以降の引き下げ幅は75ベーシスポイントにすぎず、2020年はまだ引き下げの余地があると考える。

フィリピンの現地通貨建て債券は、2018年以降のインフレの収束(コメの輸入数量制限の撤廃が主因)に伴って利回りが低下したことと、2019年下半期に金融政策が緩和方向になったことにより、良好なパフォーマンスをあげた。2020年のインフレ率は制御可能な水準に収まると当社は予想しているが、一方では政府が財政資金調達のための国債増発を検討していることから、利回りに上昇圧力がかかると考えている。為替に関しては、インフラ建設の拡大と堅調な国内消費を背景とした経常収支悪化のリスクが払拭されず、フィリピンペソはアジア他国に対してアンダーパフォームすると予想する。一部の大規模なインフラプロジェクトの建設資金が、中国や日本などの政府開発援助に加えて、国際機関からの開発援助の資金であることから、為替に対する影響はやや軽減されていると考える。

脚注

1通信、情報処理、バンキングなど従来のサービス産業である旅行業や運送業を含まないサービス産業の業種

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