本レポートは、2021年5月10日発行の英語版「The case for Asian small caps」」の日本語訳です。内容については英語の原本が日本語版に優先します。

サマリー

アジアの小型株は、大型株を長期的にアウトパフォームしてきた実績があるとともに伝統的株式ポートフォリオに優れた分散効果をもたらすことから、長期スタンスの投資家にとって多くの投資メリットがあると考える。

力強い回復を見せているアジア小型株

2016年から2019年にかけて市場で大方見過ごされてきたアジアの小型株が、最近投資家の注目を集め始めている。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のパンデミック(世界的流行)が始まりグローバル株式市場が底を打った2020年3月以降、力強い上昇を見せているからだ。

2021年3月31日までの12ヵ月において、MSCI AC Asia Small Capインデックス(除く日本)でみたアジア小型株の市場リターンは米ドル・ベースで80%超と、MSCI AC Asiaインデックス(除く日本)でみた同地域の大中型株の市場リタ―ン(米ドル・ベースで50%超)を上回っている。

足元で域内の景気回復が本格化するなか、現在持続可能な反発局面の初期段階にあるアジアの小型株は、COVID-19ワクチンのもたらす楽観ムードや世界の金融システムの潤沢な流動性、企業収益の持ち直しを追い風として、当面のあいだ上昇モメンタムを維持すると当社ではみている。

アジアの小型株は、短期的な見通しが良好であるのに加えて、より長期的な見通しも有望である。当社の見解では、時価総額が小さく相対的に小規模で知名度が低めのアジアの上場企業は、投資魅力が足元で高まっている。本レポートでは、アジア小型株の特色、投資機会および魅力、そしてこの類まれな株式資産クラスに投資するメリットについて、詳しく解説する。

動きが機敏で成長が早い

小型企業は、動きが機敏で成長が早く、発展の初期段階にあるため、市場機会を素早く捉えて並外れた利益成長を生み出すことができる。確かに、堅固なビジネスモデルと拡張性のある戦略を有する革新的な小型企業は、特にそのニッチな製品やサービスが成功した場合、飛躍的な成長を遂げる可能性がある。小型株投資の本質は将来の「圧倒的勝者」を見出すことにある。

小型株と大型株で異なる国別およびセクター別構成

国別でみると、アジアの大型株は同地域の小型株に比べて中国の比率が大きい。また、セクター別では、アジアの大型株は小型株に比べて金融や一般消費財・サービスといったセクターの比率が高く、一方で小型株は資本財・サービス、素材、不動産、ヘルスケアの比率が高い(チャート1参照)。そのため、小型株に投資することによって、大型株中心となりがちな他の伝統的株式戦略から分散性を向上させることが可能となる。

チャート1

長期的にアウトパフォームしてきた実績

過去20年、MSCI Asia Small Capインデックス(除く日本)でみたアジアの小型株はMSCI Asiaインデックス(除く日本)でみた同地域の大中型株を64%の確率でアウトパフォームしてきた。加えて、特定の時期においてはアジアの小型株のパフォーマンスが大型株を大きく凌いでおり、2001年や2009年、2021年第1四半期など大幅下落相場後の回復局面でそれが顕著となっている(チャート2参照)。

アジアの小型株が過去20年で大型株をアウトパフォームしてきた実績は、同地域の小規模企業の株式をある程度保有することによって株式ポートフォリオ全体のリターンを長期的に向上させ得るとの安心感を長期スタンスの投資家にもたらしている。

チャート2

アジア小型株の流動性は十分に高い

小型株は大型株に比べて売買高が低い傾向にあるが、アジアの小型株すべての流動性が低いというわけではない。中国、韓国、台湾など北アジア市場に上場している小型株の流動性が総じて十分に高いことは、平均日次売買高でみると分かる(チャート3参照)。例えば、中国の株式取引の日次売買高は平均で2,500万米ドルあり、韓国の株式売買高は日々2,000万米ドルを超えている。

流動性に関連するもう1つの重要な点は、アジア小型株のユニバースの大半が同地域の小型株市場で最も流動性の高い中国・韓国・台湾の3市場の銘柄であるということだ。アジア小型株ユニバース全体の半分超が流動性の高い北アジア市場に属するという事実(チャート4参照)は、アジア小型株の大半は流動性が低いとの通念が誤りであることを示している。

チャート3

チャート4

より大きな投資機会群へのアクセス

アジアの小型企業は、その多くが投資家に比較的知られていないことから、大部分が投資機会として見落とされている可能性がある。まず、時価総額50億~100億米ドルのアジア大型株のユニバースは銘柄数が500に満たないのに対して、時価総額10億米ドル未満のアジア小型株は銘柄数が2,000を超え、時価総額10~30億米ドルでは銘柄数が1,000を超える(チャート5参照)。

チャート5

アジア株の指数においても同様で、構成銘柄数は小型株の方が大中型株よりも多い。例えば、アジア株式市場(日本を除く)の大中型株市場の指数であるMSCI Asiaインデックス(除く日本)の構成銘柄数が1,182であるのに対し、MSCI Asia Small-capインデックス(除く日本)のユニバースの銘柄数は1,400を超える(2021年3月31日時点)。

以上を踏まえると、アジア小型株のユニバースは、アクティブ運用の投資家がボトムアップの銘柄選択を通じて潜在的な勝ち組の見極めと負け組の回避を行うにあたり、より幅広い投資機会群を提供している。

小型株のカバレッジ不足が超過収益獲得と珠玉銘柄発掘の機会をもたらす

アジアの小型株投資は株式におけるアクティブ投資の神髄を包含しており、リサーチ・カバレッジが不足している当該株式分野では、銘柄選択が付加価値をもたらし超過収益(一般的にベンチマークのパフォーマンスを上回ったリターン部分と定義される)を生み出す。当社では、アジアの小型株市場には多大な価格非効率性があり真の価値が株価に正確に反映されていないと考える。

実際、アジアの小型株は投資可能ユニバースの半分超がセルサイド(証券会社)の株式アナリストによってカバーされておらず、また31%はカバーしているセルサイドのアナリスト数が1~5名にとどまっている(チャート6参照)。対照的に、典型的なアジアの大型株は10名以上のセルサイド・アナリストによってカバーされている。

当社のみるところ、セルサイドによるカバレッジが限定的なアジアの小型株では大きな情報格差によってミスプライシングが生じており、アクティブ運用の投資家にはそれを利用して超過収益を獲得するとともに「隠れた珠玉」銘柄を発掘する機会が提供されている。

チャート6

強固でコミットメントのある株主基盤による支え

中小型株は、一般的に同族や経営陣による株式保有割合が高めで(チャート7参照)、「スキン・イン・ザ・ゲーム」性(株式保有者の個人的利害関係性)がより強く、成功に向けた共通の目標が少数株主と共有されている。大株主である同族や経営陣は、インサイダー株主(株式投資収益以外の関心から株式を保有する株主)の割合が高めの場合と同様に、雇われたCEO(最高経営責任者)や経営者・幹部など「スキン・イン・ザ・ゲーム」性が比較的低い人々よりも、所有する企業に対するステークホールダーとしてのコミットメントが強い傾向にある。

チャート7

小規模企業は、規模のより大きな企業に比べて、財務面の制約がより強く商品・製品の失敗や売上げの大幅鈍化、資本コストの急上昇に対してより脆弱な傾向があるものの、優秀でコミットメントが強く起業家精神に富んだ経営陣を有していることは、多くの小規模企業にとって成功の原動力となる可能性がある。

まとめ

アジアの小型株は、国別およびセクター別構成が大型株と異なるとともに長期的にアウトパフォームしてきた実績や十分な水準の流動性があることから、投資魅力が高いと当社では考えている。また、アジア小型株の銘柄数の多さとリサーチ・カバレッジ不足という特性も、投資家がボトムアップの銘柄選択を通じて隠れた珠玉銘柄を発掘し超過収益を獲得するにあたり、より幅広い投資機会を提供している。

動きが機敏で成長が早く発展の初期段階にある小型企業は、市場機会を素早く捉えて並外れた利益成長を生み出し大型企業よりも早いペースの資本拡大を果たすことができる。こうしたことから、当社では、アジア小型株が長期スタンスの投資家にとって引き続き潜在収益性の高い投資機会であるとみている。

当資料は、日興アセットマネジメント(弊社)が市況環境などについてお伝えすること等を目的として作成した資料(英語)をベースに作成した日本語版であり、特定商品の勧誘資料ではなく、推奨等を意図するものでもありません。また、当資料に掲載する内容は、弊社のファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。資料中において個別銘柄に言及する場合もありますが、これは当該銘柄の組入れを約束するものでも売買を推奨するものでもありません。当資料の情報は信頼できると判断した情報に基づき作成されていますが、情報の正確性・完全性について弊社が保証するものではありません。当資料に掲載されている数値、図表等は、特に断りのない限り当資料作成日現在のものです。また、当資料に示す意見は、特に断りのない限り当資料作成日現在の見解を示すものです。当資料中のグラフ、数値等は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。当資料中のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。なお、資料中の見解には、弊社のものではなく、著者の個人的なものも含まれていることがあり、予告なしに変更することもあります。