本稿は2021年1月27日発行の英語レポート「2021 New Zealand Equity Outlook」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。

2020年は世界にとって紛れもなく恐ろしい年であった。喪失、痛み、不安、そして別離の1年であり、テクノロジーや社会的特権も全く歯が立たなかった。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)発生以来、政府、企業、個人は不完全で変わり続ける情報に基づき社会的・経済的に重要な決定を下すことを余儀なくされ、その決定がもたらした進路をたどるしかなかった。

これらの決定の善し悪しは、時間の経過によってのみ判断できる。しかし、説得力はあるものの矛盾しているデータや意見、推測、解釈があまりにも多く氾濫するため、決定当時の判断が妥当であったかの疑問がつきまとうであろう。事実とオルタナティブファクト(もうひとつの事実)の共存は、情報化時代における究極の皮肉と言えよう。

2021年に入っても、コロナ禍による大火災は世界中で鎮火する様子がない。したがって、資産運用がたとえ好調であっても、2020年の火種がまだくすぶり続けていることを忘れてはならない。ニュージーランド経済は誰もが期待していた以上のパフォーマンスを挙げており、大きな不安に包まれた市場見通しを大幅に上回っている。だが、2021年の経済状況を予測する英字フォントを1つ挙げるとしたら、「タイムズ・ニュー・ローマン(Times New Roman)」ならぬ「ニュー・タイムズ・アンサーテン(新時代の不確実性:New Times Uncertain)」を選ぶだろう。

事実、グラスが半分満たされていると見るか、あるいは半分空になっていると見るかと同様に、2021年の見通しはポジティブにもネガティブにも捉えることができる。世界的に不確実性が高まる中、ニュージーランドの株式市場は引き続き楽観できる余地を多く与えてくれる。刻々と情勢が変化しているさなかに本記事を執筆しており、世界各国の金利が少しずつ上昇していることが視野に入っているが、2021年について明るい見通しを当社は持っている。

ニュージーランドの経済力は確固たる基盤の上に築かれている。ニュージーランドは歴代の中道政権によって維持されてきた公正な税制と福祉制度をはじめ、株主を重視する企業、大きな課題に立ち向かう結束力ある社会、そして独自の地理的条件を活かし、世界に必要とされる産品を供給できる能力を有している。 今後の株式市場見通しとしては、配当を行っている銘柄の魅力を高めている低金利環境以外にも、2021年以降の株式市場の持続的な上昇を示唆する多くの要因が挙げられる。

ニュージーランドには、大規模な世界市場の需要に応えることができる紛れもない成長シナリオを有する企業が複数存在する。ニュージーランドの老舗企業であるフィッシャー&パイケル・ヘルスケア(Fisher & Paykel Healthcare)や乳業メーカーのa2ミルク(a2 Milk)のほか、ニッチ市場で成功を収めている中小企業も多く存在する。たとえば、輸送技術企業Eロード(Eroad)や決済SaaS のプッシュペイ(Pushpay)などである。一方、インフラ投資会社インフラティル(Infratil)や物流会社メインフレイト(Mainfreight)のような企業は自社と地球のために持続可能なビジョンを掲げ、断固たる粘り強さを発揮し続けて事業基盤を強化している。

このほかにも、成長を支える2つの柱が存在する。1つはニュージーランドの再生可能エネルギー発電だ。これは、クリーンエネルギーに対する世界の強い支持に呼応するものであり、投資家の強い関心の対象となっている。もうひとつは、高齢化だ。現在の供給状況では将来の需要を賄えず、そうした需給の不均衡が高齢者向けサービス企業を下支えすると考えられる。

ここまで「グラスは半分満たされている」見解を示してきたが、不安が皆無なわけではない。すでに述べたように、新年を迎えたからといって全ての悪材料が払拭されるわけではなく、コロナ対策の成功に水を差す事態が発生する可能性もある。

国内のワクチン供給の期待と、希少なワクチンをどの国がどれだけ必要としているかの評価におけるニュージーランドの優先順位が一致していないと思われる。この見解が間違っていることを願うが、そうした「ずれ」が生じた場合、2021年後半まで外国との行き来が厳しく制限されたままになる公算が大きい。まだ集団免疫に達していない現況ではしかたないことだが、当然のように一部のセクターにとって非常に厳しい状況になるだろう。

もう一つコロナ以外の脅威が浮上するかもしれない。それは、国内企業が買収提案を受け、場合によってはニュージーランド証券取引所(NZX)での上場を廃止するという、ニュージーランド企業の成功が結果的に裏目に出る可能性だ。このほかにも気掛かりな懸念材料が存在する。

農業の安全保障が依然として最大の経済リスクだと考える。また、デジタル化した金融インフラへの攻撃で明らかになったように、サイバーセキュリティも現実的に直面を余儀なくされる脅威だろう。そしてもちろん、国内では住宅不足が根強い問題だ。この点に関して、ニュージーランド政府が過去の10政権と根本的に異なる政策へと方針転換しない限り、大きな変化は期待できない。

以上のリスクを踏まえても、「ニュージーランドのグラスは半分満たされている」という見方を放棄しようとは思わない。世界中でこんなにも大きな不確実性があったにもかかわらず、NZX50指数は昨年同時期比で14.6%上昇している。1加えて、NZXに上場している企業はステークホルダーの利害のバランスを重視する経営者が経営している。こうしたNZX上場企業が掲げるESGのコンパスは、引き続き真北(真に重要な目標)を指している。人々の確固たる決意が拠り所となる不確定な時代においては、こうした目標こそ2021年と2022年に明るい材料を提供するだろう。

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