本稿は2022年9月29日発行の英語レポート「Enhancing returns from opportunities in global credit」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。
厳しい環境下、クレジットの様々な資産クラスが持つパフォーマンス・ポテンシャルを十分に引き出す
グローバルクレジット市場では、投資家は様々なレイヤーのクレジット・エクスポージャーを得ることができる。投資適格債、投資不適格債、ハイブリッド債に加えてCLOなど、クレジットへ投資する様々な手段が存在する。加えて、投資家にはエクスポージャーを構築するための地域・通貨の選択肢が様々ある。課題となるのは、異なる投資対象をボトムアップの視点から分析する一方で、異なる資産クラス、地域、通貨間でのベストなアセットアロケーションを求めて最適化することだ。主要投資対象地域は欧州、北米、そしてアジアだが、これらの地域以外の投資機会に目を向けることも重要だと考えている。通貨において、クレジット投資家が主に注目すべきは最も流動性の高い「ハードカレンシー」である。その主要市場はユーロ建て、そして米ドル建てのクレジットだ。
マルチセクター型のクレジット投資にとって適切な投資アプローチのスタート地点は、前述したすべての資産クラスにおいて必要とされる詳細なリサーチに加え、最適なアセットアロケーションとなる。ベンチマークにとらわれないアプローチであれば、投資マネージャーはクレジット市場全体と比べてボラティリティを低く抑えつつ、年率4~6%の安定したインカム収入を実現できる可能性がある。
マルチセクター・クレジットファンドにとって重要な基礎となるのは金利リスクを限定すること、理想的にはデュレーションを1.5~3.5年の範囲内とすることである。ファンドのパフォーマンスは、金利リスクではなく、リサーチによる銘柄選択によってもたらされる。過去数年にわたり、債券のパフォーマンスのかなりの部分が中央銀行の政策を受けた絶え間ない金利低下圧力によってもたらされた。2022年の状況をみると分かる通り、こうした圧力は終わりを迎えた。世界各国の中央銀行は、インフレの脅威に対抗して利上げを行っている。したがって、代わりとなるパフォーマンス源泉を検討し、インカム部分をより重視することが重要となっている。信用リスクの拡大はデフォルト・リスクの上昇を示唆する可能性がある一方、ポートフォリオの構築の仕方によってこうしたリスクを軽減する術があることも指摘しておきたい。後者の達成に向けて、マルチセクター・クレジット戦略においては信用損失を最小化するために有担保資産に重点を置いている。担保付債券は、ネガティブなクレジットイベントが発生した場合の回収率が大幅に高いという利点がある。通常、ポートフォリオ運用チームは担保付債券への投資比率を50%超とすることをめざしており、また、投資先の50%超が投資適格未満の区分となっている。資本構成上の順位や地域を横断的に移動する柔軟性を持つことで、投資マネージャーは価値を最大化してリスクを最小化することができる。
優れたマルチセクター・クレジットファンドのポートフォリオ構築プロセスにおいて考慮すべきもう1つの重要な点は、アセットアロケーション・プロセスである。その例として、日興アセットマネジメントでどのようにマルチセクター・クレジット戦略を運用しているかを紹介する。このプロセスには2段階のレイヤーがある。まず、ポートフォリオ運用チームは、中期ベースでパフォーマンスが4~6%のレンジとなるように最適化された戦略的アセットアロケーション(下表で2つの数値が示されている場合の2つ目の数値)を設定する。一方で、グローバルクレジット市場における短期的な投資機会や戦略的アセットアロケーションからの乖離を利用した、よりアクティブな戦術的アセットアロケーション(下表で2つの数値が示されている場合の1つ目の数値)も追求している。
戦術的アセットアロケーションの決定は、ロンドン、ニューヨーク、シンガポール、東京を拠点とするグローバルクレジット・リサーチチームが実施する独自のファンダメンタルズリサーチに基づいて行われる。すべてのリサーチは当社のグローバル・データベースに保存されており、様々なタイム・ゾーンのポートフォリオマネジャーが常時閲覧可能となっている。当社が注力しているファンダメンタルズリサーチに加え、これまで開発してきた様々な独自の定量モデルが意思決定プロセスを支えている。純粋なクレジットリサーチに加えて、我々は顧客の資金を持続可能な形で投資していくことも重視しており、すべてのリサーチ・テーマにおいて投資の環境、社会、コーポレートガバナンスの側面も考慮している。当社独自のファンダメンタルズリサーチによるESG分析に加え、定量分析によるESGスコアリングモデルや外部リサーチも活用して検証を行うことで、投資前に見逃している事項がないように徹底している。
投資と同等に重要なのがリスク管理である。ポートフォリオ運用チームは、全保有銘柄をカバーした日次の損益状況表のほか、日次の定量分析による信用力スコア、投資先の週次のESGスコアを受け取っている。こうしたプロセスによって、信用力の悪化が早期発見され、ポートフォリオから排除されるように徹底している。
金利サイクルの転換を受けて、債券市場の足元の環境は投資家にとって明らかに厳しいものとなっている。しかし、当社では、クレジットの様々な資産クラスが持つパフォーマンスのポテンシャルを十分に引き出すことにより、絶対ベースでプラスのパフォーマンスを達成することは引き続き可能であると考えている。もちろんこのために不可欠となるのが、体系的な投資プロセスを用いること、それにインカム収入を生み出す上で重要となる慎重なリスク管理を組み合わせることだ。我々は、今後良好な絶対リターンを実現していくことができると確信している。
当資料は、日興アセットマネジメント(弊社)が市況環境などについてお伝えすること等を目的として作成した資料(英語)をベースに作成した日本語版であり、特定商品の勧誘資料ではなく、推奨等を意図するものでもありません。また、当資料に掲載する内容は、弊社のファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。資料中において個別銘柄に言及する場合もありますが、これは当該銘柄の組入れを約束するものでも売買を推奨するものでもありません。当資料の情報は信頼できると判断した情報に基づき作成されていますが、情報の正確性・完全性について弊社が保証するものではありません。当資料に掲載されている数値、図表等は、特に断りのない限り当資料作成日現在のものです。また、当資料に示す意見は、特に断りのない限り当資料作成日現在の見解を示すものです。当資料中のグラフ、数値等は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。当資料中のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。なお、資料中の見解には、弊社のものではなく、著者の個人的なものも含まれていることがあり、予告なしに変更することもあります。