本稿は2021年12月15日発行の英語レポート「2022 Global Equity Outlook」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。

オミクロン変異株が最初に発見された当初、世界のメディアはかなりセンセーショナルな報道を行い、このことが投資家のセンチメントに急速に影響した(皮肉なことに「Delta」と「Omicron」の文字を並べ替えると「media control」になる)。この変異株の本当の性質がまだ正確に把握されていない状況でも、投資家センチメントは少なからぬ打撃を受けた。オミクロン株が他のほとんどのウイルスと同様に、たとえ感染力が強くとも、毒性が低いものになることを願っている。この点について、これまでの感染力が弱い変異株に比べて、デルタ変異株の死亡率が大幅に低いことは明るい材料と言える。

しかしながら、各国中央銀行による無限とも言える流動性供給によって軽減されてきたとは言え、市場にはボラティリティが存在するということを、たとえオミクロン株が現れなかったとしても、投資家はそろそろ再認識すべき頃だったと言える。

米国連邦準備制度理事会(FRB)は11月末にかけて、インフレに対する独自の評価から、ついに「一過性」の表現を撤回したが、直面している困難な課題にほとんど変化は生じていない。FRBは、投資家があまりにも慣れてしまった流動性供給(資産価格の激しい投機的上昇を招いてきた原動力)を引き揚げることになれば現実世界の経済活動に影響を及ぼすことは避けられない状況で、どうやって投資家の信頼感をあまり冷え込ませることなく実施するのだろうか。

中国は金融政策正常化に米国に先駆け着手しており、その取り組みを補完するために中央政府は他の施策も実施している。もし、同国政府が住宅用不動産において顕著な過熱感を、これ以上広範なダメージをもたらすことなく解消できれば、将来の経済成長に向けた足場はより持続可能なものになるだろう。しかし、当運用チームが中国において「フューチャー・クオリティ企業」を発掘しようとする多くの場合、問題となるのはバリュエーションである。中国にはクオリティ・グロース企業(なおかつ、高水準のキャッシュフロー投資収益率を実現してきた実績を持つ企業)の数は限られており、その結果、こうした企業には希少性プレミアムが上乗せされていることが多い。金融引き締めが進行する中で、この過度なバリュエーションが解消されることに期待したい。

議論の余地はあるが、政治家が一般世論を無視できない国々よりも、中国のような管理経済の国では、これらの変更を導入することは比較的容易と言える。問題は、一般大衆が長期的な思考に必ずしも優れているとは限らないということである。例えば、外国人労働者の数を制限することは、国民受けが良い施策と言える(筆者は、外国人労働者の融合が大きな困難を伴わず実行できるなどと申し上げるつもりはない)。しかし、外国人労働者の供給を制限することは、地元の人々により大きな機会を本当にもたらすのだろうか。将来世代の雇用機会の拡充という長期的な利益がもたらされるよりもはるか以前に、無視できない短期的な打撃があるように見受けられることは確かなようである。

米国ではインフラ法案が、ついに下院で可決されたが、あらゆる建築関連の銘柄にとって大きな好材料と捉えられている。建設資材および建築関連製品セクターの幅広い銘柄にこの好材料が織り込まれ、株価は非常に堅調に推移している。米国の老朽化したインフラストラクチャーを改善するための支出拡大が賢明な判断であることに疑いの余地はないが、コンクリートの打ち込みがどれだけ素早く実施されるのかを問うのが妥当な疑問かもしれない。これら理論上のものでしかない現金を実際の経済活動に転ずるために必要となる建設作業員はどこから来るのだろうか。今は誰も気に掛けていないが、もしかしたら・・・そのうち気にするようになるかもしれない。

米国の労働統計局によると、米国には150万人の建設作業員が存在する。これらの人々は現在就労機会を待って、自宅で待機しているわけではない(米国の失業率が4%をやや上回る程度であるなら、待機している人々は多くない)。

これと比較して考えると、米国には正看護師が300万人いる。正看護師の不足は、当グローバル株式戦略で保有する2つの銘柄(LHC GroupとEncompass Health)にとって、この数か月、大きな問題となっている。しかし、当運用チームではこれらの企業が、現在直面しているコスト圧力に対して無力であるとは考えていない。遠隔医療や(訓練に要する時間が短い)診療看護師(通所「NP」)の活用拡大、自動化の更なる活用などの全てがこれら企業にとって追い風になると考えているためである。

足元における市場ボラティリティの高まりを受けて、一部の投資家はパフォーマンスの振るわない銘柄への対処を迫られているが、そうした場合に「まだ保有していないと仮定した場合、自分は現時点でその銘柄を買うだろうか」という自問自答が役立つことが多い。その答えが「ノー」であれば、保有を継続しているのは、自分の判断が間違っていたことを認めることへのためらいか、または何か他の感情的な思い入れである可能性が高い。一方、その答えが「イエス」であれば、短期的な要因を活かして買い増す準備をしておくべきであると考える。

このことは、長期的な魅力に対する確信度が揺るがない限り、パフォーマンス不振の銘柄を忍耐強く保有するようなことが時折訪れることを意味しており、当社グローバル株式チームではそうした事実から逃げ隠れするつもりはない。また、こうした投資先を顧客から隠し、アウトパフォームしている銘柄にだけ言及し、心地のよい話題だけを選ぶようなこともしない。我々は引き続き、すべての持ち船を同じ方向に航海させるべきではないと考えており、一部の短期的なリターンを捨てることで、より長期にわたって安定的で良好なリターンを追求していく方針を堅持している。


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