本稿は2022年12月8日発行の英語レポート「2023 NZ equity outlook」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。

2022年は世界中でインフレが拡がり、各国の中央銀行は金利の大幅な引き上げによりインフレをコントロールしようとした。その結果、株価算定に用いる割引率が上昇し、キャッシュおよび債券の金利が低いことを背景に唱えられていたTINA(「株式に代わる投資先がない」)や「実物資産に代わるものがない」時代が終焉を迎えた。2022年11月9日現在、NZX50指数は年初来で13.8%下落している一方、ニュージーランドの10年物国債の利回りは年初の2.39%から4.60%に上昇している。

現在のところ、上場企業の収益は比較的順調に推移しているが、企業にとって労働力の確保は相変わらず非常に大きな問題だ。企業は従業員の欠員を埋めるのに苦労しているが、それは賃金の上昇率が高く、労働者がより高い賃金の職を求めるため、離職率が高くなっているためだ。2023年の見通し、少なくとも最初の数ヵ月間に関しては、純移民が引き続き少ないことが想定されるため、事態が改善することはないだろう。ニュージーランドは、より高い賃金とより良い労働条件をほぼ間違いなく提供する国々との労働者の世界的な取り合いに巻き込まれており、看護師、医師、教師などの職がその典型だ。

個人消費者は引き続き生活費の上昇圧力をまともに受けるだろう。インフレが落ち着くまでには時間がかかるだろうし、たとえインフレ率が低下したとしても、その時点で商品やサービスの価格は1、2年前よりもはるかに高い水準になっているだろう。住宅ローン金利が上昇している影響は、現在適用されている金利の見直し時期が到来するまでは表面化しないだろう。住宅ローンの当初の金利は2~3%であったかもしれないが、現在6%超になっている。このことは最終的に、可処分所得の低下を意味する。

2023年に大きく経済が減速する可能性があり、不況により労働市場にある程度の軟化が生じるだろうが、残念ながら不況は、商品やサービスに対する需要の減退を通じた企業のリストラや倒産を伴う。

企業が価格を引き上げると需要(売上高)が減退することが想定でき、人件費、原材料、金利の上昇に伴うコスト増加圧力が続くなかで、収益が不確実になる事態を招く。住宅ローンを借りている個人と同様に、企業の金利の上昇がコストの増加に完全に反映されるまでに、どの程度金利をヘッジしているかにより時間がかかる場合があるが、最終的には、企業の利益率を確実に低下させることを意味する。

ニュージーランドでは2023年は選挙の年であり、政府はいつもの「ローリー・スクランブル(パーティーで大人がお菓子を投げ上げ、子供がキャッチするゲーム。転じて選挙前に与党が支出を増やすこと。)」を行い、野党は多くのことを公約する。選挙結果が投資先企業・候補先企業にどのような影響を与えるかを見極めるために、政策や世論調査に注意を払うことが重要だ。

見通しが悲観的に聞こえるかもしれないが、ニュージーランドの上場株式市場は、経済規模の大きい先進国に比べてディフェンシブな特性を有している。同市場は、好不況にかかわらず消費者が請求書どおりの支払いを続け、また労働集約度が低い公益事業や電気通信などのディフェンシブなセクターのウェイトが高い。

2022年の株式市場では、ネガティブな経済ニュースの方が、各国の中央銀行が市場の想定ほど金利を引き上げる必要がないという見方により、株式市場が上昇することを示した。ピーク時の政策金利(オフィシャルキャッシュレート)の予想値が下方修正されることは、株式市場の上昇要因になり、歓迎される。株価が動きだすと、短期間で大きく動く可能性があるため、「市場のタイミングを読もうとせず、長期間投資するべきだ」という古い格言を今一度思い出す必要があろう。

ウクライナにおける戦争の激化、国境を越えた戦線拡大や核兵器の使用に加えて、中国と台湾の紛争の勃発など、起こる可能性が低い出来事にも注意が必要であろう。このような事態が生じることを市場が価格に織り込むことはできないだろうが、それでも注意を払うに越したことはない。


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