本稿は2022年12月8日発行の英語レポート「2023 New Zealand fixed income outlook」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。

2021年の後半以降は、オフィシャルキャッシュレート(OCR)がパンデミック時の緊急的水準である0.25%から上昇しており、先物価格を見る限り2023年半ばまでに5.25%に達することになっているなど、債券投資家にとっては厳しい時期となっている。同期間、10年物国債の利回りは、2020年9月の0.44%の低水準から2022年10月には4.64%まで上昇した。また、市中銀行の住宅ローン金利の指標として重要な2年物のスワップ金利も、2020年10月の0%から2022年10月には5.4%まで大幅に上昇した。本稿を執筆している2022年11月中旬時点では5%まで低下している。どのような基準に当てはめても今回の金利変動幅は極端に大きいが、果たして各国の中央銀行は金利を上げ過ぎるという事態にはならないのか、あるいは既に引き締めが行き過ぎていないのだろうか。

ニュージーランド準備銀行(RBNZ)がOCRを導入した1999年3月以来では、今回RBNZが計画するOCRの引き上げ幅は最大であり、かつ最もペースが速い。前回金利が大きく変動したのは世界金融危機前の引き締め期であった2004年~2007年であり、その間の合計引き上げ幅は3.25%であったが、引き上げは段階的に実施された。ピーク時の金利は8.25%で1年間維持された。記憶力に優れた方なら、世界金融危機によって世界経済が大きなダメージを受けたため、経済活動、雇用、金融のシステムを支えるために金利が急速に引き下げられたことを忘れてはいないだろう。ニュージーランドでは、OCRが2008年6月の8.25%から、1年後には2.5%に引き下げられた。

現在は世界金融危機のような状況にないが、近いうちに一般的な金利水準と住宅ローン金利がピークに達する可能性があり、その後1年ほどは、インフレを落ち着かせるために金利水準は高く維持されるだろう。

どの国の中央銀行も、実施した政策が経済にもたらす効果が現れるまでにどの程度の時間が必要なのかが不確実なため、反応が過剰気味になる傾向がある。銀行も投資家も、現在の状況と照らし合わせて中央銀行の行動の有効性を測ろうとするが、実際には、効果が現れるまでに恐らく1~2年を要するだろう。残念なことに、効果が現れる時期が不確実であるだけでなく、経済全体にどの程度の影響を与えるかも不確実だ。中央銀行は、インフレなどの見通しを基に、落とし穴にはまらないようにしているが、残念ながら、予想する多くの専門家も現在の状況に影響されることが一般的だ。

効果が現れるまでの間、蓄積した金利上昇の影響は、経済成長、企業利益、消費者の購買力、住宅市場のすべてに重くのしかかり続けるだろう。

高金利の元凶はインフレだ。では、インフレ率が低下した場合、それもその速度が速い場合はどうなるのだろうか。「生活費の危機」に直面している現時点で、そのようなことを考えるのは現実離れしていると言われるだろうが、インフレ率とは消費者物価指数(CPI)の上昇率のことであり、CPIはモノの価格の変化率であることを忘れてはならない。CPIを構成する商品やサービスの価格が現在の高い水準を維持した場合、1年後のインフレ率はゼロになる。生育条件が良好であれば、特に乳製品の世界価格が下落し続けた場合、食料価格のインフレ率がマイナスになる可能性すらある。このシナリオにおけるリスクは、賃金と物価がスパイラル的に上昇し始めると、RBNZがインフレを抑え込むことをさらに難しくする。そうなると、高金利下での生活がさらに長引き、経済がハードランディングするリスクが高まる。

上昇する金利は、資産価格の下落、家計の購買力の低下、企業と消費者の信頼感の後退、ニュージーランドドルの下落など、いろいろな分野に悪影響を及ぼし始めている。インフレが収束する気配がなかなか見えてこないのは確かだが、次に下落するのはインフレそのもの、という可能性はないだろうか。

経済成長にとってプラスの面は、観光産業に復活の兆候が現れていること、移民流入が増加していること、そして依然として労働市場がひっ迫していることだ。政府支出と一連のインフラプロジェクトが進行しており、住宅建設が減少しても経済成長を支えるはずだ。

2023年の予想として、経済面では厳しい年になろうが、本格的な不況に陥る可能性は低いと考える。OCRと短期金利は高止まりする可能性があるが、金融市場が利下げの可能性を織り込み始めているため、長期金利は年後半から2024年にかけて低下する可能性が以前に比べて高くなっている。金利が低下した場合、あるいは金利が低下することが十分に期待できるとなれば、住宅市場が安定し、経済の回復と共に金融市場におけるリターンが改善する可能性がある。


当資料は、日興アセットマネジメント(弊社)が市況環境などについてお伝えすること等を目的として作成した資料(英語)をベースに作成した日本語版であり、特定商品の勧誘資料ではなく、推奨等を意図するものでもありません。また、当資料に掲載する内容は、弊社のファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。資料中において個別銘柄に言及する場合もありますが、これは当該銘柄の組入れを約束するものでも売買を推奨するものでもありません。当資料の情報は信頼できると判断した情報に基づき作成されていますが、情報の正確性・完全性について弊社が保証するものではありません。当資料に掲載されている数値、図表等は、特に断りのない限り当資料作成日現在のものです。また、当資料に示す意見は、特に断りのない限り当資料作成日現在の見解を示すものです。当資料中のグラフ、数値等は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。当資料中のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。なお、資料中の見解には、弊社のものではなく、著者の個人的なものも含まれていることがあり、予告なしに変更することもあります。