本稿は2023年12月11日発行の英語レポート「Global equity outlook 2024」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。

金融規制当局は、過去の運用実績は将来の運用成果を示唆するものではないという文言を好む。しかし、私たち投資家はよく、この先の市場環境がどのようなものになり得るかのヒントを得るために過去に目を向ける。活かすことができるパターンや回避できる罠が存在する場合が多いからだ。しかし、2024年においては、過去に目を向けてもいつもの有用な知見が得られないかもしれない。

マクロ面に目を向けると、各国中央銀行の量的緩和という実験的政策により、世界金融危機以降の市場は比較的穏やかな状況となってきたが、現在は量的緩和の巻き戻しが進められており、この「量的引き締め」は政策当局や投資家にとって未知の領域となっている。同時に、金融引き締めのピークが近づいているようであり、インフレは鈍化傾向にある様子だが、今回の戦いの最終局面の行方は不透明なままである。最近の市場の動きは転換点が近づいていることを示唆しているが、重要イベントのタイミングの見極めについて市場は間違えることが多い。

地政学的情勢も安定の兆しがほとんどみられない。数十年間続いてきた「平和の配当」(平和による軍事費の縮小分が民事用途に振り分けられる状況)は突然終わりを告げた。最近では中東情勢の動きも加わって全体的な先行き不透明感が一段と強まっている。それに加えて、2024年は一連の国政選挙が予定されており、米国ではドナルド・トランプ氏の大統領2期目が現実のものとなる可能性もあるなど、さらなるドラマが展開されるだろう。

これらすべてを念頭に置いた上で、投資家は高金利の長期化、経済成長鈍化とインフレ高止まりという逆風、厳しい地政学的環境などを考慮して見通し、そしてポートフォリオを調整していく必要がある。では、こうした不確実性の海の中において自信を持って停泊できる安定した港はどこにあるのだろうか。当社グローバル株式チームでは、フューチャークオリティ哲学を拠所としており、成長して優れた投下資本利益率を達成・維持することができ、重要なクオリティの柱である事業(Franchise)、経営(Management)、財務(Balance Sheet)、バリュエーション(Valuation)をすべて備えている企業こそが長期的にアルファを獲得するための最有力候補になると確信している。

こうした企業はそれぞれ独自のフューチャークオリティへの道を歩み始めるとみられるが、共通の道筋も存在する。そうした共通の要因は構造的に必要とされるものである場合が多く、したがってマクロ経済サイクルに左右されにくいものであることから、長期にわたって有利に生かしていくことができる。その例としては以下などが挙げられる。

AIの普及

人工知能(AI)の台頭は、2023年の市場を牽引する大きなテーマとなった。我々は当初、このAIブームに乗ることを躊躇していたが、後に実施したリサーチの結果を受けてそのスタンスを見直すことになった。AIは過大評価されている面もあるとの見方に変わりはないが、次世代のテクノロジーを変貌させる可能性を秘めていることは確かだ。AIにヒントを得た新たなビジネスモデルやユースケースの中から長期的な勝ち組を見極められる段階にはまだないが、すでに市場をリードしてこの新技術の急速な普及の恩恵を受けており、当チームのフューチャークオリティ基準に合致する企業は存在する。

エネルギー転換の実現を後押しする企業

人類の化石燃料への依存を減らし、再生可能なエネルギー源によってよりクリーンな代替エネルギーを作り出す必要があるが、この移行は一筋縄ではいかない。現在のエネルギー生産量を維持しながら炭素排出量を軽減していくための支出拡大が必要とされている。この両分野において実り多い投資機会が存在するものの、エネルギー転換は財政支出に大きく依存しており、政治による後押しを期待できなくなる場合も想定される。

世界的な旅行の正常化と構造的成長

旅行業界は引き続き、新型コロナウイルス大流行を受けた移動制限の影響からの回復過程にあり、国によって正常化の段階はまちまちだ。しかし、旅行市場の中核的な消費者層に目を向けると、需要は引き続き旺盛である。特に「体験」をより重視する若い世代にその傾向が強い。さらに、開発途上国からの新たな旅行者層も台頭しつつある。これらの国では一人当たり国内総生産が増加してきており、今後旅行する余裕を持てるようになる人々が増加するとみられている。

医療の効率化を提供・実現する企業

人口高齢化が進むなか、十分かつ効率的な医療を提供し、医療サービスのコストも削減していくことは、今後の世界の最重要課題の1つとなる。こうした人口構成の変化に伴う課題を受けて、ヘルスケア企業は強く求められている解決策を提供するためにイノベーションを起こしており、この分野は豊富な投資アイデアをもたらしてきたが、それは今後も続くとみている。一方で、ヘルスケアセクター内の一部の分野においては、コロナ禍の影響で需要が前倒しされたほか人手不足も続いていることを受けて、このところ業績不振に陥っている。

世界は変化の時を迎えつつある。この先の道のりにおいては、より最近の過去の事例を参考にはできなくなるだろう。しかし、目隠し状態に置かれるわけではなく、より確実性を高めるために用いることができるツールは存在する。我々のフューチャークオリティ・アプローチは、競争優位性が持続する事業を見極めるためのものである。これらの企業の中には、過去10年間においてマーケットリーダーの地位になかった企業もあるかもしれない。しかし、歴史を紐解くと、変化の時代においては当初のマーケットリーダーと最終的なマーケットリーダーが同じであることは稀であり、この場合においてはより高い確度を持って歴史の教えを信じることができるだろう。


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