当レポートは、英語による2024年2月22日発行の英語レポート「The climate change megatrend」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。
「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰の時代が到来した」。これは、国連のアントニオ・グテーレス事務総長がニューヨーク市の国連本部で行った最近のスピーチで述べた言葉である。そして、確かにここ数年は異常気象という点では非常に厳しい状況で、欧州やアジア、北米で山火事、ハリケーン、記録的な猛暑などが続いている。かつては一世代に一度といった例外的な現象が、今や驚くほど日常的なものになりつつある。
気候変動の経済的リスク
Deloitte Centre for Sustainable Progressが2022年に発表した報告書によると、「気候変動は、放置された場合、今後50年間で世界経済に178兆米ドルの損失をもたらし、2070年にはたった1年間で世界の国内総生産(GDP)を7.6%減少させる可能性がある」と指摘されている。
しかし、流れを変える時間はまだある。早急なアクションが求められるからこそ、当社では気候変動を投資のメガトレンドと定義しており、グリーンボンドやサステナブルボンドが重要な役割を果たすと考えている。以前からこのように考えてきた当社は、グリーンボンド分野のパイオニアであると自負しており、2010年には世界銀行と協力して世界初となる世界銀行グリーンボンド特化型ファンドを設定した。
ブラウン産業のグリーン化を促進
気候変動の解決策を見出すにあたり中心となるのはイノベーション(革新)と技術の進歩とみられ、したがって多額の資金が必要になると想定される。こうした取り組みには、研究・開発の資金が必要となるからだ。グリーンボンドやサステナブルボンドは、構造的には通常の債券と同様だが、調達した資金の使途は、再生可能エネルギーや廃棄物処理などのプロジェクトや、サステナビリティ慣行の促進を目的とするその他の取り組み、環境のポジティブな変化につながる取り組みに限定される。
当社のグローバル・グリーンボンド・チームでは、特に発達した伝統的産業、つまり二酸化炭素排出量の大半を占める企業に焦点を当てている。これは、そういった企業がネットゼロへの移行において最も大きな変化をもたらすことができるからでもある。こういった二酸化炭素排出量の多い「ブラウン」産業は、サステナブルファイナンス市場から排除されがちである。しかし、これらの産業はまさに二酸化炭素排出削減の潜在的可能性の大部分を占めており、また(鉄鋼、アルミニウム、セメント産業など)代替となるものがまだ存在していない場合が多い。したがって、当社では、気候変動という緊急事態に求められる誠実さと厳格な要件を追求しながら、こうした産業の転換を支援していくことが極めて重要であると考える。
当該分野への投資は、こうした伝統的なブラウン産業を気候にとってマイナスの存在からプラスの存在へと転換させる上で、大きな影響を与えることになるとみている。米国のIRAのような税制優遇措置は、こうした伝統的なブラウン産業の再適応を促すことにより、ネットゼロ目標の達成という点で大きなインパクトをもたらすと予想される。
投資がどのようにネットゼロ目標を支援できるか
ネットゼロへの移行においては、インパクトとエンゲージメントに注力している。当社はグローバル債券市場で積極的なエンゲージメントを行っており、ネットゼロ目標を達成すべく、全体的なサステナビリティへの移行においてグリーンなサステナビリティ投資を支援している。なかでも、ネットゼロと二酸化炭素排出量削減に対して野心的な目標を掲げている企業に焦点を当てるようにしている。
債券、特にグリーンボンドやサステナブルボンドは、直接的なインパクトを与えることができることから、独特の投資機会を提供している。例えば、発電は世界の二酸化炭素排出量に大きな影響を与える重要な注目分野であり、国際エネルギー機関(IEA)の予測によると、電力消費量は今後30年で2倍かおそらく4倍になるとみられる。したがって、グリーンで再生可能な電力源への移行の実現に資金を提供することは極めて重要である。そのような拡大に必要な資金の多くは債券市場で調達されることになるため、野心的な目標を掲げる電力会社を選び抜くことがカギとなる。
当資料は、日興アセットマネジメント(弊社)が市況環境などについてお伝えすること等を目的として作成した資料(英語)をベースに作成した日本語版であり、特定商品の勧誘資料ではなく、推奨等を意図するものでもありません。また、当資料に掲載する内容は、弊社のファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。資料中において個別銘柄に言及する場合もありますが、これは当該銘柄の組入れを約束するものでも売買を推奨するものでもありません。当資料の情報は信頼できると判断した情報に基づき作成されていますが、情報の正確性・完全性について弊社が保証するものではありません。当資料に掲載されている数値、図表等は、特に断りのない限り当資料作成日現在のものです。また、当資料に示す意見は、特に断りのない限り当資料作成日現在の見解を示すものです。当資料中のグラフ、数値等は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。当資料中のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。なお、資料中の見解には、弊社のものではなく、著者の個人的なものも含まれていることがあり、予告なしに変更することもあります。