本稿は2025年6月20日発行の英語レポート「FOMC: projections highlight heightened uncertainty in rate outlook」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。

FRB は政策金利を据え置くとともに楽観色をやや強めた見通しを示唆

米 FOMC(連邦公開市場委員会)は、予想されていた通り 6 月の会合で政策金利を据え置いた。6 月の金融政策声明では 5 月に比べるとやや楽観的な見通しが示され、5 月に言及された「失業率およびインフレ率がともに上昇するリスク」は「後退はしたものの依然高水準にある」と指摘された。しかし、6 月の FOMC 経済見通し(Summary ofEconomic Projections、「SEP」)は、3 月分に比べ、短期的には経済の方向性が成長鈍化・インフレ加速環境へとシフトしたことを示唆している。

経済成長と雇用

FOMC 後の記者会見で、米 FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長は現在の経済状況を「堅調」と表現し、 4.2%という失業率は「依然として低い」と述べた。また、実質賃金の伸びは依然としてプラス圏にあると指摘したが、 SEP で失業率が年内に 4.5%に達すると予想していることにも触れており、経済状況は悪化が予想される。最近のGDP 統計は、予想される関税引き上げを控えて投資が急増し純輸出が輸入の前倒しによって歪んでいるため、トレンドの方向性を見極めるのに有効な参考指標とは言えない。一方、消費分野は軟化したが、PDFP(民間最終消費支出)は国内投資を頼りとして第 1 四半期に 2.5%の健全な伸びを見せた。ただし、投資拡大を牽引したのは今後見込まれる関税という一時的な要因であるため、その寄与度は低下する可能性が高い。注目すべき点として、6 月時点の経済成長予想は 3 月時点の 1.6~1.7%から 1.4~1.5%へと下方修正された。2025 年の失業率予想は 4.4~4.5%から変わっておらず、中心的な傾向がより明確になったことを反映している。

大きな未知の要素はインフレ

パウエル議長は、インフレは2022年の高水準から「大幅に鈍化した」ものの、FRBの目標である2%に比べると「幾分高い水準にとどまっている」と述べた。一方、関税を大きな「原動力」として短期的なインフレ期待がここ数ヵ月「加速」しているとも指摘した。SEPの総合PCE(個人消費支出)インフレ予想は3%と3月時点の水準から引き上げられたものの、同議長はインフレ率が長期的には落ち着いていくとの予想を示した。しかし、このような見通しに伴う不確実性は、FOMCの金利政策の方向性を非常に予測しにくいものにする可能性がある。インフレ期待の水準は2.7~2.8%から2.9~3%に上昇し、上振れリスクと下振れリスクがともに顕著になってきている。2025年と2026年の予想レンジは下限が明確に2%を上回っており、2027年にはFRBの目標値付近へと減速するものの、上方のテールリスクはある程度残る。また、FOMCメンバーが景気動向の評価に用いるディフュージョン・インデックス(DI)のなかで、失業率およびGDPの不確実性DIは3月の大幅上昇を経て幾分低下したものの、インフレに関する不確実性DIは3月と同様の水準で高止まりしている。

大半のFOMCメンバーが年内に2回の利下げを見込むもメンバー間の見通しのばらつきは拡大

FOMCの年末におけるFF(フェデラル・ファンド)金利誘導目標予想の中央値は3.9%と、3月時点の予想から変わっていないが、2027年の長期予想は3.4%と若干引き上げられた。FOMCメンバー19名のうち10名が2025年に少なくとも2回の利下げを見込んでいる一方、今年は全く利下げを実施しないと予想するメンバーの数は3月時点の4名から7名に増えた。こうした予想のばらつきが、FF金利見通しの不確実性の高さを浮き彫りにしている。

今のところ、FOMCは経済指標次第の姿勢を維持し、当面のインフレ期待をめぐる不確実性に主眼を置いていく模様だ。

FOMCの声明とSEPは、当社のレポート「グローバル投資委員会によるレビュー:世界的に先行き不透明感が増すシナリオ」で説明した貿易デタント(緊張緩和)を伴う成長鈍化という基本シナリオと一致している。しかし、不透明感は根強く、スタグフレーション、あるいはディスインフレを伴うリセッション(景気後退)といったシナリオの発生確率は引き続きゼロを大きく上回っている。


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