Vol.1,929に引き続き、アセアンの主要加盟国について、ご紹介します。

ベトナム
ベトナムは、50以上もの民族からなる多民族国家です。人口は約9,946万人に及び、アセアン域内3位の規模を誇ります(2022年時点)。同国は社会主義共和国と謳っていますが、1986年に市場経済への移行や積極的な対外開放政策などを進めるドイモイ(刷新)政策を導入し、目覚ましい経済発展を遂げてきました。近年では、相対的に安い労働コストや中国との近接性などを背景に、中国を代替する生産拠点の有力候補地としても注目を集めています。輸出総額は、2022年にシンガポールに次ぐ域内2位、過去10年(2012~2022年)で2倍超に拡大するなど成長が続いています。また、EV(電気自動車)など多様なハイテク製品に使用されるレアアースの埋蔵量では中国に次ぐ規模を誇り、今後の生産量の拡大をめざしています。

さらに、同国は半導体産業の育成も進めています。2023年9月には、米国と半導体供給網などの強化に向けた包括的戦略的パートナーシップを発表しました。今後、米半導体企業が、技術者育成や半導体工場設立を通じてベトナムの半導体産業振興を支援する予定で、同国経済のさらなる発展につながると期待されます。

マレーシア
マレーシアは、イスラム教を中心としたマレーや中国、ヒンドゥーなどの多様な文化が共存する多民族国家です。人口は約3,265万人、名目GDPは4,070億米ドル(日本の1割弱)ほどと、インドネシアやタイを下回る水準ですが、一人当たりGDPでは、12,466米ドルと、域内ではシンガポールやエネルギー資源国のブルネイに次ぐ、第3位です(すべて2022年時点)。こうした背景には、1980年代以降、積極的に外資導入政策に取り組み、日本など外資企業の進出が相次いだことで工業化や技術移転が進み、急速な経済発展を遂げたことなどがあります。

近年、同国は、半導体産業の育成に力を入れています。半導体のパッケージングやテスト分野の複数の海外大手企業が同国へ進出しており、半導体輸出額では世界トップクラスの水準を誇ります。同国は、2030年までに半導体産業の世界シェアをさらに高める政府目標を掲げており、今後のさらなる成長が期待されます。

フィリピン
フィリピンは、数千の島々からなる群島国家です。人口は約1億1,157万人と、域内では2位、世界でも12位の人口規模を誇ります(2022年時点)。

同国は、EVバッテリーの生産に使用されるニッケルの埋蔵・生産量が世界トップクラスであるほか、半導体や自動車用電子部品の生産に関する技術的な蓄積があることから、EV産業の育成を推進しています。2022年には、EVの生産・導入を促進する「EV産業育成法」が成立したほか、2040年までに国内での内燃エンジン車販売を事実上終了し、EV化率100%をめざす野心的な目標も発表しています。世界的な脱炭素の流れが続く中、同国のEV産業の動向に注目が集まります。

【図表】アセアン主要国の概要
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。