前回(Vol.1,990)は、米国の大統領・議会選挙の株価への影響について、①足元の選挙情勢としては民主党が両院をおさえる可能性がやや低いこと、②それは、過去のパターン的には米国の株式市場にとって好材料であること、を確認しました。

今回は、市場参加者の見方と、両党の主要政策論点に関するスタンスから考察してみます。

市場参加者は議会の組み合わせに注目か
5月に公表された国際的な資産運用会社対象の調査によると、今回の大統領・議会選挙について、バイデン氏の勝利とねじれ議会が金融市場にとって最良の結果とみられていることが明らかになりました。現状からの政策変更の可能性が少なく、大統領と議会の権力分散が図られている状況が望ましいと考えられているようです。

もっとも、トランプ氏が勝利し共和党が両院をおさえるトリプルレッドに関しても、規制緩和の可能性などから、過半数の回答者が米国の株式市場にとってポジティブと回答しました。

そのため、市場参加者は単に大統領がどちらになるかよりも、議会との組み合わせに注目していることがうかがえます。

政策的にも民主党の両院勝利でないことが鍵に
政策面に目を向けると、両党間では、気候変動対策やエネルギー政策について方向性の違いがあります(下表【A】)。一方、戦略産業の国内回帰、対中強硬路線など複数の点ではスタンスの一致がみられます(下表【B】)。例えば、トランプ政権下での対中追加関税政策のほとんどがバイデン政権でも引き継がれていますし、CHIPSプラス法(中国との覇権争いを念頭に半導体産業や科学技術分野を支援)はバイデン政権下で超党派の合意によって成立しました。また、2025年に失効する所得税減税(トランプ減税)は、中間層へのアピールから、仮に民主党が今回の選挙で勝利しても、少なくとも部分延長となる見込みです(下表【C】)。このように、経済面を中心に両党間の政策スタンスの一致が見られる点は、株価への影響という点では安心材料といえます。

仮に民主党が主張する企業・富裕層への課税強化(下表【D】)が実現すれば、株価にとってネガティブに働くおそれはあるものの、それには民主党が両院をおさえる必要があり、足元の選挙情勢からすると、やや可能性が低いといえそうです。

以上を踏まえると、市場参加者が株価にポジティブと考えている2つのシナリオ――①バイデン氏勝利とねじれ議会により、課税強化はなく、政策は現状維持で不確実性は低下する、または②トリプルレッドで不確実性はあるが、規制緩和の可能性もある――の間で、全体として株価に楽観的な見方が維持されそうです。

ただし、今後、議会選挙で民主党の勢いが増すと、こうした見方は変更を迫られます。そのため、両院とも民主党となる可能性がやや低いという選挙情勢が変化しないことが株価の鍵となりそうです。

【図表】主要政策論点に関する民主党と共和党のスタンス
  • 信頼できると判断した資料をもとに日興アセットマネジメントが作成
  • 上記は過去のものであり、将来を約束するものではありません。