日本株式は、米中摩擦に対する懸念がやや薄れたことや、今後の業績回復に対する期待感などから、9月以降堅調な推移を続けています。足元の業績は、製造業を中心に厳しい状況となっていますが、2018年からの株価下落で市場に織り込まれていたため、減益決算の発表や業績予想の下方修正を悪材料出尽くしと捉えて株価が上昇する銘柄が多く見られました。これまでの株価上昇に伴ない、株価指標面からの割安感が薄れつつあることから、株価の上昇基調が継続するには、今後の業績回復の確度が高まることが必要になります。そこで、今回は業績回復の前提となる、世界と日本の景気動向について、企業経営者の見方をご紹介したいと思います。
10月末から11月中旬にかけては、7-9月期決算の説明会や個別取材を通じて、多くの経営者から話を聞く機会があります。その中で多くの経営者が口にしたのは、「地域別では中国と欧州が悪い」「セクターでは自動車関連が弱い」ということです。特に、日本企業の業績に影響を与えているのは、米中摩擦の問題などから中国国内で自動車関連を中心に設備投資が手控えられていることです。7-9月期決算では、中国向けの比率が高いFA(ファクトリーオートメーション)関連企業の業績見通しが下方修正されるケースが相次いだほか、素材関連や自動車部品関連においても厳しい業績となる企業が多く見られました。足元では、「悪化が加速している状況にはないが、回復の兆しもまだ見られない」とのコメントが多く聞かれました。
- 基準価額(税引前分配金再投資ベース)およびTOPIXは、グラフ起点の基準価額(税引前分配金控除後)をもとに指数化しています。
- 基準価額(税引前分配金再投資ベース)とは、税引前分配金を再投資したとして計算した理論上のものである点にご留意ください。
- 基準価額は、信託報酬控除後の1万口当たりの値です。信託報酬の詳細につきましては、目論見書の「ファンドの費用」をご覧ください。
- グラフ・データは過去のものであり、将来の運用成果などを約束するものではありません。
一方で、好調な分野もいくつか出始めています。多くの企業が、中国の5G基地局向けに電子部品の出荷が好調であることや、大手IT企業によるデータセンター投資が動き始めたことなどで半導体の需要に底打ち感が出始めていることを指摘しています。半導体関連は、2018年から調整局面にありましたが、在庫調整が一巡するとともに需要の底打ちが見られたことで、景況感が改善しています。また、調整が続いていたスマートフォンの出荷が、大手メーカーの新機種が好調であることなどから底打ち傾向にあることも、電子部品や半導体関連の企業にとって追い風となっています。国内に目を転じると、全体としては比較的底堅く推移している印象です。特に、人手不足に対応するためのIT投資に対する意欲は旺盛で、ITサービス企業では「旺盛な需要に対応するための人員確保が課題」という状況です。消費については、消費税増税前の駆け込み需要とその反動に関する話題が多くありましたが、全体としては「駆け込み需要は9月後半に一気に加速して事前の想定を上回り、その反動はほぼ想定したとおり」という企業が多かったようです。ただし、多くの小売企業から「節約志向が一段と強まっている」という指摘もあり、今後の動向には注意が必要です。
以上のような経営者の景況感を総合すると、海外景気の回復ペースやタイミングについては業種ごとにバラつきがあるもののボトム圏には到達しており、国内景気は引き続き安定的に推移していると見られることから、全産業で見ると来期の増益転換は可能であると思われます。
米中摩擦の動向などの不透明要素が残ることから、短期的には不安定な株価動向となる局面も想定されますが、企業業績の面から見ると、来期から増益基調に回帰する見通しが強まることが大きなサポート要因となり、株価の上昇基調が維持されると考えています。ただし、業種や地域によって景況感の回復ペースに差があることから、銘柄の選別が重要になります。ジパングでは、好業績が期待される電子部品、半導体、ITサービスなどの関連企業や、シェアの拡大や事業構造の改革など外部環境に左右されず個別要因で成長を続けられる企業に選別投資を行ない、パフォーマンスの向上を図りたいと考えています。