日興アセットマネジメントのスチュワードシップ方針

日興アセットマネジメント(以下、「当社」)は、日本の上場株式に対する投資について「責任ある機関投資家」の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コード≫を受け入れることを表明致します。また、他の投資資産、特に日本企業の発行する債券においても同じく、本コードの理念を受け入れ、取組みを推進して参ります。

日本版スチュワードシップ・コード受け入れにあたって

日本版スチュワードシップ・コードは、金融庁において設置された日本版スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会での議論を経て、2014年2月に策定されました。
その後、「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」が公表した意見書の内容などを踏まえて、策定から約3年を経過した2017年5月に、改訂版のスチュワードシップ・コードが取りまとめられました。
上記改定の後も、同フォローアップ会議は、コーポレート・ガバナンス改革の深化に向けた取組みについて議論を継続し2019年4月には新たな意見書を公表しました。それを受けて、再改訂となる日本版スチュワードシップ・コード(以下、「本コード」)が、2020年3月に公表されました。

本コードは、機関投資家が、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解のほか運用戦略に応じたサステナビリティ(ESG*1要素を含む中長期的な持続可能性)の考慮に基づく建設的な「目的を持った対話」(エンゲージメント)などを通じて、投資先企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより、顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任(スチュワードシップ責任)を果たすための諸原則です。当社は、受託者責任を根幹に据えながら、本コードの趣旨に則したグローバルな対応を行なってまいります。

当社は、資産運用会社として、フィデューシャリーの原則*2を当社の価値観及び企業活動の全ての中核に位置付け、顧客から信認を受けた受託者として常にお客様の利益を最優先に行動します。また、ESGをフィデューシャリーの原則を実践するための必要不可欠な概念であると見なし、投資判断のあらゆる過程に取り込み受託者責任を果たすことに努めています。当社は、この原則のもとに本コードを受け入れ、本コードに則した対応を行なってまいります。投資先企業の状況の把握、投資先企業とのエンゲージメント、また議決権行使などを通じて、顧客・受益者からお預かりした資金の中長期的な投資リターンの拡大を目指してまいります。

当社は、原則主義(Principle-Based Approach)、及び本コードの一部を実施しない場合に機関投資家が理由を説明することができる「遵守か説明か」(Comply or Explain)のアプローチなど、国際的に取り入れられている制度が本コードに採用された点に注目しています。また、投資先企業との建設的な「目的を持った対話」は公開情報に基づいて実施することが実効的だと考えています。

  • ESGとはE(環境、Environment)、S(社会、Social)、G(企業統治・ガバナンス、Governance)の3つを意味します。また、ESGを考慮した企業価値評価に基づく投資手法をESG投資といいます。
  • 他者の信認に応えるべく一定の任務を遂行すべき者が負う幅広い様々な役割・責任の総称

当社の方針及び考え方

  1. 機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たすための明確な方針を策定し、これを公表すべきである。

    当社は、顧客の利益を最優先に考え、各資産クラスに長期的に投資するグローバルなマルチアセット・マネージャーとして、様々な運用戦略を顧客に提供しています。長期的な価値の創造において、投資プロセスへのESG要因の組み入れ、またスチュワードシップ活動の推進は、当社のフィデューシャリー・ESG原則に係る行動指針にある通り、受託者責任に関する取り組みと一貫しています。サステナビリティは、次世代のニーズを損なうことなく、現在のニーズを満たすべく、あらゆる組織が今日直面する課題とリスクに取り組むことを意味します。当社のサステナビリティの方針は、一企業として、持続可能な組織経営を行なうこととも一貫しており、また、当社の倫理行動規範には、日興アセットのコアバリュー、企業の社会的責任、グローバル・シチズンシップに対する考えが示されています。
    当社は、2007年に責任投資原則(PRI)の署名機関となりました。PRI発足後早期の署名は、当社が受託者責任をもって6つのPRI原則全てに真摯に取り組む決意の表れであり、ESG要因は各投資戦略のプロセスに組み込まれています。

    当社は、スチュワードシップ責任を果たすために、公開情報に基づく投資先企業の状況の把握、エンゲージメント、そして株主総会での議決権行使に注力します。企業の持続的成長には、企業文化、経営ビジョン、事業戦略・財務戦略、コーポレート・ガバナンス、ステークホルダーとの関わり方等、企業を取り巻く様々な要因が関係し、各々の影響度は、企業の成長フェーズによって異なります。当社は、エンゲージメントや投資先企業の状況の把握を通じて、包括的な企業価値判断を行なう運用プロセスを有しており、企業の経営戦略、株主還元策、ESG戦略等に関して、企業の成長フェーズに合わせた調査活動を実施しています。また、投資先企業に対する意見表明の機会として、議決権行使を重視しており、『スチュワードシップ&議決権行使委員会』が策定し、その監督機関である『スチュワードシップ&議決権政策監督委員会』がその適切性などについて監視・監督及び助言する議決権等行使指図ガイドライン及び国内株式議決権行使基準に基づき、提案された議案が中長期の企業価値向上に資するかについて十分に検討した上で、議決権の行使を適切に行なうよう努めています。『スチュワードシップ&議決権政策監督委員会』は、当社と利害関係を有さない過半数の社外委員で構成される委員会の立場から、議決権行使を含む当社のスチュワードシップ活動が、その目的に沿って、受託者責任の忠実な履行に向けて適正に実施されていることを監視・監督し、中立かつ公平な立場から必要な助言を行います。

  2. 機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たす上で管理すべき利益相反について、明確な方針を策定し、これを公表すべきである。

    投資先企業に対する状況の把握、投資先企業とのエンゲージメント、及び議決権行使の実施にあたり、例えば、当社の関係会社、投資先企業、当社顧客(当該顧客・受益者と関係のある会社等を含む)等に投資する場合においては、利益相反が生じる可能性を否定できません。
    当社は、グループ各社およびその関係者が提供する多様なサービスに伴い、顧客利益を不当に害することのないよう、法令等に従い利益相反管理方針の概要を公表するとともに、その方針に則り利益相反のおそれのある取引等を適切に管理し、適正に業務を遂行しています。利益相反のおそれのある取引等を、社内規程に定めた類型に基づき管理対象取引として特定し、顧客利益を不当に害することのないよう、管理します。
    エンゲージメントの実施や議決権行使など、スチュワードシップ活動における利益相反については、「影響力行使型」と類型し、管理方針を定めています。具体的には、対象会社等からの影響力行使を防止し、その適切性を確保するため、合理的な判断基準を定め『スチュワードシップ&議決権行使委員会』の監理のもと当該業務を行うとともに、社外委員が過半数を占める『スチュワードシップ&議決権政策監督委員会』による監視・監督を行います。
    また、議決権行使に関しては、利益相反が生じる可能性がある行使先として以下の対象を想定し、議決権行使における利益相反の発生を回避し、客観的な判断ができるよう、議決権等行使指図ガイドライン第3条第4項に基づき、以下のとおり適切な行使判断が維持される管理体制を構築しています。

    • 親会社:親会社については、外部の第三者の見解も参考に行使判断を行っています。また、その行使判断については、『スチュワードシップ&議決権政策監督委員会』にて審議することで中立性、透明性を確保しています。
    • 販売会社:当社商品を販売する上場金融機関等については、資本関係の有無に関わりなく、利益相反が生じる可能性があります。当社では、販売会社の議決権行使を判断する際には、外部の第三者の見解も参考にすると共に、その行使内容が、顧客・受益者の利益を最優先し、スチュワードシップ責任を満たしているか、各議案すべてを『スチュワードシップ&議決権政策監督委員会』に報告し、中立かつ公平な立場からの助言・監督を受けることとしています。
    • 顧客取引先:上場する顧客や取引先の議決権を行使する際にも、利益相反の発生を否定できません。当社では、顧客や取引先の議決権行使判断についても、外部の第三者の見解も参考にすると共に、各議案すべてを『スチュワードシップ&議決権政策監督委員会』に報告し、中立かつ公平な立場からの助言・監督を受けています。
  3. 機関投資家は、投資先企業の持続的成長に向けてスチュワードシップ責任を適切に果たすため、当該企業の状況を的確に把握すべきである。

    当社は、2022年3月に「日興アセットマネジメントグループ エンゲージメント&スチュワードシップ戦略」を策定・公表しました。国内外の日興アセットマネジメントグループ各社の運用チームが行う投資先企業とのエンゲージメントについて、その目的、方法と実践、優先順位付け、文書化・モニタリング・レポーティング、協働エンゲージメント、エスカレーションなどのアプローチの概要を、お知らせすることを目的としています。当社を含むグループ各社が提供する運用戦略におけるエンゲージメントは、このエンゲージメント&スチュワードシップ戦略に掲げる内容に沿って実施されています。

    当社では、ファンドマネージャー、アナリストは、公開情報をもとに、投資先企業の状況を的確に把握するよう努めています。企業からの開示情報や継続的なエンゲージメント等を通じて、業績動向や資本構成等の財務情報、経営戦略、また、企業のESG戦略等の非財務情報を理解します。
    日本の上場株式の企業価値評価にあたっては、業績予想等の財務面の評価のみならず、ブランド力等の競争優位性やESG価値といった非財務価値も考慮した「CSV評価」を主要な投資対象企業に行うなど、企業価値を包括的に分析することを心がけています。最近では、企業のESGに対する分析強化の一環として、気候変動(特に脱炭素社会への移行)がもたらす影響などの分析・評価をスタートしました。具体的には、個別企業におけるカーボンプライシングによるコストインパクト試算や、脱炭素社会への移行に伴う機会・リスク項目の整理、ポートフォリオの二酸化炭素リスク量を可視化するアプリケーションの自社開発と導入などです。

  4. 機関投資家は、投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて、投資先企業と認識の共有を図るとともに、問題の改善に努めるべきである。

    当社は、公開情報をもとに、投資先企業の主に経営陣との面談を通じて企業価値向上に向けた全般的な課題の共有と解決に向けた働きかけを行い、投資先企業の持続的成長につなげる取組み・対話をエンゲージメントと定義しています。当社スチュワードシップ活動の深化を目的に2017年3月に設立された株式運用部アクティブオーナーシップグループは、当社の国内株式スチュワードシップ活動の牽引役としてアクティブ運用戦略ならびにパッシブ運用戦略双方の投資先企業に対するエンゲージメントを展開します。また、企業調査グループや各運用戦略チームもまた、調査対象企業とのエンゲージメントをアクティブオーナーシップグループと協働して実施する組織的なエンゲージメント体制です。具体的には、エンゲージメントはこれらのグループやチームのファンドマネージャー、アナリストにより行われます。投資先企業の経営理念、事業・財務戦略、ESG、リスク等についての的確な理解に基づき、中長期的な企業価値の向上や持続的成長の実現にとって重要な課題を特定した上で、投資先企業と認識の共有を行い、課題解決に向けて建設的な対話を行います。対話の相手は、経営トップ層のほか、財務担当者、経営企画、事業責任者など、広範に及びます。特に最近では、サステナビリティ部門や社外取締役との対話にも注力しています。これらの活動の結果は、各グループ・チームのファンドマネージャー・アナリストが適切に共有し、企業価値の評価及び投資判断に役立てています。
    このようにエンゲージメントを実施する投資先企業のうち、事前にその方針の設定が可能な企業を対象に、PDCAサイクルを適用したエンゲージメント(マイルストーン管理)を新たに開始しました。これは、エンゲージメントすべきテーマにおける、問題の所在、ゴール設定、具体的な働きかけ内容、スケジュール、期待される具体的効果、などを明確に設定した上でスタートできるエンゲージメントに限定し、詳細を管理しつつ進めて行く取組みです。これは、エンゲージメントの有効性の引上げ、また効果検証の透明度の向上などの目的から推進しているものです。

    当社では、投資先企業がESG課題への取り組みと収益性・競争力の追求のバランスを取りつつ、社会と株主双方に対して価値を生み出しているかを評価する「CSV評価」を主要な投資対象企業に付与しており、エンゲージメントの課題設定においても活用しています。また、多くの企業に共通して重要と考えるESG課題として3つの「重点ESGテーマ」(E:脱炭素社会に向けた取組み、S:人的資源と生産性、G:ガバナンスの実効性)を設定しており、これらについても企業との対話を進めてまいります。

    なお、当社はスチュワードシップ活動を通じて未公表の重要事実を受領することがないよう、十分に配慮しています。エンゲージメントや投資先企業の状況の把握の際に未公表の重要事実を受領しないように継続的な教育・訓練を徹底しており、万が一、取得してしまった場合には、社内規程に基づき、当該企業の株式の取引に対して売買制限を設ける等の対策を速やかに実施します。

  5. 機関投資家は、議決権行使と行使結果の公表について明確な方針を持つとともに、議決権行使の方針については、単に形式的な判断基準にとどまるのではなく、投資先企業の持続的成長に資するものとなるよう工夫すべきである。

    当社では、『スチュワードシップ&議決権行使委員会』が策定し、その監視・監督及び助言機関である『スチュワードシップ&議決権政策監督委員会』がその適切性などを監理する、議決権等行使指図ガイドラインおよび国内株式議決権行使基準に則った議決権行使を実施しています。投資先企業の持続的成長による中長期的な企業価値の向上が、顧客・受益者からお預かりした資産の拡大につながるとの考え方から、それを促す議案には賛成票を、それを阻害する議案には反対票を投じています。
    また、議決権行使にあたっては、投資先企業の状況や取り組み、当該企業とのエンゲージメントの内容を十分に踏まえた上で、当該企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資する行使判断となるよう努めています。

    日本株式の貸株取引は、運用部門、コンプライアンス、リスクマネジメントの責任者などを構成メンバーとする社内委員会が定めた運用方針等に従って行われています。貸株取引を行う際には、企業価値の向上を促すという目的も踏まえて、顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大に寄与すべく、議決権の確保について適切に判断するよう努めています。
    議決権行使結果に関しては、当社ホームページへの掲載やプレスリリースを通じて、投資する日本株式の全議決権行使結果について、個別議案開示を四半期毎に実施しています。各議案の賛否に加え、当社が説明を要すると判断した議案については、その理由も公表します。また、議案の種別または内容毎に、議案の総数、及び賛成または反対の比率等を四半期・年度毎に公開しています。

  6. 機関投資家は、議決権行使も含め、スチュワードシップをどのように果たしているかについて、原則として、顧客・受益者に対して定期的に報告を行うべきである。

    当社では、スチュワードシップ・コード受入れの方針及び各原則に対する考え方を定期的に見直し、これを公表します。また、日本株式の議決権行使結果については、当社ホームページで個別議案開示を実施するとともに、顧客から個別銘柄及び判断根拠の開示要請があった場合には、当該資産にて保有する銘柄における議決権行使の状況を、顧客毎に開示しています。

  7. 機関投資家は、投資先企業の持続的成長に資するよう、投資先企業やその事業環境に関する深い理解のほか運用戦略に応じたサステナビリティの考慮に基づき、当該企業との対話やスチュワードシップ活動に伴う判断を適切に行うための実力を備えるべきである。

    当社は、スチュワードシップ活動を適切かつ円滑に実施するため、『スチュワードシップ&議決権行使委員会』を組織しています。同委員会は、運用部門とコンプライアンス部門のマネジメントを中心に構成され、当社でのスチュワードシップ活動に関する方針等の策定及びこれらの定期的な見直し、また本コードの理念に準拠した議決権行使全般に係る意思決定及び議決権等行使指図ガイドラインや国内株式議決権行使基準の策定と見直しを行ないます。
    また、当社は、当社のスチュワードシップ活動における透明性向上とガバナンス強化を図ることを目的に、2016年6月に『スチュワードシップ&議決権政策監督委員会』を設置しました。同委員会は、当社と利害関係を有さない過半数の社外委員で構成される委員会の立場から、当社のスチュワードシップ活動が、その目的に沿って、受託者責任の忠実な履行に向けて適正に実施されていることを監視・監督し、中立かつ公平な立場から必要な助言を行っています。
    当社の『ESGグローバル・ステアリング・コミッティー』は、グローバルエグゼクティブコミッティー(GEC)の信任を得て設立され、ESGの取り組みにかかるコミットメントの遂行を監督しています。同コミッティーは、最高投資責任者(CIO)が委員長を務め、国内外の運用拠点の株式及び債券運用チームのリーダーによって構成されており、ESG課題とPRI原則へのアプローチの実効性を評価し、最良の手法を検討する役割を担っています。
    当社は、本コードの各原則・指針の自らの実施状況について、継続的に自己評価を行いスチュワードシップ活動等の更なる改善に役立てています。自己評価の結果は、当社ホームページにて定期的に開示する方針です。

2023年1月11日