Series5.ファンドの持ち方

2. リターンは「トータル」で
既に受け取った分配金を今の基準価額に足して考えなくてはなりません。

ほとんどの投信はマンスリーレポート(月次報告書)が毎月運用会社のホームページなどに掲載されますが、そこにある線グラフが下図のように2本線になっていることがあります。

これは「分配金込み基準価額」と言われる仮想の基準価額。なぜこんなものを表示しているかというと、過去に出した分配金を除外して考えては本当のリターンとならないからです。

分配は資産の一部切り崩しですから、出した分だけ基準価額が下がっています。そして投資家はその分を手元に回収しています。したがって、グラフにはその分を足し戻さないと、投信としてのリターンの計算が合わないことになります。

下のグラフの青い線はつまり、「出した分配金を受け取らずにすぐ投信に戻し入れたと仮定」した線なのです。お客様の視点に立てば、販売会社で「分配金再投資コース」を選んだ場合とほぼ等しいと言えます。

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※実例として、ある投信のマンスリーレポートの一部を表示するものです。
※分配金込み基準価額は、分配金(税引前)を再投資したものとして計算した理論上のものであることにご留意ください。

毎月分配の投信や、年2回決算の投信で多めの分配を出した投信などは、その分だけ比較的大きめに基準価額が下がっています。私たちはつい、受け取った過去の分配金のことを忘れて「今この基準価額で売ったら損じゃないか」などと思いがちですが、受け取り済み分配金を足し込んでリターンを考えるのが必須です。

販売会社によっては定期的な報告書の中で、「トータルリターン」という言葉でそれを自動的に計算してくれている場合がありますが、簡便法としては、今の基準価額に過去受け取った分配金を単純に足すのが分かりやすいでしょう。

例えば5,000円で買った投信が今4,500円で、過去受け取った分配金が毎月1万口当たり50円(年間600円)をちょうど2年分だったとすると、4,500円+1,200円=5,700円。リターンは5,700円と5,000円の差になります。利回りにすると、5,700÷5,000ー1=14%を2年で割って年7%となります。

基準価額だけだと、5,000円で買った投信が4,500円で損をしているように見えますが、分配金を合わせたトータルリターンで見ると年7%の利益ということです。マンスリーレポートの2本目の線は、それを表現したものであり、グラフと一緒にあるリターンの表も、このトータルリターンの考え方で計算されているのです。

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