当レポートは、英語による2019年12月発行「GLOBAL INVESTMENT COMMITEE OUTLOOK 2020」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。

投資は決して簡単ではない。国内政治や国際関係が深刻な分裂状態にあるなかで、それらの先行きを予測することが極めて重要である今日では、尚更と言える。しかし、我々は実に様々なストレスや不満を抱えているが、我々より前の世代の人々に言わせれば、今は昔に比べると穏やかで繁栄を謳歌している時代ということになるだろう。さらに、モノやサービス価格のインフレが低水準にとどまるとの見通しを受けて低金利環境が続いているなか、政府や企業による多額の負債も対処可能な状況にある。一方、新しい技術や努力によって世界の生産性は高水準に維持されており(公式統計が示すよりも大幅に高いと思われる)、それが企業全般の利益や一般的な人々の暮らし向きを支えている。

2018年の夏以降、トランプ政権が主に中国に対して貿易問題をめぐる制裁を警告・実行してきたことで、世界的に企業景況感が損なわれ、世界のテクノロジー市況の減速を招いたことは確かだ。その影響を受けた中国経済は、一部の重要セクターを対象として融資規制が強化されていたこともあって成長が一段と鈍化した。そして、それが欧州、日本、アジアの経済、特に企業収益に打撃を与えた。足元では米国経済も鈍化しており、それが設備投資に顕著に表れている。

しかし、これらの状況は明らかに好転しそうな様相を呈している。米国と中国は貿易合意に向けて歩み寄る姿勢であるようにみえ、また、5G投資の拡大や構造的要因によるクラウドサーバー需要の回復がテクノロジーセクターの追い風になる見通しだ。足元では、中国も景気支援策を拡大する構えであるように見受けられる。ブレグジット(英国のEU離脱)を含め、いくつかの地政学的な不透明要因に対する懸念は現在和らいでいる様子だが、最大の不透明要因は米国大統領選挙の行方である。なぜなら、市場は、トランプ大統領が再選され、企業活動に悪影響を及ぼす政策を掲げる大統領の誕生が回避されると確信し過ぎの感があるからだ。当社はどちらの政党の支持も表明しないが、市場がそうでないことは確かである。たとえ穏健派の民主党候補が大統領に当選して連邦議会のねじれが続く場合であっても、大統領令や規制によって対応できることは多分にあり、企業の収益性は大幅に低下するだろう。経済成長見通しも下方修正されることになろう。穏健派の民主党大統領であっても、民主党全体としては社会主義的な傾向がかなり強く、そうした考えを持つ主要議員らが重要な閣僚ポストに就く見込みであることから、その影響を強く受けるとみられる。なお、現在の情勢からすると、米国大統領選挙の行方はトランプ大統領再選に傾いている可能性が高い。しかし、米国大統領選挙をめぐっては、激戦州のカギを握る無党派層に影響を及ぼし得る政治ニュースが連日のように出てきているし、その他の国際的な不透明要因もみな根強いことから、世界の見通しを過度に楽観することは賢明ではなさそうだ。

一方、個別でみると大きな期待を持てる企業、投資テーマおよび国は存在する。当社のトップクラスの運用担当者たちは、世界中の様々な資産クラスおいてそうした投資機会に投資しており、有望な投資先を日々探し続けている。その一例がハイテク関連の投資機会だ。技術は急速に向上しており、新たな成長機会が豊富に存在することは間違いない。これらの技術のなかには今では当たり前と思われているものもあるが、そうした技術も今後実に様々に応用されていく可能性を秘めている。また、現在では容易に利用できるようになったスーパーコンピューターの演算力のおかげで、科学研究において様々な課題に対する新しい解決策を見つけることが可能となっており、環境やごみ削減といった世界的に深刻化している問題の解決策も発見されるかもしれない。ハイテク分野以外にも、新興諸国の生活水準の向上やより若い世代のライフスタイルの変化を捉える投資機会も多数存在する。また、コーポレートガバナンスの強化によって経営陣が利益や株主還元を大幅に向上させている「スペシャルシチュエーション」株も多く存在する。

したがって、世界を見渡すと悪材料が毎日のように目に飛び込んでくるが、そうした悪材料に囚われて好材料を見過ごしてはならない。投資家は地下室に隠れているようでも、キャンプファイアを囲んで座って楽しく歌っているようでもいけない。当社のグローバル投資委員会では、世界の主要株式市場はいずれも、2020年の大半において米ドル・ベースおよび現地通貨ベースともに小幅なプラス・リターンにとどまると予測している。2020年9月末時点においてS&P500指数が3,289、ユーロ・ストックス600指数が430、TOPIXが1,757、MSCI Pacific ex Japanインデックス(日本を除くアジア太平洋の先進国株式)が9,670へ上昇すると予想する。しかし、市場によって二分化された状態が続くとみられ、株式や社債の銘柄選択が投資に成功するカギとなり続けるだろう。また、G3(日米欧)については、経済成長が緩やかな加速にとどまり、中央銀行が2020年9月末まで基本的に金融政策を据え置く見通しであることから、債券利回りは非常に緩やかに上昇し、通貨は比較的横這いの推移が続くと予想している。2020年のGDP成長率については、米国が1.8%、ユーロ圏が1.0%、中国が5.7%、日本が0.3%になるとみている。ただし、こと日本については、GDP成長率の他にも重要なファクターがあり、配当金の引き上げや自社株買いの増加を含むコーポレートガバナンスの向上を受けて、特に世界のテクノロジー市況や中国経済が改善するなか、企業の利益が事前予想よりも大幅に好調に推移し続けると見込まれる。

よって、当社のグローバル投資委員会では、2020年はかなり荒れた展開になるとみられるものの、長期投資のスタンスとしては世界先進国株式に対してややポジティブな姿勢、G3のソブリン債に対して消極的な姿勢をとることを推奨する。しかし、アルファ(超過収益)の源泉となる、並外れて好調な企業、セクター、投資テーマが存在しないというわけではなく、当社では常に、株式だけでなくクレジットや一部のソブリン債においても、そうした超過収益源泉への投資に尽力している。

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