KAMIYAMA Reports vol. 190

  •  ここがポイント!
  • ✔ 市場の方向に乗る海外投資家
  • ✔ 逆張りの個人投資家
  • ✔ 誰が売り買いしているかよりも、何が投資家を動かすかが重要

市場の方向に乗る海外投資家

日経平均株価が30年ぶりに3万円台に乗せるなど、コロナ禍にありながら強い株式市場(以下、市場)となっている。これは主に①バイデン米政権の大型財政政策への期待、②主要国での新型コロナウイルス感染拡大の鈍化と正常化期待、③主要国の製造業の雇用や収益の改善、に支えられている。一方リスクは、①バイデン大統領が早い段階で富裕層増税やキャピタルゲイン課税強化などを語り始めること、②ワクチン接種の効果が想定外に低いこと、③旅行・飲食など非製造業の回復が遅れ、消費者が補助金などを貯蓄し消費に回さないこと、などが挙げられる。

日本の投資家は海外投資家動向を気にする傾向にある。実際、日本株の売買シェアに占める海外投資家の比率は高く市場の方向性に影響を与えるように見えるので、その動向を気にすることは理解できる。左のグラフを見ると、海外投資家は3ヵ月程度の短期的な市場の方向と同じ方向に動く傾向(市場が上昇している時に海外投資家が買っている傾向がある)にあることが見て取れる。

それゆえ、海外投資家がどういう行動に出るのか予想を聞かれることもある。後述するが、長期投資だけではなく、短期の市場動向を見る場合でも、海外投資家動向の予想と市場予想を同等視するのは適切ではない。市場動向に対して順張り(上がっている時に買う)か逆張り(下がってから買う)かは、投資スタイルの違いであって、市場と同じ方向に売買する(上がるときに買うなど)から儲かるのではないからだ。違う言い方をすると、市場の方向性は、海外投資家動向が主な原因ではなく、経済指標などの結果として投資家が売買することで生じている、と考えた方が良い。

つまり、投資家の売買動向とは、経済指標などの情報を消化した結果である。もちろん、それが市場の需給を作り、株価を作るのだが、需給(売買発注)という行動を起こす原因である経済状況の判断が市場を動かすと考えた方が良い。

逆張りの個人投資家

日本の個人投資家は、順張りの海外投資家とは逆で、「下がったら買い、上がったら売る」いわゆる逆張りの傾向にある。投資信託の売買も、「上がると利益を確定し、下がったら買う」傾向にある。

前ページのグラフ縦軸とスケールを合わせた左のグラフを見ると、海外投資家よりも個人投資家の売買のほうが小さい傾向にあることが分かる。また、個人投資家は市場が上昇する時に売り越し、下落する時に買い越す傾向にあることもわかる。

このことで、海外投資家と個人が対立していると考える必要はなく、海外投資家が個人投資家よりも儲かっているという(あるいはその逆の)証拠でもない。日本の個人投資家に多い逆張りは、ボラティリティが低いか低下する時に儲かりやすい。また、海外投資家のように「上がるほど買う」という順張りは、ボラティリティが高いほど儲かりやすいことになる。

市場価格があるレンジの中で取引される場合、上がれば売り、下がれば買う、逆張りの方が儲けやすい。しかし、市場価格がこれまでのレンジを抜けて大幅に上昇する場合は、その勢いに乗る順張りの方が儲けやすい。このように、逆張りか順張りかは、投資スタイルの違いであって、いずれの場合もボラティリティの状況判断を誤らないことが重要であり、どちらのスタイルが良いとは言えない。

誰が売り買いしているかよりも、何が投資家を動かすかが重要

日本の個人投資家は、日本株が長らくトレンドを持たず、バブル崩壊後のレンジ相場で投資していたため逆張り傾向にあると言われる。しかし、現実は個人投資家と機関投資家の違いが投資スタイルの違いになっていると考える。内外機関投資家は、金利や経済指標などを投資の判断材料として売買を行う。それは、機関投資家が最終受益者やスポンサーに説明する責任を負っているからだ。経済や証券投資を勉強し、経済が良くなる時に株式を保有し、悪化する時に保有しないことが説明しやすい投資行動になる。一方、個人投資家は、価格水準で心理的な影響を受けて売買しやすい。最近の価格水準が過去に比べて高いほど利益確定したくなるだろう。価格水準があるレンジで安定している時は利益を蓄積しやすいが、経済ショックや政策変更などで大きく変わる時に、市場から遠のき傍観する傾向にある。

現在市場で大きな影響力を持つ内外機関投資家は、説明しやすい経済見通しやバリュエーション判断に基づいて売買する傾向にある。そのため、どう売るか買うかは、その時の経済指標の平均的な見通し(コンセンサス)などに依存する。それゆえ、海外投資家がどう売り買いするかよりも、経済指標などがどのように予想されて投資家を動かすのかを考えた方が、市場動向を適切に判断することができるだろう。一方個人投資家は、機関投資家と同じように行動する必要はなく、株式市場全体は、長期的に人の努力と工夫で経済が成長することにしたがって拡大するので、そこに投資することを考えるべきだろう。

■当資料は、日興アセットマネジメントが情報提供を目的として作成したものであり、特定ファンドの勧誘資料ではありません。また、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。なお、掲載されている見解および図表等は当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。■投資信託は、値動きのある資産(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがあります。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。