KAMIYAMA Reports vol.208

  •  ここがポイント!
  • ✔ 2021 年:財政出動に支えられ、グロース株は強さを発揮
  • ✔ 2022 年:変異株リスクもあるが、財政に支えられた消費拡大が続くと想定
  • ✔ 最大のリスクは、消費マインドの低下

2021年:財政出動に支えられ、グロース株は強さを発揮

米国を代表する株価指数の一つであるS&P500は、2020年末から約26%(12月10日現在)、最先端技術を有する企業を多く含むNASDAQ100は約27%(同)上昇した。米国の株価指数は、新型コロナウイルス感染者数の増加にも拘わらず(医療提供体制が維持されたことなどから)、財政政策などによる支援継続で上昇した。NASDAQ100がS&P500を上回ったことでわかるように、総じてグロース株優位の相場が続いた

2020年3月のコロナ・ショックによる最安値から2021年12月10日までの間、S&P500は約110%(2020/3/23~)、NASDAQ100は約133%(2020/3/20~)上昇している。両指数ともにコロナ・ショック前の水準を大幅に上回った

コロナ禍においても株価が上昇を続けたのは、失業手当の上乗せや給付金などが十分に消費者に行き届き、行動制限下でもアマゾンで買い物、Netflixで視聴、ZOOMで会議などが増え続け、グロース株相場を支えたからだ。一方で、国内旅行などが徐々に回復するなど、2021年初にはバリュー株の押し目買いも見られた

2021年の1~3月(上図枠囲み)に長期金利が1.0%程度から1.7%程度まで上昇した時にグロース株が下押ししているが、この時、市場では短期的に金利だけ上昇して企業利益はインフレでも上昇しないという錯覚が起こり、一時的にグロース株が不利になったようだ。しかし、インフレを背景とした金利上昇であれば、価格支配力があるグロース株が有利になるので、長期的にグロース株の相対リターンは回復するだろう。

2022年:変異株リスクもあるが、財政に支えられた消費拡大が続くと想定

インフレ率はしばらく高い水準が続くが、徐々に穏やかになろう。現時点では、コロナ禍当初のインフレ率低下からの急回復に加え、短期的な供給ショックが起きてインフレ率が高く見える。もちろん供給不足で価格が上がる理由は、背後に強い需要があるからだ。トランプ前政権とバイデン政権による個人への一時金支給や失業手当の上乗せで、個人はモノを買う余力が十分あるといえる。しかし、供給ショックはその多くがコロナ禍によるもので、新たな変異株に有効なワクチン追加接種などで1〜2四半期程度で正常化に再び向かい始めると想定する。供給ショックが短期的にインフレ率を高めているのであれば、コロナ禍からの正常化とともに、供給ショックによるインフレは影を潜め、強い需要を背景とした健全なインフレのみが残るとみている。需要の押し上げは財政効果が途切れるまで、という意味では一時的だが、小売売上といったトレンドとしての需要増が需要低下を抑制する役割を果たすとみている。くれぐれも1%台のインフレ率の米国で、FRB(連邦準備制度理事会)のインフレ・ターゲットが2%であることを思い出していただきたい緩やかなインフレは経済や企業にとって望ましい環境であり、むしろデフレ懸念のほうが文字通り「懸念」だったはずだ。インフレ・ターゲットの2%達成は、コロナ禍からの正常化が実現した後になる可能性が高く、現実には2023年に入ってからとみている。

長期金利は、落ち着いた動きで1.8%程度への緩やかな上昇となろう。そもそも、供給不足によるインフレとFRBのテーパリング(量的緩和の縮小)前倒しや政策金利引き上げとの想定に対して、残存年限が2年から10年の米国債利回りは、現時点で上昇していない。つまり、現時点で、米国債券市場は目に見えるインフレ率の上昇が短期で収束し、中長期にはそれほど激化しないとみている、ということだ。

株式市場は、グロース株優位になろう。今後、インフレ傾向が続き、金利が緩やかに上昇しても、グロース銘柄の利益拡大が追随し、市場参加者も錯覚から目覚めるとみている。米国のGDPに占める情報通信機器の設備投資の比率は高く、近年はその水準を高めている(左図)。これは、米国の成長がインターネット企業の成長とその需要としてのサーバー投資などによって支えられていることを示している。さらに、インフレ環境下でのインターネット関連企業は、一般に価格支配力が強いと期待される。

総じて米国経済は、今後もインターネット関連サービスやその関連のハードウエア投資などにけん引される可能性が高い。さらにカーボン・ニュートラルなど環境関連においても、電気自動車や自動運転とそれに関わる人工知能(AI)などソフトウエア技術で、米国は世界をリードし続けるとみている。企業の変化の速さで、米国は日欧を凌駕していると考えている。

最大のリスクは、消費マインドの低下

消費者の行動がリスクとなる。短期的には変異株(オミクロン株など)の感染拡大などがあれば、消費者が消費を減らして貯蓄を増やす恐れがある。現時点では、米国の財政拡大による一時金などが消費者の手に渡ったものの、全てが使われたわけではない。2022年の経済成長を考えるとき、このお金が消費に回ることが想定される。過去には、ロックダウン(都市封鎖)でも消費が伸びたことから心配しすぎる必要はないと思うが、耐久消費財などを買い揃え終えた消費者が、住宅ローンを返済したり貯蓄を増やしたりする可能性が残る。

長期的にも消費者の行動がリスクとなる。リーマン・ショック後の米国では、消費者の貯蓄性向が高まった。元来リーマン・ショックは個人(家計部門)の負債の増やし過ぎにあったといえるので、その後に消費を抑えたことは仕方がない面もある。コロナ・ショックが同様の効果を持つ可能性はそれほど高くないが、今後も変異株が次々と発見されるといったことになれば、そもそも消費行動が変わってしまい、貯蓄が重視される価値観になる恐れは残る。しかし、これらのリスクが実現する可能性は低いと想定している。


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