Series2.「投信の仕組み」これだけは

8. 分配は別に「お得」じゃない
「自動一部解約機能付き」として必要な人だけ賢く利用しましょう。

投信には最低でも年1回、高頻度なものでは毎月の「決算日」が定められています。決算が来ると、私たち運用会社は運用報告書の作成など法定手続きを行ないますが、任意のアクションとして、分配金の払い出しを検討する場合があります。

年1回決算のものは積極的には分配しないものが多く、毎月決算のものは極力毎月安定的な分配払い出しをする投信が多いようです。しかし重要なことは、いずれの場合においても、「分配を出すと基準価額がその分だけ下がる」という事実。

投信の箱から現金を外に出すのですから、その分だけ純資産が減り、総口数で「割り算」した結果である基準価額が下がるわけです。簡単に言えば、一部解約しているのと経済的には何ら変わらないのが、投信における分配金です。

「今度の分配はいくら出るか楽しみ」とか「いつまでに買えば今月の分配金をもらえるの?」というお客様がいますが、おそらく根本的な勘違いをされています。今日買って、例えば数日後に分配を受け取れたとしたら、振り込んだお金をすぐに解約したのと同じことです。100万円買って10万円相当の分配が出たとしたら、投信の評価は90万円になっています。運用せずにすぐ回収するお金にまで申込手数料を支払ってしまったと考えると、分配直前の購入は損ですらあります

alt

したがって分配金を積極的に、あるいは安定的に出す投信は、お金を長期で増やす目的には適しません。販売会社によっては、分配金を 受け取らずに自動的に無手数料で同じ投信を買い付ける「再投資コース」を選ぶことができますが、受け取らないのであれば元々、毎月分配型など多頻度分配のものを選ぶのは合理的ではありません。

投信によっては、「年1回決算型/毎月分配型」などのように、同じ運用で違う決算の「コース選択」ができるものもあります。受け取る必要はないが商品性に魅力を感じる場合は、年1回決算型(資産成長型)を選べば良いでしょう。

以下の絵のように、預貯金を含めた全体設計の中で、バランスファンドによる「ぶれない土台」、長期で大きく増やすための「株式の柱」をセットした後に、それらを途中売却しないで済ませるためにも、定期的な現金創出のために「インカムの器」を持つという考え自体は悪いことではありません。全体設計と正しい仕組みへの理解のもと、賢く使っていきたいものです。

alt