セミナー実況中継

一度は元本割れする(?)のが投信やETF

いきなりで何ですが、(MRFなどを除けば)投信やETFは一度は元本割れする商品です。こう言うと皆さんビックリされるんですが、残念ながら概ね事実です。買ったその日がたまたまそれ以降の上昇の出発点だった(買った日からずっと上がり続けるスタートの日だった)という「奇跡の人」でない限り、明日なのか1年後なのか10年後なのかは分からないけれど、いつか今日より下がる日を経験することになります。だって、毎日値段が上がったり下がったりするんですから。

しかも、ちょっと言いにくいのですが、最初から元本割れしてしまっている。というのも、投信やETFを買う時って手数料がかかる場合が多いんです。それって手数料分、最初から元本割れしているのと同じですよね。

取得時の費用の分だけ元本割れスタート

少し脱線しますが手数料について、ちょっとだけ触れておきます。まず投信やETFには手数料が大きく2つあります。ひとつは買う時にかかる手数料。投信の場合は、販売会社に払う「購入時手数料」、ETF(上場投資信託)の場合は、証券会社に支払う「売買委託手数料」になります。もうひとつが保有している間にかかる「信託報酬等」。

投信の場合、「購入時手数料」は買う時に払う手数料ですが、別途支払うのではなく投資金額の中に含まれることが多いです。商品によって異なりますが、大体1%から3%位。つまり100万円持って行って買うと1%なら99万円とか、3%なら97万円からスタートするわけです。ETFの場合、証券会社の料金プランによってさまざまですが、例えば、100万円相当分を買うときには500円程度の「売買委託手数料」がかかります。だから「最初から元本割れしている」と言ったんです。あ、もちろん手数料には消費税がかかるので概算ですよ。

ちなみにこの手数料、私達運用会社には一銭も来ないんです。購入時手数料や売買委託手数料は、販売を担当する販売会社、銀行とか証券会社に100%行くお金ということです。

信託報酬 = 管理料

もうひとつの手数料が「信託報酬」です。お客様がその投信やETFを持っている間、つまり私達が運用をしている間中ずっと、ちょっとずつ日々の運用資産の中から頂戴していく、いわば管理料です。運用会社の他、投信やETFの中身をしっかり保管してくれる信託銀行と、投信の場合のみ連絡窓口としての販売会社で振り分けます。実は私達運用会社の収入はこれがすべて。このお金で、運用にかかる経費からオフィスの家賃や私の給料まですべてを賄います。

商品により異なりますが、投信の場合は大体年率0.5~1%位、ETFの場合は大体年率0.1%~1%位です。例えば100万円分の投信を1年間ずっと持ってくださったとしたら、年間で5千円から1万円を管理料として引かせていただきます。追加で払っていただくのではなく、お預かりしている資産から日割りで引かせてもらっています。1/365ずつのように。

極めて透明な金融商品が投信やETF

主なコストはこの2つで、それ以外は、変な言い方ですけど「損も得も」すべてお客様のものとなるのが投信やETFです。ある意味、これ以上透明性の高い金融商品はないと私は思っています。

毎日「基準価額」という投信の値段が発表され、定期的に中身を運用報告書という法定書類で開示します(ETFの場合はマンスリーレポート等で運用状況を開示)。どんな株式や債券をどれだけ保有していますとか、こういう取引をしました、とか。会社でいえば、毎日決算発表しているようなものです。そしてコストはあらかじめ決まっていて、予想以上に運用が良かったからといって、約束にない管理料の値上げをしてお客様の手取りが少なくなったりはしない。

「ガラス張り」の金融商品

いわばガラス張りな商品だと思うんです。確かに元本は保証されません。でも、だからこそ保証を受けるための費用を負担しなくていい、つまり利益はすべて100%お客様のものとなる。

一方の預貯金は決まった利息を約束しますが、お客様のコスト、つまり銀行側の利益のことは教えませんよね。決まった利息がもらえるからそれでいいんです。でも、私達の預貯金を使って企業に貸出したり国債で運用したりして、実は銀行としてすごく大きく利益が上がったとしても、その分は資金の出し手である私達には還元されません。その代わり、不良債権などで大きく損をしていたとしても、それを預貯金者には言いませんし預貯金金利が減らされることもありません。やっぱり根本的な構造が預貯金と投信やETFは明らかに違うんです。

とはいえ、さっきも言ったように、たまたま「その後の大底」で買わない限りいつか一度は元本割れする投信やETF。やっぱり大きな利益がなくても利息を約束してくれる預貯金の方がいいですよね。私自身も、こういう業界におりますが実は保守的な人間でして、預貯金の方が好きです。大学出た後証券会社に就職して10年ほど営業をしたのですが、その間中ずっと郵便局の定額貯金と住宅公庫の財形貯蓄をやっていました。ある時先輩にバレまして、「自分で株を買っていないとは、それでも証券マンか!」とすごく怒られました。でも私は、仕事として株式は扱ってるけど、自分のお金については今はまだ「タネ金」を貯める段階だから預貯金でいいんだ、と思って方針を変えませんでした。

でもある時私は、「株式を選んだりそれをずっと見続けるのは性に合ってないから嫌だが、せめて投信で投資を始めないといけないな」と思うに至ります。そして、私にとっては勇気のいる金額の預貯金を崩し、同時に思い切った金額の積み立てで投資信託を始めます。なぜこの「方針転換」が私の中で起こるに至ったのか。次回はその辺りのことを少し話しますね。