大切なのは「大ざっぱで楽観的」でいる努力

経済は右肩上がり ― ある意味「宗教」かも

自ら定めた目標水準に気持ちをフォーカスする逆転の発想によって、日々の変動というストレスへの耐性を増し、投資を成功させて最後に笑いましょうという話をしてきました。ところで、その考え方をするためには、「時間をかければ証券の価格というものは上がるものだ」、あるいは「経済っていうのは右肩上がりなものだから、それを反映する証券市場も本来右肩上がりのはずだ」という考え方への同意が必要になると思います。いわば「経済は右肩上がり教」という宗教への信仰です。不謹慎とお叱りを受けるかもしれませんが、投資というものが、行なっている最中は心が揺れることが多く、何かを信じないとやってられないストレスがあるものだという意味では、やっぱり宗教に似ていると思います。

とくに株式についてはその側面が強いと言えます。下のグラフを見てください。グラフの実線は世界株価指数といって、世の中の主要諸国の株式の値動きを総合的に表すものです。途中2回ほど大きく下がっていますが、基本的には一貫して上がっていますね。そして、面で色を付けている部分は、世界全体の経済規模を表しています。

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  • IMF「World Economic Outlook Database, October2018」および信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成
  • GDPのユーロ圏は1991年、ロシアのデータは1992年から  2018年以降は国際通貨基金(IMF)の予測、世界株価指数はMSCI ACワールド指数(配当込、米ドルベース)、期間は1987年12月末~2018年12月末
  • グラフ・データは過去のものおよび予測であり、将来の運用成果等を保証するものではありません。

GDP(国内総生産)というのを聞いたことがあるでしょうか。世界全体のGDPの実額がこの面で表した部分です。基本的にこれも右肩上がりで増えていますね。つまり世界全体で見れば、経済はずっと大きくなってきたということです。

もうお気付きと思いますが、このグラフが興味深いのは、実線と面とが概ねリンクして動いている点です。株価は経済成長とまさに歩調を合わせるようにして動いてきていますよね。GDPの方は2023年までの予想値が入っていますが、株価は2018年12月末まで。ということは、世界経済がこの予想通りに成長していくなら、大ざっぱに言って世界の株価全体も上がっていくと考えていいのかなと思えます。

世界経済の成長≒株価の成長

このグラフで気付くべきポイントはまだあります。それは、短期間で見ると、両者のリンク関係が壊れている時期があるという点です。グラフの2000年頃を見て欲しいんですが、経済成長の角度の割にずいぶんと株価が上昇していますよね。覚えているでしょうか、ITバブルと後から言われたあの頃ですよ。世界中で「.com(ドットコム)」という社名がついた企業の株が、ただそれだけで上がりました。たとえ赤字であっても。その後ITバブルははじけて結局元通り、というか落ち着きどころにまで下がって止まります。

2008年頃の株価も急落していますね。いわゆる「リーマン・ショック」の頃のことです。ただその下落も、GDPの減り方からすると下げ過ぎだったのか、2009年を過ぎた頃から反発していますね。そして現在に至っています。

世界経済は常に何かしらの試練を受けてきました。しかしどの時も皆必死になって問題を克服し、経済は成長してきました。これからもきっとそうなんだろうなと、私は大ざっぱに、楽観的に考えています。だって経済というものが人の営みの総体であり、人というのが「もっと豊かになりたい」っていう欲の塊である以上、やはり経済は成長するんだと思うわけです。

人に欲がある限り、経済は右肩上がり

携帯電話では電話さえできればいいと言っていた75歳の私の母も、今じゃスマホで孫とやりとりをしています。かくいう私も新しいスマホの機種が出たら欲しいと思いそうだし、そのうち4Kのテレビに替えたいと言っている気がします。あるいは最近よく耳にする「フィンテック」というヤツですが、数年後には日本でも、お店で現金を出す人が珍しくなっているんじゃないでしょうか。

モノがあふれる日本でもそうですが、すごい速さで豊かになっている新興国などでは、比較にならないくらい皆が「もっと良いモノが欲しい。良い暮らしがしたい」と思っているはずです。そんな風に欲深い私達を相手に、世界中のメーカーやサービス企業はどんどん仕掛けてきます。さっきの4Kテレビで言えば、今はその倍の解像度を持つ8Kという話も耳にします。そんなの本当に必要なんでしょうか。違いが分かるんだろうか。それでも私達人間に欲があり、企業がそれに応えるべく頑張る。ミクロで見れば成功する商品と失敗する商品があり、栄える企業と滅びる企業はあるんでしょう。でも総体としてはきっとプラスです。そしてその営みが経済を大きくしていく。

それら企業が利益を伸ばすなら、その株価にはやはり上がる力が働きやすいと考えていいと思います。相当ざっくりした考え方ですけど、こんな風に「株はやはり上がるもの」と単純に信じることができなければ、株式が1%でも入った投信やETFを買うべきじゃありません。そうした経済や企業の利益との関係性を信じることなく株を買おうとすると、単に「株価の値動き自体を買う」行為となっていきます。裏にある企業の努力や経済の本質などに思いを馳せる必要はなく、ギャンブルと同じ感覚で、他の市場参加者との心理戦、表現は悪いですが「政治経済を語ったバクチ」をすることになります。

株はやはり上がるもの

言うまでもなく、投信やETFの中身で私達運用会社が行なっている投資は、そうした賭けではありません。ある意味「宗教」だと言ったように、頑張って利益を上げる企業の株価は上がるものだという信念のもと、株価と企業収益とのリンク関係に着目した投資を行なっています。

投信やETFを保有するお客様にも、同じような信じ方を持って欲しいと思っています。果たして8Kテレビが成功するかとか、新しいスマホはヒットするか、あのフィンテック企業のサービスは一般化するかといった調査分析は運用会社に任せてもらえばいいのですが、投信やETFを保有するお客様自身に本質的な、あるいは宗教的な部分への納得がないと、きっと途中途中のストレスに負けてしまうことになると思うんです。