具体的な「覚悟」を持っておくのは意味がある

「どれくらい動くか、特に下の方に」

さて、3つの投資資産については必要十分、というか、かなり深いところまで理解していただきました。原理原則的な大きな理解を持って、長期的な視野で付き合っていただきたいと思います。その際「とはいえ、どれくらい動くか、特に下の方に」というのは、長期保有で成功するための「前向きな覚悟」として持っておいてもいいかもしれません。

ここでご参考までに、株・債券・リートの過去のデータを見ていただきます。ちなみに過去のデータというのは、その時々の経済環境が違うので、それぞれの上昇率や下落率を平均化したところで大した意味を持ちません。過去20年の世界株式の年間のリターンが仮に平均で5%だとしても、+50%の年もあれば-50%の年があったかもしれませんよね。それを算数的に平均化しても、預貯金の利率のような「今年5%」を意味しないことは、ここまで読んでくださった皆さんならお分かりのはずです。

ですので、平均ではなく大きさの推移を見ていくことが有用です。まずは株式です。

株価指数の年間変化率

1年間で計測すれば、日本株は2001年の年初から年末までで20%値下がりした、2002年も18%値下がりした、でも2003年には24%も値上がりした、ということが分かります。ここ16年間では2013年が年間で51%上昇と一番大きかったですね。2008年の42%の下落はリーマン・ショックの年だからという面が大きいですかね。とまぁ、そんな感じで読み取れます。海外の株式については為替レートの動きも反映しています。もし海外の株価が下がったのに加え、為替が円高になったとしたら、日本人の私達から見るとダブルパンチでマイナスになったという具合です。

主に先進国からなる「海外株式」より「新興国株式」の方が値動きが大きいのが分かりますね。成長期待が大きい新興国の方が上昇も下落も大きくなりがちというのは、皆さんもイメージ通りではないでしょうか。

債券とリートも同じように計算しました。

債券・リート指数の年間変化率

こうして見ると、債券はやはり株に比べてマイルドですね。同時に「債券も結構動くもんなんだな」という印象も受けます。リートはというと、1年で30%とか40%など、時に株式並みに上がっていますね。2008年の下げがマイナス55%と大きかった背景は、先ほどお話した通りです。

債券とリートについても、海外の資産なので為替レートの変動分が含まれています。日本人である私達が海外に投資する場合、どうしてもこの為替変動リスクが発生しますが、私は「為替は原則分散で」という考え方をお勧めします。為替、つまりその国の通貨自体は利子も生みませんし、長く持てば上がるという性質もありません。なのに、どこかひとつの国の通貨だけで投資するのは結構大胆な賭けになってしまう可能性があります。ですから、海外に魅力的な投資資産があったとしても、ひとつの国・地域だけに投資するのはできれば避けたい。できれば複数の国・通貨に分散しておくのが望ましいと思います。