WE♡ETF1周年にあたって ETFセンター長インタビュー

  • 2019年10月7日

ETFセンター長インタビュー

今井 幸英(いまい こうえい)
日興アセットマネジメント ETFセンター長
1985年4月株式会社日本興業銀行入社。みずほフィナンシャルグループ(みずほ総合研究所、興銀第一ライフ・アセットマネジメント(現アセットマネジメントOne))を経て、2006年12月日興アセットマネジメントに入社、2008年8月よりETFセンター長。2018年11月よりETF事業共同グローバルヘッド、ETF事業本部長、ETFビジネス開発部長を兼務。長い運用商品開発の経験を活かし、ETFの開発、ETFビジネスの推進活動を行っている。

 

「WE♡ETF」は10月4日、おかげさまで1周年を迎えました。今回は、ETFセンター長の今井が考える「WE♡ETF」への思いやこれまでのETFの開発等についてインタビュー形式でお届けします。



少しでも多くの方々にETFの魅力をお伝えしたい

――「WE♡ETF」を立ち上げた意図は?

今井 「古い話になりますが、2001年、ETFの制度が導入されるということを聞いた時、低コストで透明性の高く、投資家にとって、とても魅力のある商品を提供できるようになることに興奮したことを覚えています。ETFは、今ではプロである機関投資家に浸透しましたが、個人投資家にはまだまだ浸透しておらず、認知度も低い状況です。そのような状況を少しでも改善し、より多くの人にETFを知っていただきたいという思いで『WE♡ETF』を立ち上げました。

日興アセットでETFに携わっているスタッフは、ETFへの思い入れ(愛)が強く、その思いをもってETFのご案内をすれば個人投資家のみなさまに届くのではないかということ、そして、このサイトを通じてETFについてご理解いただき、ETFっていいなと思っていただける方が少しでも増えたらいいなという願いを込めて、『WE♡ETF』と命名しました。」



――改めてETFの魅力とは何でしょう?

 

今井 「『低コストで透明性、値動きが分かり易い、管理が厳格』等、一般に言われていることも魅力なのですが、投資家本位、顧客本位のしくみであることではないかと思います。

ETFは証券会社を通じて売買を行いますが、東京証券取引所上場のETFであれば、基本、国内のどこの証券会社からでも取引が行えますし、取引所が開いている時間であればリアルタイムで売買できます。また、値段を決めた取引(指値取引)ができます。値段についても、投資の判断に必要な時価情報がリアルタイムに取れるため、『今いくらなのか?』を確認したうえで『この値段で買う』というように、投資家自身で主体的に運用に取り組むことができます。

その一方、ほったらかしスタイルの投資家にも相対的にコストは安いので、買ったままほったらかしていてもコストで運用パフォーマンスが大きく目減りすることもありません。ETFは、それぞれの投資家のスタイルに応じた、投資家が中心にある金融商品ではないかと思っています。」



――中でも、読者のみなさまに今一番お伝えしたいことは?

今井 「話題になった『老後資金2,000万円不足問題』によって、にわかに何か運用(投資)しないといけないといった気運が盛り上がっていると聞きます。日本の個人投資家の「貯蓄から投資へ」の動きがなかなか出てこないところで、ある意味、いいきっかけになるかも知れないと思っています。

しかしながら、運用(投資)を、値段の当てっこのように考えるような風潮があります。しかし、短期の値段の当てっこは当て続けるのは難度が高く、投資を本業としていない大多数の投資家のみなさまが大事な時間を多く使ってしまい、豊かな本来の生活に影響がでては元も子もなくなるとも考えられます。

投資を短期的なものとして捉えずに、運用資産(株や債券)が時間の経過とともに成長する特性に着目して、中長期の運用を考えていただければと思います。その際に、分散投資が手軽に行えるETFであれば、中長期運用にもお役立ていただけるのではという思いも持っています。」



資産運用にお役立ていただけるような商品の開発や改良を行っていきたい

――日興アセットのETFの特徴はなんでしょうか?

今井 「2007年後半にETFを組成する仕事を始めました。その頃からETFの投資家本位のしくみに注目してきた中で、中長期運用を実践している年金基金*の運用をETFで提供できたらいいなと思っていました。

現行の公的年金の基本ポートフォリオは、日本株式、日本債券、外国株式、外国債券です。現在の日興アセットのETFの商品ラインアップを見ていただくと、日本株式、外国株式、外国債券、日本REIT、外国REITとなっており、年金基金のような運用を実現するためのETFをご提供しています。日興アセットは、日本のETFの発行会社の中で、早くから資産運用に必要な基本的なETFを取り揃えてきた会社です。」

*年金基金は年金加入者から掛け金を預って運用を行っており、必要な利回りを確保するために長期的な運用を行っています。日本の公的年金基金である「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」は、「長期的な観点から安全かつ効率的な運用」を行うための基本ポートフォリオを開示しており、四半期ごとに公表しています。



――ETFを立ち上げてきた中で、苦労話などのエピソードがあれば教えてください。

今井 「ちょうど10年前の2009年9月、海外の先進国の国債に投資をするETF『上場インデックスファンド海外債券(FTSE WGBI)毎月分配型(1677)』を設定しました。この当時、日本のETFが直接諸外国の債券を保有した場合、外国でかかる税金の問題がありました。コストがかかるものの、手っ取り早く解決するために指数連動の仕組債を介して投資するスキームにしようか悩んでいました。しかしながら、前年にリーマンショックという大事件があって、仕組債の発行体の信用リスクが顕在化して仕組債の売買が滞るということがありました。そこで詳細を確認するために、仕組債の英文の目論見書の読み込みを徹底的に行いました。ちょうど、夏休みの日程にあたっていたので、滞在先の八ヶ岳の貸別荘で読み込みをしましたが、隣で子供が一生懸命に夏休みの宿題に取り組んでいた記憶と相まって忘れられない経験になりました。結論としては仕組債を使うのを止めて、税金で問題が起きそうな国債はユーロ債で代替することにしました。

現在では、その問題は解決していて、直接、各国の国債に投資をしています。誰もやったことのないものを最初に手掛けると、参考とする先例が無いので、自分自身で調べるしかなく、このことが深くETFの仕組みを理解できるきっかけになったと思っています。」



―最後に、読者のみなさまへのメッセージをお願いします。

 

今井 「日興アセットマネジメントは、2001年の日本での本格的なETF制度の導入時からETFの組成・運用を行ってきました。ETFの制度やとりまく環境の変化に合わせて、新商品の開発だけでなく既存商品の改良も行っています。これからも投資家のみなさまにより良い資産運用ツールとしてのETFをご提供させていただければと考えています。これからも日興アセットマネジメントのETFをよろしくお願いいたします。」