『世界のエリート投資家は何を考えているのか』

世界のETFニュース

  • 2019年08月30日

『世界のエリート投資家は何を考えているのか』という著書がある。著者であるアンソニー・ロビンズ氏が、ウォーレン・バフェット氏や、ロバート・シラー氏などのカリスマ投資家からノーベル経済学賞者まで幅広い金融業界の偉人達にインタビューして得られた貴重な情報が詰まっている。著書の中で話題となったのが、世界最大規模のヘッジファンド、ブリッジウォーターを率いるレイ・ダリオ氏が初公開した個人投資家向け「黄金のポートフォリオ」というものである。

1.世界最大規模のヘッジファンドを創り上げたレイ・ダリオとは

日本では、ウォーレン・バフェット氏やジム・ロジャーズ氏らと比べると、レイ・ダリオ氏はまだ知名度が低いかもしれない。しかし、ダリオ氏はブリッジウォーター・アソシエイツという世界最大規模のヘッジファンドの創設者であり、その運用資産総額は1600億ドル(約17兆円*)にも上り、金融業界の中では「投資界のスティーブ・ジョブズ」という異名を持っている。

ダリオ氏は、ハーバード・ビジネス・スクールを経て金融業界へ、その後、若干26歳でマクロ経済のレポート販売を行うブリッジウォーターを設立した。ダリオ氏のレポートが好評だったため、世界銀行の職員から資金を預かってくれないかと持ちかけられたことをきっかけに、1985年にブリッジウォーターは資金運用会社に転進した。

その後、ブリッジウォーターは世界最大規模のヘッジファンドへの道を歩んでいった。そんな中、2008年の金融危機がダリオ氏の名を一躍有名にした。ダリオ氏は2007年から顧客向けレポートで金融危機を予見しており、その後、実際に米国住宅バブルが崩壊し世界的な金融危機に見舞われた。

*1米ドル=106円で換算(2019年8月21日時点)

2.レイ・ダリオが提案する個人投資家の「黄金のポートフォリオ」とは

投資業界の偉人であるダリオ氏が公開した「黄金のポートフォリオ」と呼ばれるのが、以下の配分で各資産に分散投資するというものである。個人投資家でも実現可能なポートフォリオであり、どんな経済環境にも対応したポートフォリオだという。

株式(S&P500もしくは他のインデックスファンド):30%
長期米国債(20年から25年満期):40%
中期米国債(7年から10年満期):15%
金:7.5%
商品取引:7.5%

注目された点は、株式は30%であるのに対して、債券比率が55%と高くなっている点である。ダリオ氏は、債券と比較して株式は3倍のリスクを抱えるという主張から、債券比率を高くしてリスクバランスの取れたポートフォリオを構築している。このポートフォリオであれば、リーマン・ショックのような状況にも、資産価格全体は大きく下落しないという。

このポートフォリオに対して実績検証が行われており、1984年から2013年の30年間では年平均利回りは手数料控除後に9.72%、30年の期間のうち86%以上の期間で利益を上げたという。また、最も損失が出た2008年は、S&P500の損失がマイナス37%であったのに対して、黄金ポートフォリオはマイナス3.93%だったという。利益を着実に出しており、経済環境の悪化に対しても損失を限定していることが示されている。

3.日本版の黄金ポートフォリオ

ダリオ氏が提示した黄金ポートフォリオは、米国投資家向けのものであるため、日本投資家には注意が必要である。本書の解説を行っている山崎元氏が日本の投資家向けにアレンジした日本版のポートフォリオを紹介している。

国内株式:15%
外国株式(先進国)為替ヘッジなし:5%
外国株式(先進国)為替ヘッジつき:10%
金(ETF):10%
J-REIT:5%
長期国債:20%
個人向け国債(変動10年):20%
外国債券 為替ヘッジつき:15%

株式は30%であるのに対して、債券は55%と比率が高くなっている特徴は「日本版のポートフォリオ」でも変わらない。また、外国資産も組み入れつつも、為替ヘッジをつけることで為替リスクを抑えたポートフォリオとなっている。

4.黄金ポートフォリオ運用を実践する際の注意点

本書の著者は、「黄金ポートフォリオ」の投資を実践する際の注意事項も挙げている。


①運用コストの低いインデックスファンドやETFで最も効率がよく、経費の低いファンドの選択を心掛けること
②最低でも年1度、ポートフォリオのリバランス(資産配分比率を当初設定に戻す)を行うこと
③非課税口座(日本ではNISAやiDeCo)による節税効果を最大限享受した投資を行うこと

5.まとめ

資産運用をする際の参考として、世界最大規模のヘッジファンドを率いるレイ・ダリオ氏が提示した「黄金のポートフォリオ」を紹介した。実際にポートフォリオを実現する際には運用コストの低いETFの活用について検討をしていただきたい。


出所:アンソニー・ロビンズ. 世界のエリート投資家は何を考えているのか. 三笠書房, 2017, 43ページ,322ページ,333ページ,335ぺージ,336ページ,338ページ,347ページ,375ページ,376ページ


●当資料は、日興アセットマネジメントがETF(上場投資信託)についてお伝えすることなどを目的として作成した資料であり、特定ファンドの勧誘資料ではありません。また、当資料に掲載する内容は、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。
●掲載されている見解は当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。また記載内容の正確性を保証するものでもありません。
●投資信託は、値動きのある資産(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがあります。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。