金融数学シリーズ「分散投資のすばらしさ」

金融数学シリーズ

  • 2019年10月11日

分散投資って何がいいの?

ETFをはじめとする金融商品に投資をしている(あるいは投資をしようとしている)皆さんは、「分散投資」という言葉を一度は耳にしたことがあると思います。分散投資が大事だ、卵を一つのカゴに盛るな、一つの銘柄にすべての資金を集中させない方がいい、等と。では、具体的に分散投資にはどんなメリットがあるのでしょうか?クイズ形式で見てみましょう。



分散投資によってリターンやリスクはどうなる?

あなたの目の前に、同じくらいのリターンとリスクが見込める2つの株式があるとします。迷った末、あなたは資金を半分ずつ使って、両方の株式を購入する(分散投資をする)ことにしました。資金すべてを使ってどちらか1つの株式を購入した場合と比較すると、分散投資によってリターンやリスクにどのような効果が生まれるでしょうか?

①リターンが上がる

②リスクが下がる

③リターンが上がってリスクが下がる







正解は・・・②リスクが下がるです。

分散投資をすることで、リターンは上がるわけでも下がるわけでもありません。大事なことは、リターンをそのままにリスクを低減することができるということです。

以下でもう少し詳しく、数式を使って見ていきましょう。

分散投資で実現できるのは、「ローリスク・ハイリターン」

株式やETFに限らずとも、皆さんが投資をする場合、ローリスク・ローリターンとか、ハイリスク・ハイリターンといった言葉をよく耳にするのではないかと思います。一般的に、リスクとリターンはトレードオフの関係にあって、リターンを追及するとリスクが大きくなり、リスクを低減しようとするとリターンが小さくなります。しかし、分散投資によって、リターンをそのままにリスクを小さくできるのです。以下でもう少し詳しく、数式を使って見ていきましょう。

今、あなたの目の前に2つの株式A、Bがあり、それぞれのリターン・リスクを以下のように置きます。



株式A:(リターン,リスク)=γaσa

株式B:(リターン,リスク)=γbσb



※一般的に、リターンとは将来期待される収益率、リスクとは実現した収益率のリターンからのブレのことを表し、標準偏差でこれを表現します。

ここでは簡略化のため、株式Aも株式Bも同程度のリスクとリターンを持つ、つまり、


γa=γb=γ,σa=σb=σ


であることを仮定します。

株式Aへの投資比率wa 、株式Bへの投資比率wbとして wa>0wb>0wa+wb=1、株式A,Bに投資するポートフォリオを構築した場合、ポートフォリオの(リターン,リスク)を γpσpとすると、これらは株式A,Bのリターンやリスクと比較してどのようになるでしょうか。

まずはリターン γpです。


γ p = w a γ a + w b γ b = w a + w b γ = γ


となるため、ポートフォリオのリターンは株式A,Bのリターンと変わらないことが分かります。

次にリスクです。こちらは少し複雑ですが、標準偏差σpの2乗について見てみましょう。


σ p 2 = w a 2 σ a 2 + w b 2 σ b 2 + 2 w a w b ρ ab σ a σ b


となります。

ρabとは、株式Aと株式Bのリターンの相関係数であり、-1ρab1となります。

もう少し上式を変形させてみましょう。


σ p 2 = w a 2 w a 2 + w b 2 w b 2 + 2 w a w b ρab σ a σ b = w a σ a + w b σ b 2 2 w a σ a w b σ b ρab - 1
= w a + w b σ 2 + 2 w a w b σ 2 ρab - 1 = σ 2 1 + 2 w a w b ρab - 1


ここで、黄色くハイライトした部分に注目してみましょう。


w a > 0 , w b > 0 , ρab - 1 0


より、


2 w a w b ρab - 1 0


となるため、


σ p 2 = σ 2 1 + 2 w a w b ρab - 1 σ 2


となり、ポートフォリオのリスクは、必ず株式A,Bのリスク以下となることが分かりました。

(なお、等号成立条件はρab=1、つまり株式Aと株式Bが完全に相関した値動きをする場合となりますが、現実世界において異なる会社の株価が完全に相関することは有り得ないため、ポートフォリオのリスクは、必ず株式A,Bのリスクよりも小さいといえます。)

また、少々余談になりますが、分散投資効果をより大きくする(=リスクをより小さくする)ためには、黄色ハイライト部分の各要素について次の①②のような条件が成立していることが望ましいです。

wawbを最大化 ⇔ wa=wb=12:なるべく「均等」に分散投資を行う

ρabを最小化 :なるべく値動きが逆相関する(少なくともあまり相関しない)銘柄を選択する

少しわき道にそれましたが、以上より、分散投資をすることによって、リターンを維持したままリスクを低減できる、つまり「ローリスク・ハイリターン」な投資が可能であることが分かりました。

分散投資対象は多ければ多いほどいい

次に、分散投資をするといってもいくつくらいの銘柄に分散投資をすればよいか、考えてみましょう。

今、あなたの目の前にn個の株式があり、株式i 1in のリターン・リスクを以下のように置きます。

株式i:(リターン,リスク)=γiσi


ここでも簡略化のため、以下の3つの条件を仮定します。

①n個の株式すべてが同程度のリスクとリターンを持つ


 

γ1=γ2=・・・=γn=γ,σ1=σ2=・・・=σn=σ


 

②n個の株式からどの2銘柄をとっても値動きが相関しない


1i,jn 及び ijを満たすすべてのi,jについて、ρij=0


③n個の株式に均等に投資をする

w1=w2= ・・・ =wn=1n

このとき、ポートフォリオのリターンやリスクはどのようになるでしょうか。

まずはリターンγpです。


r p = i=1 n wi ri = i=1 n 1 n r = r

となるため、リターンは投資する銘柄数nによらず一定です。


次にリスクです。再度、標準偏差σpの2乗について考えてみましょう。


σ p 2 = i=1 n j=1 n wi wj ρij σi σj = σ2 n2 i=1 n j=1 n ρij

ここで、先ほどの条件③よりi≠jであればρij=0、またi=jであればρij=1であるため、上式をさらに変形できます。


σ p 2 = σ2 n2 i=1 n j=1 n ρij = σ2 n2 n = σ2 n
 

これは、投資する銘柄数nが大きくなればなるほど、リスクが少なくなることを示しています。

※nが大きくなればリスクが0に近づくように見えますが、これは条件②③で強い仮定(現実世界では成立しづらい仮定)を置いているためです。

以上より、分散投資をする際は、なるべく多くの銘柄に投資をすると、よりリスクが小さくなることが分かりました。

分散投資を実現する簡単な方法=ETF

ここまでの話で、分散投資の効果についてご理解いただけたかと思います。しかしながら現実的には、個人投資家の皆様が分散投資を行うには、「まとまったお金」が必要です。例えば、東京証券取引所に上場する銘柄のうち時価総額上位10社に分散投資をしようとすると、各銘柄最低投資金額で投資をするとしても、下表のとおり「約1,365万円*が必要です。

時価総額上位10社に分散投資した場合

※最低投資金額は、2019年8月30日終値×最低売買単位。手数料などの費用は含みません。
※上記銘柄については、個別銘柄の取引を推奨するものでも、将来の組入れを保証するものでもありません。

そんな分散投資を簡単に実現するためのツールが、ETFです。投資信託と同じようにたくさんの投資家の皆様から集めたお金をファンドで運用するため自動的に分散投資を行うことができるとともに、株式と同じように銘柄コードがあり証券口座を通じて売買をすることができます。

例えば、弊社の上場インデックスファンドTOPIX(1308)は、東証株価指数(TOPIX)を構成するすべての株式(全2,144銘柄)を保有して運用を行っていますが、こちらの最低投資金額は「約15万円*となっております。

分散投資を簡単に実現するためのツールとして、是非ETFを利用してみてください。

*2019年8月末時点


●当資料は、投資者の皆様に弊社が運用するETFへのご理解を高めていただくことを目的として、日興アセットマネジメントが作成した販売用資料です。
●掲載されている見解は当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。また記載内容の正確性を保証するものでもありません。
●投資信託は、値動きのある資産(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがあります。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。