ホラー映画で考える投資のリスクとの付き合い方

ホラー映画で考える投資のリスクとの付き合い方

    2019年01月10日

投資をしない理由は、「怖い」から

「何故、投資をしないか」という質問へのよくある回答で、リスク(損失)が嫌だからというのがある。では、この投資のリスクへの嫌悪感を克服してもらうにはどのようにしたらいいのかと思案していて、リスク=恐怖と定義した時に、何故、人はホラー映画を見るのだろうかと考えた。

リスク=恐怖は実は楽しいもの?

何故、人はホラー映画を見るのだろうか。NHKの人気番組「チコちゃんに叱られる!」 に出てきそうな質問だが、脳神経科学的には「怖いもの見たさ」は、恐怖によって活性化する脳の神経系が快感に関連する神経系と同じであることによるとのこと。生命の危機に及ぶ危険(恐怖)を理解、回避することに報酬(快感)を与え、人間が生き残れるように仕向けることだとの説があるらしい。ホラー映画にはそもそも身体の危険が無いので、恐怖を感じることによる快感を得るためのものだそうだ。ただ、個人的にはホラー映画は苦手である。

一方、投資ではどうなのだろうと考えてみる。たしかに代表的な投資対象である株式の価格は、経済環境・イベント・投資家需給の影響を受けて激しく上下することがある。市場には「恐怖指数」と呼ばれる指数(VIX指数)があり、指数が高いほど投資家が市場に恐怖を感じているとされている。投資家の中には、値動きの大きいレバレッジ型のETFや高レバレッジのFX取引といったリスクが高く、恐怖度合の高い金融商品を好む個人投資家も一定の割合でいる。このような人たちは株価の急変動をドキドキハラハラしながら楽しんでいるような傾向があるように思われる。しかし、ほとんどの投資家は「できることなら、損はしたくない」という思いのはずだ。

幽霊の正体見たり枯れ尾花

投資理論では、リスクというのは、不確実性であり、価格変動の幅と表されている。必ずしも損失を意味するものではない。たとえば、リスクが年20%の投資をするということはどのような意味合いを持つのであろうか。100万円の投資をしたとして、80万円にも120万円にもなる可能性があるということである。しかしながら、リスクとは損失をすることだと理解されてしまっていることが多い。100万円の投資が120万円になって20万円儲かることよりも、80万円になって20万円の損失が出ることにフォーカスされているのである。たしかに、投資のような利得を追及する行為で損失が発生するのは苦痛に感じるが、冷静に考えてみたい。

株式のインデックス投資、ETF投資を考えてみる。会社は資本(元手)を調達する見合いに株式を発行する。会社は元手を使って事業を行い、得た利益をその株式の保有者(投資家)に対して分配し、残りを再投資し会社の価値を高めようとする。それらの会社への複合体投資が株式のインデックス投資になる。投資は基本的に収益が発生することが期待されるものであることが理解できよう。確率が半々である丁半博打とは性質がまったく異なるのである。くわえて、インデックス投資やETF投資の場合は、企業への複合体投資=分散投資であり、1社だけに投資をしているよりもリスクが抑えられることが知られている。 たしかに投資にはリスクがあるが、“冷静に眺めると、怖いと思っていたものがその正体を知れば怖くはない”ということを意味する「幽霊の正体見たり枯れ尾花」ではないだろうか。