【ETFスペシャル対談】経済評論家 山崎元氏×日興アセット ETFセンター長 今井幸英(前編)

  • 2020年1月7日

ETFスペシャル対談

【2024年1月追記】
2024年1月1日、山崎元さんは逝去されました。心から哀悼の意を捧げ、ご冥福をお祈りします。

日興アセットマネジメント 今井幸英

 

多数のメディアへの出演や資産運用関連書籍等を手掛ける経済評論家の山崎元氏と当社ETFセンター長の今井幸英が対談を行いました。ETFのメリットや活用法、これからの希望や展望等、前後編にわたってお届けします。

>>【ETFスペシャル対談】経済評論家 山崎元氏×日興アセット ETFセンター長 今井幸英(後編)



ETFが持つ合理性というのが評価ポイントなのでしょうね(山崎)
個人投資家もプロの投資家も同じように活用できるのがETF(今井)

――まずは、ETFのよいところについて、思いや意見を聞かせてもらえますか?

山崎元氏(以下、山﨑) 投資家の立場で言えば、手数料が安く、売買が透明で資産形成のツールとして利用しやすい点です。ETFは出始めの頃、信用取引に対応しているとか、業種別指数で細かな売買ができるといったトレード面の使い勝手が強調されがちでしたが、私はあくまで長期投資に適した商品性だなと感じました。“ETF”について、“イージーに・トレードできる・ファンド”というよりも、“いい・手数料の・ファンド”だと、ETFを紹介する際には強調しています。


今井幸英(以下、今井) 長年、運用の仕事に携わってきましたが、日本でETFがスタートした当時は、アクティブ運用が主流でした。ビジネスとして成り立たないという理由から否定的な意見が多くありました。しかし、私がETFから最初に受けた印象は、ETFは個人投資家にとって最大の福音ではないかということでした。縁あって現在ETFに携わることができ、非常にハッピーに思っています。投資のプロである機関投資家も活用するETFですが、まったく同じものを、同じ信託報酬率、同じ条件で個人投資家もETFが使えるのです。もっと多くの個人投資家の方々にETFの利点を享受してほしいと思っています。金融マンとして自信を持ってお客様にご紹介したい商品です。



――投資家の視点で、インデックス運用やETFの優位性はどのあたりにあるのでしょうか?

山崎 端的に言えば、ライバル同士の平均を持っていることです。よく、市場の効率性といった経済学者が語るような難しい話が持ち上がりますが、別に市場が効率的であろうがなかろうが、平均を持つことはゲームの戦い方として有利だからです。また、アクティブ運用は手数料が高すぎるものもあるので選択肢として難しいという点もあります。コストの面では、つみたてNISAの登場以降、公募のインデックスファンドでも手数料は下がってきていますが、ETFが有力な選択肢であることに変わりありません。


今井 公募のインデックスファンドとETFでは、それぞれに特徴がありますが、購入する際の利便性はETFの魅力のひとつだと思います。ETFは証券取引所に上場しているので、証券会社であればどこの証券会社であるかを問いません。その自由な感じがETFの好きなところでもあります。


山崎 それは私も実感として分かります。北海道で高齢の母親が暮らしているのですが、父親が亡くなった際に母親が相続したお金をどうするかで困ったことがあります。私の本を参考に、個人向け国債とインデックスファンドで運用するつもりでいたようですが、父親も口座を持っていた証券会社では対面でのインデックスファンドは取扱っていないというのです。ネット取引の口座もあったので、そちらで進めようかと思ったら、ラインアップが古くて、いいものがない。口座を他の証券会社に移すのも大変なので、何とかならないものかと悩んだうえで、選んだのがETFです。4桁のコード番号さえ覚えておけば母親でも注文でき、助かった思いがあります。

山崎氏


――ETFには運用商品としてどのような特色があるのでしょう?

今井 ETFが上場する際には、株式と同様に、証券取引所の厳格な上場審査が行われます。上場後の情報開示も厳しく、ETFの保有銘柄を日次で公表するなどの義務があります。その情報は誰でも見ることができますから、投資家は毎日ETFの中身を確認することができます。このような情報開示による透明性の高さもETFの特色と言えます。
また、市場で円滑に取引できるETFであるためには、マーケットメイカー*など市場関係者との連携も重要です。国内だけでなく、海外の機関投資家やマーケットメイカーのニーズに応え、英語での情報提供など、細かな整備を重ねてきました。同じ指数に連動するETFは、どれも同じだと捉えられがちですが、市場での流動性を確保するために気を配っています。
試行錯誤を重ねて改良を加え、投資家の使いやすさを追求してきたのが、当社のETFだと強調してお伝えしたいです。

*マーケットメイカーは、市場で流動性を提供することを主たる目的として、市場でETFの「売り気配」と「買い気配」を提示します。マーケットメイカーによって、気配値が常に提示されることで、高い流動性が確保でき、投資家が市場で売買をする際の利便性が高まることが期待されます。


山崎 流動性を心配する投資家は多いと思いますが、ETFの裏側の機微までは分からない。そのため、いざという時はETFじゃないほうがいいのではと思う人もいます。


今井 そうですね。一方で、ETFって流動性の拡張スキームだとも言われます。単純に個別株式をパッケージしたものがETFだとすれば、個別株式での取引機会に、新たな取引機会を加えた構造になっているので、流動性の上にもう1つ流動性を乗せた状態です。一般の投資信託の設定・一部解約による流動性に加えて取引所での流動性と市場外の流動性が活用できるETF は、実は流動性の高いスキームなのです。金融危機で株価が下落する中でETFに値段が付き続けた背景には、アービトラージ(裁定取引)をしている投資家が積極的に活用したことがあります。欧州の機関投資家がETFを好んで使う背景には、こうした経験があるからだと思います。


山崎 やはりETFが持つ合理性というのが評価ポイントなのでしょうね。資産運用にロマンを求めないからこそ、ウォーレン・バフェットも自分の妻には財産をS&P500指数のETFで遺すと言っているのでしょう*

*米国の著名な投資家であるウォーレン・バフェット氏は、自分の遺産管財人に対して自身の死後に資産の90%を米国の株価指数「S&P500」に連動するインデックスファンド(ETF)に投資するよう指示しています。


>>【ETFスペシャル対談】経済評論家 山崎元氏×日興アセット ETFセンター長 今井幸英(後編)

2015年、ETFセンター長の今井は、山崎元さんと著名ブロガーの水瀬ケンイチさんの共著本の全面改訂にあたり、同書に出演しないかとのお誘いを受け、お二人との鼎談(ていだん)に出演させていただきました。

▼ご参考
「全面改訂 ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド」(朝日新書)
山崎 元/水瀬 ケンイチ

▼当時の今井のコラムはこちら
コラム もっと知りたいETF「No.38 新ETFの開発ふたたび」(2015年11月11日)

山崎元

山崎 元(やまざき はじめ)
経済評論家。楽天証券経済研究所客員研究員。(株)マイベンチマーク代表取締役。
1958年北海道生。1981年東京大学経済学部卒業、三菱商事に入社後金融関係の会社に12回の転職を経て現職。
資産運用を中心に経済一般に広く発言。将棋、囲碁、競馬、シングルモルト・ウィスキーなどに興味。

今井幸英

今井 幸英(いまい こうえい)
日興アセットマネジメント ETFセンター長
1985年4月株式会社日本興業銀行入社。みずほフィナンシャルグループ(みずほ総合研究所、興銀第一ライフ・アセットマネジメント(現アセットマネジメントOne))を経て、2006年12月日興アセットマネジメントに入社、2008年8月よりETFセンター長。2018年11月よりETF事業共同グローバルヘッド、ETF事業本部長、ETFビジネス開発部長を兼務。長い運用商品開発の経験を活かし、ETFの開発、ETFビジネスの推進活動を行っている。