【ETFスペシャル対談】経済評論家 山崎元氏×日興アセット ETFセンター長 今井幸英(後編)
- 2020年1月9日
【2024年1月追記】
2024年1月1日、山崎元さんは逝去されました。心から哀悼の意を捧げ、ご冥福をお祈りします。
日興アセットマネジメント 今井幸英
多数のメディアへの出演や資産運用関連書籍等を手掛ける経済評論家の山崎元氏と当社ETFセンター長の今井幸英が対談を行いました。ETFのメリットや活用法、これからの希望や展望等、前後編にわたってお届けします。
>>【ETFスペシャル対談】経済評論家 山崎元氏×日興アセット ETFセンター長 今井幸英(前編)
ETFを好む投資家は、コース料理にするかアラカルトにするのか、自分で選びたい方なのだと思います(今井)
馴染みのレストランなら、お勧めされるがまま食事するのはもったいないです(山崎)
――個人が実際に、ETFを活用する際のアドバイスを聞かせてください。
山崎元氏(以下、山﨑) さくっと買って、後はじっと持つというのが基本だと思います。お金が必要になった際には一部を売却する。逆に投資できるお金ができた際は、追加投資する。低コストで保有できるし、TOPIXで運用するにしても、貸株*のサービスを利用すればその保有コスト(信託報酬)も回収できるほどです。また、買ったり売ったりする際も余計な神経を使わなくてすむのが、透明性が高いETFを持つ気持ちよさです。
今井幸英(以下、今井) リアルタイムで価格が把握できるのも、ETFの大きな魅力ですね。投資信託の基準価額は1日に1回ですし、取引するうえでは前営業日の古い情報である点が悩ましい。逆に少額や定額での積立投資であればインデックスファンドの使い勝手は高いと言えます。最近では積立投資でETFを取扱う販売機関も登場しているので、こうした動きにも注目してほしいと思います。
山崎 それと、分配金は要らないといった状況でもいちいち受け取った分配金を再投資しなくちゃいけないのは、ETFの面倒なところです。母親は、分配金の通知が来たら、証券会社の担当者に同じETFをその金額で買ってちょうだいと電話で依頼しています。
積立投資については、ドルコスト平均法の呪縛から早く解放された方がよいと思います。平均購入単価にこだわって意思決定するのは、やめましょう。確かにルールベースの投資は自分の決断に後悔しないという意味で行動経済学的にやりやすいのですが、必要なリスク量が分かっているのであれば、適切なタイミングが判断できない以上、今必要なリスクを取ってもいいはずです。つまり大事なのは、あくまで今の状態です。タイミングというプロセスを重視するよりも、今の状態が大事です。資産全体の中でリスク資産を何%持つかを決めて、もっと持てるのであれば必要な額を合理的に組み立てればいいだけです。すぐに投資を始めて、時間をかけてリスクプレミアムを貯めこむ発想が、運用の根本です。
*【貸株】証券会社の特定口座・一般口座にお持ちの個別株・ETFを貸出し、貸株金利を得るサービスです。毎月の金利収入を受け取ることができ、ETFの信託報酬分のコストを軽減できる効果があります。(2019年12月25日時点)
※将来の貸株金利の支払いおよびその金額について示唆、保証するものではありません。貸株サービスの詳細や注意点などについては、各証券会社のホームページ等をご確認ください。
※有価証券の貸付行為などにおいては、信用リスク(取引の相手方の倒産などにより貸付契約が不履行になったり、契約が解除されたりするリスク)を伴い、その結果、不測の損失を被るリスクがあります。お取引の際は、リスクを充分に認識・検討し、投資家ご自身で慎重にご判断を行なっていただく必要があります。
――“リスクプレミアムを貯めこむ”というフレーズを、もっと平たく表現できますか?
山崎 そもそもリスクがある資本に投資する際は、期待するリターンを補うように値付けされる原理が働きます。補われる上乗せ分がリスクプレミアムです。もちろん将来、絶対にリスクプレミアムが実現するわけではないので、適切な手法として分散投資や長期投資があります。分散投資された状態のポートフォリオを適正なリスクの額だけ長い期間持つという表現になります。
今井 株で言えば元手を増やす行動をしているのが株式会社です。とはいえ、成功する会社も失敗する会社もある。例えば、2017年度末で見ても、日本にある会社の7割方は収益が出ていません。けれども、東証に上場している会社の9割方は収益を発生させている。上場している会社は上場基準をクリアした優等生であり、企業の努力と工夫の成果である事業の利益やこれからの成長についていこうという考え方でもよいと思います。
山崎 企業も投資家も欲張りで合理的なのだと信用することですね。
今井 ある意味で、欲張りであることが問題意識の底辺であり世の中を変えてきたのだと思います。そう考えると、ETFも進化してきた金融商品の1つのかたちと捉えられます。
――最後にETFのこれからについて、希望や展望があれば聞かせていただけますか?
山崎 例えば、日本株に限っても日経平均やTOPIXなど指数は様々あります。それらの指数の利用の目的も市場の統計だったりデリバティブの原資産であったり、いろいろですが、これからは、運用として具合のいいポートフォリオだと思うものを工夫する余地があると思うんです。ただ、もろもろの条件は必要になるとは思いますが、十分な分散投資がされていて効率的に動くような、運用に特化した指数によるETFは、将来あってもいい気がします。今やインデックスブロガーの関心もベーシス(0.01%)単位の手数料の違いにまで及んでいます。指数提供会社への使用料が不要になる内製化したポートフォリオを工夫する余地はあると思います。
今井 そうですね。当社の上場インデックスファンドMSCI日本株高配当低ボラティリティという日本株のETFがあるんですけど、指数の中身は当社で作りました。一般的に知られた指数ってすでにETF化されているので、それ以外のところにこれからどんどん入っていくと思います。また、それをやっていかないと、やっぱり投資家の期待に応えられないんじゃないかなとも考えています。
山崎 余談ですが、私はマイベンチマークという会社を経営していて、いつか自分がよいと思う株式銘柄で構成した指数を自作したいと思っています。将来、誰か親切な人がそれをETFにしてくれたら嬉しいですね。
今井 ETFを好む投資家の方というのは、食事に例えると、コース料理か、アラカルトかを自分で選びたい方なのだと思います。さすがに素材まで選定するのは大変でも、食事の時間や食後の満足感を求めているような投資家の方々の使い勝手を追求したETFを、これからも提供したいと思います。
山崎 馴染みのレストランなら、お勧めされるがまま食事するのはもったいないですし、そんな方との食事はあまり楽しくないかもしれないですね(笑)。
>>【ETFスペシャル対談】経済評論家 山崎元氏×日興アセット ETFセンター長 今井幸英(前編)
対談直後のツーショット。偶然にも山崎様も今井もブルーのネクタイでした。
2015年、ETFセンター長の今井は、山崎元氏と著名ブロガーの水瀬ケンイチさんの共著本の全面改訂にあたり、同書に出演しないかとのお誘いを受け、お二人との鼎談(ていだん)に出演させていただきました。
▼ご参考
「全面改訂 ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド」(朝日新書)
山崎 元/水瀬 ケンイチ
▼当時の今井のコラムはこちら
コラム もっと知りたいETF「No.38 新ETFの開発ふたたび」(2015年11月11日)
山崎 元(やまざき はじめ)
経済評論家。楽天証券経済研究所客員研究員。(株)マイベンチマーク代表取締役。
1958年北海道生。1981年東京大学経済学部卒業、三菱商事に入社後金融関係の会社に12回の転職を経て現職。
資産運用を中心に経済一般に広く発言。将棋、囲碁、競馬、シングルモルト・ウィスキーなどに興味。
今井 幸英(いまい こうえい)
日興アセットマネジメント ETFセンター長
1985年4月株式会社日本興業銀行入社。みずほフィナンシャルグループ(みずほ総合研究所、興銀第一ライフ・アセットマネジメント(現アセットマネジメントOne))を経て、2006年12月日興アセットマネジメントに入社、2008年8月よりETFセンター長。2018年11月よりETF事業共同グローバルヘッド、ETF事業本部長、ETFビジネス開発部長を兼務。長い運用商品開発の経験を活かし、ETFの開発、ETFビジネスの推進活動を行っている。
記事内でご紹介したETFについて
1399 - 上場インデックスファンドMSCI日本株高配当低ボラティリティ (愛称:上場高配当低ボラティリティ)
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