神山解説

  • 2020年5月22日

vol.4 株価が回復傾向だが、日経平均やNYダウはすでに割高なのか



日米の株価は、実体経済と乖離して上昇しているのではないか?

「日米の株価が割高だ」と考える人が増えていますが、その背景にある考え方は二種類に分かれそうです。

ひとつは、「経済が悪化したのに株価が下がらない、つまり実体経済と乖離して株が上昇しているので、タイミングとして買わないほうがいいのでは」という考え方です。

コロナ・ショック以降、「世界恐慌以来の経済低迷」「リーマン・ショック並み、あるいはそれ以上に悪い」などといったニュースの見出しもあり、経済が悪化するのに、株価が下がらないのは奇妙だという感触を持つのは自然かもしれません。
しかし、株価は現在の状況ではなく未来への期待を示します。未来でも現在と同じ勢いで経済が悪化し続けるなら株価は下がるかもしれませんが、現状は新型コロナウイルス感染拡大防止のための世界的な行動制限がなくなる方向ですから、株価が下げ続けるのはおかしいと考えるほうが良いと思います。

今回は非常に激しいとはいえ、一時的なショックであると市場は見ており、世界恐慌やリーマン・ショックのように長い間続くと見ていないともいえます。1四半期でのショックの程度は世界恐慌以上の部分もありますが、未来を映す株価は「何年も悪いのか」を見ていると考えてもいいでしょう。いまのところ、何年も経済の悪化が続くとは見ていないといえそうです。

 

利益は下がったのに、株価の下がり方が足りないように見えるのだが?

もうひとつの考え方は、「利益は下がったのに株価が下がらない、つまりPER(株価収益率、株価÷利益)が高い」という考え方です。

確かに、今回のコロナ・ショック(感染拡大防止で行動制限したことで、世界中の需要が一時的に蒸発したこと)は、企業収益を大幅に悪化させます。しかし、株価は、その企業がある年度に赤字決算になるからといって普通はマイナスにはなりません。株価は未来を見ているので、その会社が今後何年も赤字を続け、資本を使い尽くしてしまうと想定されるときに理屈ではゼロになりえますが、そのうちまた正常に戻ると信じられるならば、将来の利益を考慮して株価が形作られます。

今回のように一時的で短いと想定されるショックでは、利益の低下ほどに株価が下がらないのはおかしくないのです。逆に言うと、現在の株価水準と2020年度利益ベースPERは、利益の低下が一時的だと見ているともいえます。

株価のイメージ

株価の動きがもつメッセージとは ~神山解説

日経平均株価は、2020年1月20日の24,083円からコロナ・ショックを織り込んで、いったん2020年3月19日に16,552円まで下げ、5月中旬では2万円程度に回復しています。いま市場が想定しているシナリオは、世界恐慌やリーマン・ショックよりも一時的(4-6月期)には厳しいが、未来を考えると正常化も視野に入っている(いろいろな指標の4-6月期で悪化した分の半分程度が7-9月期に回復し、その後来年中ごろまで緩やかに回復というイメージ)というものでしょう。

もしこの想定が正しければ、市場はこれから実際の回復を確認しながら元の水準を目指すことになります。経済と一時的に乖離しているように見える株価指数ですが、この後は経済回復が「本当に回復するのか」という疑念を取り除く形で回復すると見ています。16,500円台に低下したときは一時的・心理的混乱があったと思いますが、新型コロナウイルス対策のための行動制限とその期間が予測できるようになるにつれて、今の水準に戻ってきました。これからは、「それが確からしいか」で市場が動くと見ます。

仮に市場が想定しない新型コロナウイルス第2波による行動制限などの措置が取られるとなると、今度は金融危機の恐れが出てきますので、16,500円を抜けて下がる恐れも残っています。ただし、いまとなっては財政・金融政策は過去に例を見ないほど大型ですし、ウイルス対策についても人間の工夫・努力・英知に期待できますので、悪いシナリオの可能性は低いと見ています。



神山直樹

<解説者>
神山直樹(かみやま なおき)

日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト
2015年1月に日興アセットマネジメントに入社、現職に就任。1985年、日興證券株式会社(現SMBC日興証券株式会社)にてそのキャリアをスタート。日興ヨーロッパ、日興国際投資顧問株式会社を経て、1999年に日興アセットマネジメントの運用技術開発部長および投資戦略部長に就任。その後、大手証券会社および投資銀行において、チーフ・ストラテジストなどとして主に日本株式の調査分析業務に従事。

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