神山解説

  • 2020年8月27日

vol.7 ESGで投資するってどんなこと?



ESG投資は儲け話なのか、寄付する話なのか?

ESG(Environment「環境」、Social「社会課題」、Governance「ガバナンス(企業統治)」)に配慮する企業に投資したり、株主として企業にESGへの配慮を促す対話を通じて企業価値の向上を図ることを「ESG投資」といいます。いま、メインストリーム化してきたESG投資は、ちょっと大げさに言えば「儲け話」(儲けようという意図がある、という意味で、確実という意味ではないです)であって、寄付とかチャリティにより困っている人を救う資金提供ではありません。

実はESG投資に近い投資の中には、宗教的・思想的な意図でアルコールや武器製造の会社に投資しないものがあったりします。ですが、現在のESG投資の主流は、環境や社会問題に気づくことで適切な長期の企業戦略を打ち出す(例えば環境を守る商品を製造する、従業員の健康やサプライチェーンのリスク管理に配慮し生産リスクを減らす、社外取締役を通じて社内の論理以外に株主などステイクホルダーの利害にも配慮するなど)を実践する企業へのアクティブな投資です。あるべき未来を明確に描き、そこに向かって行動する企業は長期的には財務的成果も出やすいと考えるのです。

 

ESG経営の実際のイメージ

少し具体的に、ESGと企業と投資について考えてみましょう。

不動産会社やREIT(不動産投資信託)が、オフィスビルを保有していて、賃貸収入を得ているとしましょう。通常、オフィスビルは、周辺のほかの物件よりも魅力的に見えるように、ホールをきれいに改装したり、エレベータを新しくしたり、LANやWi-Fi環境を整備したりするでしょう。そのようなビルのオーナーがESGを取り入れて経営を考えるようになれば、まず国連や政府などが考える環境(E)、社会課題(S)などを調べてみます。社内ではなかなか気づけないさまざまな課題について、ビルのオーナーができることがあるかもしれません。

さらに、環境悪化や人々の健康を守ることがより経済的によい社会を作ることがわかれば、今できることだけでなく、これから次のビルを建てるなど長期的な計画においても、取り入れるべきビルの機能などがわかってくるでしょう。あとから気づいて追加工事をしたりしなくても、最初から屋上庭園で人々に魅力を感じてもらいながら、照り返しを減らすなどに貢献できたり、冷房効率を上げる窓ガラスなどの活用など設計で工夫したりできるようになります。

結果として、先々を環境や社会課題から読むことで、無理なく無駄なく社会に認められ、テナントに好まれて賃料も維持でき、従業員も働きやすくなり、企業としても成長しやすくなります。

REITビル群のイメージ


人々がESG投資に注目する理由とこれからのESG投資 ~神山解説

  

こう考えると、投資家がESGの観点で適切な経営戦略を持つ企業を選ぼうとすること、機関投資家が企業に対してESGの観点から対話し企業価値を上げるように促すことは自然です。環境(E)と社会課題(S)が投資家の中で選ばれたのは、このところの気候変動や格差拡大への危機感からだと思いますが、これまで経済活動の中ではあまり大事ではなく政府や共同体の仕事だと思われていたことを、企業も参加して行うほうが良い未来が来るだろうという考えが強まってきました。

一方で、企業の寄付による地域・文化支援などと区別しにくかったESGは、いまや普通の投資、つまり銘柄を選ぶ要因の一つとして認められ、財務情報とその予想に加えてESGなどを通じた経営戦略や長期ビジョンなどの非財務情報への注目が進んできました。2019年にPRI(責任投資原則)の世界大会(パリ開催)に出席したのですが、ESGの専門家だけでなくたくさんの投資家が参加していたのが印象的でした。

ESGだけを強く印象付ける投資手法もありますが、アクティブ戦略に埋め込まれることもまた普通になってきました。また、ETFなどのパッシブ運用でも、ESGが投資テーマのものが日本でも出てきています。これからしばらく、環境や社会課題への配慮を強く訴えるファンドと、さりげなく既存の運用に含めていくファンドの両方が増えていくとみています。

ESG投資ができるETF

東証に上場するESG関連指数連動型ETF

※日本取引所グループのサイトに移動します。



【日経ESG-REIT指数に連動する運用をめざすETF】

2566 - 上場インデックスファンド日経ESGリート ※2020年9月7日上場予定
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神山直樹

<解説者>
神山直樹(かみやま なおき)

日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト
2015年1月に日興アセットマネジメントに入社、現職に就任。1985年、日興證券株式会社(現SMBC日興証券株式会社)にてそのキャリアをスタート。日興ヨーロッパ、日興国際投資顧問株式会社を経て、1999年に日興アセットマネジメントの運用技術開発部長および投資戦略部長に就任。その後、大手証券会社および投資銀行において、チーフ・ストラテジストなどとして主に日本株式の調査分析業務に従事。

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