神山解説

  • 2020年12月25日

vol.11 日本のリート市場は、厳しい投資環境が続くのか?回復するのか?



Jリートは今後回復するとみている

コロナ禍でテレワークが広がるなど、オフィス需要の長期的な回復に疑いを持つ投資家も増えています。日本のリート(Jリート)の時価総額をを用途別にみると、オフィスが約4割を占めるため、Jリート全体がオフィス需給の影響を受けやすいといえます。確かに個別銘柄を見ると、分配金を一時的に大幅減額したJリートも見られます。

しかしながら、日本のみならず欧米でも、大企業のオフィス回帰の知らせも届き始めています。まだ新型コロナウイルスの感染者が増えている中で大幅なオフィス回帰は見られませんが、米国の大手企業の経営者の中には、状況が改善すればオフィスに戻ろうと主張する人も出ています。

一方で、テレワークといっても自宅ではなく最寄りの駅ビルなどで貸しオフィスを利用するなどが広がっていて、都心部から需要の拡大も見られています。Jリート市場は、いまのところ、テレワークの趨勢や景気回復による家賃収入の回復などについてのリスクを大きめに見積もっているように思えます。

しかし、ワクチンの開発・接種の進展などが経済を正常化させれば、家賃収入の安定やオフィス需要そのものへの信頼感はいずれ戻ってくるとみています。また、リートのマネージャーは、近郊のオフィス需要の高まりなど需要の変化に対して、徐々に物件の入れ替えなどを行なって対応することができます。元に戻ることと変化への対応が2021年に入れば見込めるとみています。


丸の内のオフィスの夜景

 

実は日銀がJリートを直接買い入れしている

あまり知られていないのですが、日本銀行(日銀)はJリート市場に介入し、継続的に買い入れています。日銀が買い入れる理由は、「リスク・プレミアム介入」と呼ばれ、株式のETFや社債などとともにリスクのある資産を買い付けることで、人々に安心感を与え、経済活動を活発化させ、ひいてはデフレ状況から脱却することにあります。

日銀は年間の買い入れ目標額を公表(年間1,800億円、2020年3月に年間900億円から増額)していますが、状況を見ながら買い入れの金額や回数を柔軟に増減させているようです。日銀が買うからリートを買うという理由での投資をお勧めするものではありませんが、日銀が介入することは、市場の参加者に厚みを与え、流動性を高めることに役立っています。投資家としては、「日銀が買い支えるから安心」と思うのは間違いですが、市場としての信頼感を持つには役に立ちそうです。

Jリートは債券や株にはない特性がある ~神山解説

リートは、2008年のリーマン・ショック以降の価格上昇が顕著だったため、リート投資が「価格上昇を期待する投資」と誤解されている傾向にあります。もちろん価格上昇の可能性はあってよいのですが、長期投資の個人投資家については、値上がりタイミングをとる売買の対象と考えるより、家賃収入を分配金にして受け取る、いわば「少額からなれる大家業」としてとらえるほうが適切だと考えます。

この観点から2020年のコロナ・ショックを見直すと、最初に述べたように、いまは家賃が入ってくるか不透明な場合でも経済が正常化すれば安定するだろう、とか、仮に都心部の古いオフィスの人気が低下しても、新しい人気のオフィスや地方中核都市のオフィスなどに物件を入れ替えると良いだろう、などと考えることができるでしょう。いつ買っていつ売るかばかり考えてもリート投資はうまくいかないと思います。現時点では、個別銘柄を見ると、分配金を大幅減額する場合もあります。ホテルリートなどの回復は新型コロナショックの感染状況などに強く影響されるでしょうから、銘柄格差はついてくるかもしれません。
しかし、リートができたことで、投資家は大きなお金を準備したりローンを組んだりしなくても、大家さんのような投資と収入について考えることができるようになったのです。このことは最近の金融市場でも画期的な出来事だと思っています。

Jリートに投資ができるETF



1345 - 上場インデックスファンドJリート(東証REIT指数)隔月分配型 (愛称:上場Jリート)
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2552 - 上場インデックスファンドJリート(東証REIT指数)隔月分配型(ミニ) (愛称:上場Jリート(ミニ))
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2566 - 上場インデックスファンド日経ESGリート (愛称:上場ESGリート)
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神山直樹

<解説者>
神山直樹(かみやま なおき)

日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト
2015年1月に日興アセットマネジメントに入社、現職に就任。1985年、日興證券株式会社(現SMBC日興証券株式会社)にてそのキャリアをスタート。日興ヨーロッパ、日興国際投資顧問株式会社を経て、1999年に日興アセットマネジメントの運用技術開発部長および投資戦略部長に就任。その後、大手証券会社および投資銀行において、チーフ・ストラテジストなどとして主に日本株式の調査分析業務に従事。

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