神山解説

  • 2021年2月25日

vol.13 新興国債券への投資の意味



何が高金利の「リターンの源泉」なのか?

新興国に投資するということは、魅力的な高金利で(多少為替が変動してもカバーされると期待して)運用することだと思う人が多いです。ですが、利回りが高いから儲かる、という考えでは投資するにはすこし足りないと思います。
投資をはじめる前に、新興国に投資すること、そのような国や組織が発行する債券に投資することの「目的」を明確にしておきましょう。

高い利回りだとしても、なぜそうなのか考えておく必要があると思います。何が高金利の「リターンの源泉」なのでしょうか。普通、その国・地域の成長への参加がリターンになると思っているかもしれません。しかし、債券ですから、発行体(国など)の収入が増えたからといって金利の支払いが増えるわけではありませんので、償還まで保有してもリターンが成長に応じて増⼤するのではありません。

実は、「ある国の生産性が高くなると為替が強くなる」という考え方(バラッサ・サミュエルソン・モデル)があり、農業中心の経済が工業中心になる場合などに顕著に効果が期待されます。ですから、本来成⻑に参加するためには株式投資が有効だが、市場が育っていないことが多いので、新興国の債券に投資することとは、新興国の為替の上昇(円安期待)で成長に参加すること、と考えると良いと思います。しかし、このような理屈は為替変動のある一部を取り上げた考え方ですから、貿易収支や金利、さらにはその国の政治的な安定性などの他の要因を含めて、適切な投資対象を選ぶ必要があります。

 

改めて、新興国債券への投資のリスクとメリット

債券なら株よりも安心では、と思えるかもしれませんが、新興国債券への投資は、国などの発行体の信用が十分ではない(そのため新興国に分類される)ので、元本保全に向いているわけではないのです。新興国債券への投資は、国などの発行体のクレジットリスク(財政のコントロールが上手くなかったり税金を集める力が不足したり)を取ることその国の経済構造が変わり生産性が高まることで為替が強くなること、が主な「リターンの源泉」だと考えます。

新興国の利回りが⾼い理由には、成⻑する経済ではお⾦が不⾜しがちなので、インフレを背景に⾦利が⾼い傾向にあること、もあります。インフレ傾向が強く金利が高い場合、為替は下落することもあります(長期的な経済構造の改善を無視すると、物価が上昇する国の通貨は為替が下落する)。新興国では官僚組織が不安定で財政のコントロールができない場合があったり、⺠主主義が定着せず、クーデターのような政権交代の恐れがインフレ懸念に繋がることもあります。つまり、高成長が実現できない悪いインフレと為替下落(円高)リスクもあるので、利回りが⾼いことも頭に入れておきましょう。

債券のリスクリターンのイメージ


新興国債券へ投資するときの心づもり ~神山解説

新興国と言えば、まずGDPの比率でみると中国の存在感が大きいです。中国、インドネシア、タイなどは、「中進国」と呼ばれ、新興国の中でも経済発展が進んできています。このような国々では農業から工業への労働人口の移動といった古典的な生産性向上ストーリーは一巡しています。しかし、中進国は先進国にとっての生産拠点とはなったものの、⾃らのブランドがあるか、バリューチェーンの中で不可⽋であることなどによる価格⽀配⼒がある産業が生まれていないので、将来さらに一人当たりの生産や所得の改善が見込まれます。インドなどは産業構造の改善が大幅に見込まれる古典的な新興国でしょう。

また、新興国は産業構造が様々で、産油国か加工産業国か、などの違いから経済循環のタイミングが異なります。ですから、新興国投資は複数国に分散投資することが望ましいです。また、民主的な政治体制が安定していないため、政治状況が変化して金利や償還金の返済が遅れる恐れが出るなどのリスクについても、分散投資が適切と思います。

現時点の新興国債券投資では、平均して5%程度の利回りが期待されます。この利回りには、金利や償還金の支払いの遅れリスク、インフレが起こり為替が下がる一方で中進国が「中進国の罠」(経済発展により一人当たりGDPが中程度の水準(中所得)に達した後、発展パターンや戦略を転換できず、成長率が低下、あるいは長期にわたって低迷する)から抜け出せないリスクを含んでいると考えます。

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商品概要

神山直樹

<解説者>
神山直樹(かみやま なおき)

日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト
2015年1月に日興アセットマネジメントに入社、現職に就任。1985年、日興證券株式会社(現SMBC日興証券株式会社)にてそのキャリアをスタート。日興ヨーロッパ、日興国際投資顧問株式会社を経て、1999年に日興アセットマネジメントの運用技術開発部長および投資戦略部長に就任。その後、大手証券会社および投資銀行において、チーフ・ストラテジストなどとして主に日本株式の調査分析業務に従事。

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note 神山直樹

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