神山解説

  • 2021年3月23日

vol.14 仮想通貨にいま何が起きているのか



仮想通貨が注目される理由

仮想通貨(暗号資産)の注目度が高まっています。ニュースでは、緩和マネーや機関投資家のマネーの流入で仮想通貨の値動き(値上がり)が大きいと言われています。「緩和マネー」などというと少し分かりにくいですが、「各国の政策金利がしばらくは低い水準のままである」と予想されることで、これまで以上に、金などと同様に実質金利が低い時に好まれる投資対象になりつつあるようです。

2021年に入り、資産として大きな額のビットコインなどを保有する米国の著名新興企業が現れました。著名な経営者が会社の資産として持つのですから、仮想通貨がよほどいいのだろうと思われるかもしれません。もちろん未来のことは分かりませんから、これ自体はその会社にとって儲かるのかもしれません。あるいはその企業が将来の支払い手段として仮想通貨を持つことで、何らかの新しい金融秩序を作ろうという野心があるのかもしれません。

ここで、2018年の仮想通貨ブームのスタートからの価格推移を見てみると、ビットコインと最近のイーサリウムは特に強いのですが、どんな仮想通貨でもうまくいっているわけではありません。

代表的な仮想通貨とS&P500指数の推移(2018年5月~2021年2月)

代表的な仮想通貨とS&P500指数の推移

※月末時点の推移。2018年5月末を100として指数化。信頼できると判断した情報をもとに日興アセットマネジメントが作成。

また、株式投資の観点から見ると、米国企業が保有するビットコインの評価額が、その保有企業の株価に影響を与えることが出てきました。これは一部の特定の企業について今後も続くかもしれませんが、経済全体の問題にならないと見ています。企業が滞留資金をボラティリティの高い商品に長い期間にわたって振り向けるには、経営者の強い自信と株主の理解が必要だからで、本来は専門とする事業分野に投資すべき資金のはずです。

 

これから仮想通貨に投資してみた方がいいのか?

今のところ、自分だったら投資するとしても投資資金のごく一部に留めておきたいです。金融商品として発展しはじめたとはいえ、ビットコインなど仮想通貨は、それ自体が将来の金利や配当を期待できるわけではないのです。これは金などと同じですし、仮に仮想通貨が金利や配当を支払うとしても、受け取るための預金口座などが十分に整備されていません。

仮想通貨は、実質金利が低い時には魅力がありますが、金のように歴史的に価値がある(あるいは装飾品として価値がある)と信じられるわけでもないです。米大手金融機関がビッドコインの先物を組み入れた投資商品を提供を開始したり、カナダのトロント証券取引所ではビットコインETFが上場したりしていますが、リターンが高いとしてもその本質的な価値の源泉が明確ではないことに十分理解をしてください。

仮想通貨に使われるブロックチェーンのイメージ

仮想通貨に思うこと ~神山解説

仮想通貨は暗号資産とも言われますが、基本的には通貨に似ています
つまり、それ自体は預金でもないし金利の約束もなく、その瞬間の需給だけで価格が決まります。そして金への投資とも似ていて、債券の金利や株式の配当のようにリターンを生み出す仕組みが用意されていません

また、通貨とは言っても、設備投資資金や賃金あるいは景品としてそのまま使うことも難しいです。企業がビットコインなどを持つことは、何か新しい金融秩序を作ろうという野心がないとすれば(実現はとても難しいことです)、いまのところの投資の目的は、値上がり期待となります。これは社会が企業に期待する役割ではなく、個々人で行うことが適切です。

仮想通貨は、それぞれが希少価値、将来の金融取引の手段となる期待等が価値の源泉であると言われていますが、本当に決済手段となるのであれば、例えばマネーロンダリングをどう防ぐのかなど、これまで長らく金融市場が苦労して作り上げてきた秩序などに参加しなければならなくなります。そうすると、国や政府のような強制執行力などが必要となるのです。それがない限り、宝飾需要などの裏付けすらない「何か取引可能なもの」ということです。

これまでも世界の投資家は「投資できるなら投資する」というスタンスで、ヘッジファンドなどの新しい手法を取り入れてきましたから、仮想通貨にも敬意を払いますが、将来の潤いのある生活のための長期投資としては、人々の努力や工夫による世界の発展に参加できるような投資を中心としたいものです。


神山直樹

<解説者>
神山直樹(かみやま なおき)

日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト
2015年1月に日興アセットマネジメントに入社、現職に就任。1985年、日興證券株式会社(現SMBC日興証券株式会社)にてそのキャリアをスタート。日興ヨーロッパ、日興国際投資顧問株式会社を経て、1999年に日興アセットマネジメントの運用技術開発部長および投資戦略部長に就任。その後、大手証券会社および投資銀行において、チーフ・ストラテジストなどとして主に日本株式の調査分析業務に従事。

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note 神山直樹


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